アットホームな空気と異変
昨日結局更新できず…ごめんなさい。
取り急ぎ第5話です!
まただ、この夢…。
天使のような羽のはえた、プラチナブロンドの少女に何やら語りかけられる夢。
だが、前にみた夢とは様子が違う。
目を見開き、身体を前後に揺さぶるようにして、何かを必死に語りかけてくる。
「きみは…神様?」
起きている時に浮かんだ疑問をぶつけてみるが、やはり何を言っているのか、答えは聞こえない。
聞こえないが、俺の問いかけに少女はぴたりと動きを止め、姿勢を正すと、ニコリと微笑んだ。
そのとたん、次第に視界が白く染まっていく。
視界が完全に真っ白に染まるその時、不意に思った。
綺麗な笑顔だな…と。
次に意識が浮上してきた時、最初に感じたのは猛烈な熱さだった。
手足から頭のてっぺんまで身体中が熱い。
相当な量の汗もかいているようだ。
そして、熱さの中心である背中には、重く鈍い痛みがあった。
痛みを知覚した時に、あぁ…まだ生きてる、そう思った。
周りを見渡そうと頭を動かすと、ぴちゃり、と湿った音がした。
誰かが熱を抑える為に、濡れタオルか何かを額に乗せてくれていたのが枕元に落ちたようだ。
更に視線を動かすと、ごく近くに2つ、人の影が見えた。
熱のせいか、うまくフォーカスを合わせることが出来ず、もどかしい。
2つの影のうち、大きな影からほっそりとした影がのび、視界が暗く染まる。
ほっ…と、深い安堵に包まれ、ゆっくりと意識が暗転していった。
今度は、あの夢は見なかった。
次に目を覚ました時は、少しは熱が下がっていたのか、前よりはっきりと周りが見えた。
くすんだ色合いの木を組んだ天井が見える。
背中に感じる少し硬い感触は、ベッドに寝かされているのだろうとわかった。
ベッドサイドにある窓を覆う分厚いカーテンの隙間からは、暖かな陽の光がもれている。
窓の反対側へ頭を傾けると、枕元から4つの目がこちらを覗きこんでいるのに気づく。
ひとりは、茶と金の中間くらいの明るさの髪の中に小さな角のような突起物が2つ、髪は肩の高さまでで緩くカールしていて、燃える火のような赤い瞳いっぱいに溢れんばかりの涙をため、気遣わしげにこちらを覗きこんでいた。
もうひとりは、淡い桃色のロングヘアをハーフアップにして、明るい茶色の瞳を細めて、微笑みながらこちらを覗きこんでいる。
2人の美少女に枕元に立たれた経験はなかったせいか、少しだけ混乱してしまったが、瞳いっぱいに涙を貯めた方の少女には見覚えがあったので、精一杯柔らかく見えるように微笑み、声をかけた。
「こんにちは。大丈夫だった?」
すると、赤い瞳にたまっていた涙が一気に溢れ、ぽろぽろと頬を伝い出した。
ありゃりゃ…安心してニコッと笑って欲しかったんだけどなぁ、なんて考えていたら…
「よ…」
「よ…?」
「よがっだあぁああ!おにいざぁあん!!」
「うごえぇええ!」
オールブラックス顔負けのタックルを横たわる俺に決め、そのままぎゅむぅうう!と抱きしめてきた。
背中の熱がジクリと痛み、更には小さな角のような突起物をみぞおちにグリグリと捩じ込み、息を止めにくるという念のいれようだ。
あかん…!温かな殺意で死ぬ!と、冷や汗を流していると、少し高いところから柔らかな声がかかった。
「ちょっと、ダメでしょう?とどめさしちゃう気?」
そのまま泣きじゃくる少女の腋に手を差し込み、ひょいっと抱き上げ、ベッドサイドに置かれた丸椅子の上にぽてりと座らせてくれた。
背中のジクジクとした痛みは続いているが、呼吸ができるようになって、一息つく。
はっきりと礼を言ってしまうと、死にそうになっていたとはっきり表明し、温かな殺し屋さんを刺激してしまいそうな気がして、桃色の髪の救世主さんには、目を合わせ、ニコリと微笑むに留めた。
どうやら謝意は伝わったようで、救世主さんもふんわりと微笑み返してくれる。
殺し屋さんに目を向けると、もう涙はこぼれていなかったが、少しうつむいて唇を尖らせ、申し訳ないような…正気を失って恥ずかしいような…といった様子の、何とも複雑な表情をしていた。
親指と人差し指で摘まめそうなくらいに尖らせた唇と朱の散った頬が何とも幼く見えて、ムクムクとイタズラ心が沸き上がる。
「その元気なら、大丈夫そうだ。安心したよ」
ニヤリ…と、笑いかたの種類を変えて声をかけると、チロリとこちらを見た後で、朱の散った頬をプクリと膨らませていた。
小さく、むーぅ、といううめき声も聞こえる。
