楽しい食事と真面目な告白
今日3回目更新!
間に合ったぁ~
「わかった。じゃあまずは、お昼ごはんにしましょう。お話はごはんの後で…ごはんの間は、わたしがいない間にルルがどんな風に頑張ったか、聞かせてもらおうかな」
「聞かせないよっ!」
茶化すように笑うシェスカに鋭く反論した後で、グルッ!と音がする程のスピードで振り返ったルルは、腰に手をあて、肩幅に両足を開いて踏ん張り、小さな身体を目一杯反らせてこちらを睨み付けた。
「言わせないからっ!」
俺はニヤリと微笑んで、明言を避けた。
ルルがうぅ~っ!と唸っている間にも、シェスカはてきぱきと丸テーブルに料理を広げていく。
両手で一抱え程はある大きさの木箱から、大きな陶器の壺と木製の深皿を3枚取り出す。
壺の中身は、お粥と言うよりは、色んな穀物をごちゃ混ぜにした暖かなオートミールのような物だった。
皿によそうと、ふんわりと湯気がたち、濃厚なミルクの香りが部屋に漂う。
匂いに釣られたのか、ルルはこちらへの威嚇を止め、準備を手伝いだした。
木箱からは更に、2つの大きなバスケットが出てきた。
ひとつからは香ばしい匂いの、昔学校給食で出てきたコッペパンのような形に焼き上げられた堅焼きパンが、もうひとつからは、思わず口内の唾を飲み込んでしまうほどに香り立つ、スパイシーに焼かれた、ごろごろとした肉の塊がテーブルに並べられる。
ベッドから丸テーブルまでの2~3歩の距離を移動する間には、花瓶のような形の入れ物から、仄かに甘い香りのする飲み物が木製のグラスに注がれていた。
「お兄さん大丈夫?歩けるの?」
「うん。さすがに少し背中が突っ張るけど、このくらいの距離なら問題ないよ」
ルルからの質問に答えながら、背もたれのない椅子に腰掛ける。
シェスカがオートミールの入った深皿に木匙を添えて差し出してくれる。
微笑みかけながら、ありがとう、と礼を言うと、シェスカもニコリと返してくれる。
ルルは部屋の隅に並べておいてあった椅子を2脚持ってきて、シェスカと共にそれぞれ卓についた。
「「この世を統べる全知なる神よ。今日も我等に糧をお与えくださる御慈悲に感謝し、今日の糧をいただきます」」
卓につくや否や、2人は軽く握った右拳を額にあて、左手は右手首を握った状態で何やら祈りを捧げた。
「お兄さん、お祈りはしないの?」
待ちきれないとばかりに木匙を握ったルルが、コテリと首を傾げ、尋ねてくる。
「俺の故郷では、こういう風にしてたよ」
両手を合わせて、軽く目を瞑る。
「いただきます」
バリッ!モニュモニュ…
「へえぇ、こう?…いただきます」
ザクッ!ホフッ!ブチッ!
「そうそう、でも、2人がやってるお祈りを教えてくれる?みんながそのお祈りをするんでしょ?」
「いいよ。アタシに続けてお祈りしてね」
カチン!ズズズッ!
ルルにお祈りを教えてもらっている間に、シェスカが3つ目のパンに手を伸ばすのを見て、思わず声をかけた。
「シェスカ…お腹空いてた?」
シェスカはちょうど口内が食べ物で埋め尽くされていて、喋られる状態ではなかったようで、少しだけ顎をモムモムと動かした後で、恥ずかしげに頬を染め、肩を竦めた。
ルルと同い年と言う割には落ち着いた大人の色気すら感じるシェスカの、少しだけ幼げな仕草に、思わず笑みを深める。
木匙を手にとり、オートミールを一匙すくう。
口に含むと、どうやら細かく砕いたチーズも入っていたようで、思っていたより濃厚な甘い乳製品の香りが身体を満たした。
どう考えても、いまだに怪我の影響で熱をもっている身体には重すぎる味だったが、よくよく考えてみれば、後輩達と行った居酒屋で食べた酒のアテ以来の食事だ。
不思議と食が進む。
グラスに注がれていたふんわりと蜂蜜の香りがする水で口内をすすいで、会話をふった。
「そういえば、俺どのくらい寝てたの?」
「そうですね…ちょうど丸2日くらいでした」
「うわ、そんなに…?道理で食が進むわけだ」
「あら、そうですか?それほど進んでいるようには…」
「さすがに病み上がりでシェスカと同じペースで食べるのは無理だよ?」
肩を竦めて答えると、シェスカはピタリと動きを止めた後、膨らませた頬を微かに染め、顎を引いて上目遣いでジロリと睨み付ける仕草で抗議してきた。
ルルにしろ、シェスカにしろ、照れた仕草はいちいち可愛いげがあって、面白い。
文化の違いか、この2人が特別なのか。
「そういえば、俺の怪我って…」
「ざっくりと切りつけられたので、出血こそ多かったですが、うまく骨を避けていましたし、そもそも得物が満足な手入れもされていなかったようです。傷跡はともかく、後遺症等の心配はないそうですよ」
「そうか。ルルの怪我は?」
「問題なーし!もう歩くくらいなら痛みも感じないし」
「へえ、それは良かった」
食事を進めながら会話を重ねると、またシェスカがプクリと頬を膨らませた。
「わたしもあの時闘っていたのですけれど…わたしの事は心配してくれないのですか?」
驚いてよくよく聞いてみると、あの時圧倒的な強さをみせていた女戦士がシェスカだったらしい。
あの時は今と違って、髪をアップにして結いあげていたし、おっとりふわふわとした今の印象と、俊敏に戦場を駆け回っていたあの時の印象とは違い過ぎて、まったく結びつかなかった。
「それはごめん、気づかなくて…大丈夫だった?」
「うふふ、ええ、ご心配ありがとうございます」
ふんわりと微笑んで返すシェスカの様子は、本格的に拗ねていた訳ではないことが窺えて、ほっと胸を撫で下ろす。
「そうか…シェスカは強いんだねえ」
「あら、あなたも中々の物だったとルルから聞いてますよ?」
「そう!お兄さん格好良かったんだよ!得物も持ってなかったのに、サッと賊の前に立って、一歩も退かずに闘って!」
ルルはそこまでまくし立てて、不意に表情に影を落とした。
「アタシが足を引っ張らなかったら、お兄さんがこんな怪我をすることもなかったのに…」
「それは違うよ、ルル。君が責任を感じることなんて何もない。…素人が何の準備も無しに荒事に首を突っ込んだんだ。怪我は紛れもなく、俺個人の責任だよ」
苦笑いを深めて返すと、ルルは「仕方のないお兄さん…」とでも言うかのように肩を竦め、苦笑いを返してきた。
直後、眉を八の字に歪め、不思議そうな表情を作って、首を傾げた。
「お兄さんが…素人?あんなに動けるのに?」
ルルの返答を聞き、一度手元の深皿に視線を落とす。
後僅かだったオートミールを掻き込み、手を合わせて「ごちそうさま」と唱える。
蜂蜜風味の水で口内を湿らせ、少しだけ姿勢をただして喋り出す。
「俺が戦闘の素人なのに、ある程度動けているように見せかけられたのは、俺がこの世界に来る前に就いていた仕事に関係するんだ」
2人は一瞬動きを止めた。
ルルは動きを止めたままでぱちくりと瞬きのペースを早め、シェスカはコトリと木匙を置いて、こちらへ向き直った。
「世界に来る前…。あなたは別世界から転移してきたとでも言うのですか?」
真剣な表情のシェスカに対し、敢えて口角を上げ、なるべく神妙な声音にならないよう気をつけながら言葉を紡ぐ。
「俺にわかってることなんて無いに等しいんだけど、今までにわかってる事を君達に打ち明けようと思ってる。そうして、俺も自分の考えを整理したいんだ。俺が前にいた世界の事や…俺の身に何が起こったのか…。俺が自分の名前を思い出せない事も、ね」
ルルの細い喉から、ヒュッと、息をのむような音が響いた。
またも予定していた箇所までたどり着けず…
精進します。
ここまでルルちゃんばかり目立っちゃってるので、ゆっくりシェスカ姉さんの魅力も引き出していきたいですねー。
天真爛漫なマイクロ乙女ルルちゃんと、
ほんわかギャップ美女シェスカ姉さん。
作者は2人共大好きですww
8月4日(日)
一部改稿しました。
それでは、
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
良かったら、次も読んでくださいね。