あの時は緊張しきって良く見えていなかったが、殺し屋さんの小動物的な可愛さには、ついつい軽いイタズラをしたくなったり、わしゃわしゃと頭を撫でて愛でたりしたくなる破壊力があった。
クスクス…という穏やかな笑い声に顔を上げると、救世主さんが口元に手をあて、上品に笑っていた。
「痛みや熱はどうでしょう?食欲はありますか?」
「そうですね…。ジクジクとした痛みは続いてますし、熱のせいかボーっとしますが、食欲はあるようです」
「そうですか。今ちょうど、お昼を作ってもらっているところなんです。お粥くらいなら食べられそうですか?」
「お粥…ありがたいです」
桃色の髪の救世主さんは一度ニコリと微笑み、さらに柔らかな響きの言葉を紡ぐ。
「辛くなければ、お昼が出来るまで、少しお話できませんか?」
「はい。問題ありません」
俺の言葉を聞くや否や、殺し屋さんがすっかり元気を取り戻したようにガタッ!っと立ち上がり、右手をピンと伸ばした。
「まずは自己紹介だよね!アタシ、ルルリカ!ルルリカ・ベルクーシ!知り合いはみんなルルって呼ぶから、お兄さんもルルって呼んで!助けてくれて、本当にありがとう!」
「わかった。よろしく、ルル。どういたしましてだよ」
返事を返すと、ルルは膝に手のひらをあて、こちらを覗きこむようにしてニンマリと笑った。
ブンッブンッ、という風切り音に辺りを見渡すと、体格の割にはたくましいしっぽを振り回していた。
救世主さんはさりげなく体をかわして、しっぽが当たらない位置にずれている。
「わたしはシェスカ・ロンドといいます。よろしくお願いしますね」
「シェスカさんですね。こちらこそよろしくお願いします」
シェスカさんはニコリと微笑んで、返事を受け取ってくれた。
ルルは何か不満でもあるのか、先ほども見た頬をプクリと膨らませた表情でむーっと唸っていた。
「ルル、どうしたの?」
「お兄さん。なんでアタシは呼び捨てで、シェスカはさんづけなの?アタシたち、同い年なのに…」
「…」
「……?」
「どうして2人が同い年なの?」
「まさかの疑問文返し!?」
ルルの方が明らかに小さいせいか、ここまでの天真爛漫な様子を見ていたせいか、どうみてもシェスカさんの方が2~3歳は年上に見える。
「むーっ…普通に同い年に見えないって言われるよりダメージでっかいよぉ…」
「大丈夫よルル。きっとわたしが老けて見えるせいだから…」
ルルは唇を尖らせ、頬に朱を散らし、さっきまでは元気いっぱいだったしっぽを胸の前に回し、指先でクリクリといじりながら、分かりやすく拗ねていた。
シェスカさんは何とも肯定しにくい言葉を囁きながらルルを後ろから抱きしめ、ルルの頭をスリスリと撫で回しながら慰めている。
「あー…えっと、じゃあルルに、シェスカだね。ふたり共呼び捨てで大丈夫かな?」
「まぁ!ありがとうございます。大歓迎ですよ」
「…フランクにして欲しいから、呼び捨てで問題ないんだけど、アタシにさんづけする可能性は少しでもあった?」
「え?なんで?」
「また疑問形で返した!」
むきーっ!っと叫びながらルルが胸の前に回したままだったしっぽを両手で掴んで振り回す。
しかし、何故かホクホク顔のシェスカに抱きしめられたままなので、俺には当たらずに済んでいた。
どうみても、仲の良いかわいらしい姉妹がじゃれている光景なのだが、何故かルルだけではなく、シェスカの業も深い気がして、返す笑顔が愛想笑いに近い、ややひきつったものになってしまった。
暴れまわったルルはしばらくすると疲れたのか、ふひーっと息を吐き、しっぽを放し、いまだ自らの鎖骨の辺りに回されたままのシェスカの腕を両手できゅっと抱きしめ、気をとりなおしたようにニコリと微笑んで、コテリと首を傾げた。
「それで?お兄さんの名前は?」
「あぁ、俺の名前は…」
なかなかに破壊力の高いルルの仕草に、強制的に笑みを深めさせられ、言葉を返す。
と、次の瞬間、深まった笑みが固まったように貼り付いてうごかせなくなった。
何故か背中だけでなく、頭までもがズキズキと痛みだし、思わず手の甲で額を抑えた。
「名前…俺の名前は…」
たちまち、身体中に冷や汗が吹き出る。
やけに心臓の鼓動が早くなり、耳の後ろの辺りに破裂しそうな程激しい拍動を感じた。
ルルもシェスカも、俺の異変に気づき、ふっと笑みが消え、気遣わしげに覗きこんでくる。
そんな2人に反応を返す余裕は、いつのまにか失われていた。
(思い出せない…?俺の名前、なんだったっけ?)
やっと主人公がモブキャラ以外と会話しましたww
ルルちゃんが可愛くて、ハジケ過ぎて…
また長くなっちゃったのは、ルルちゃんのせいですww
8月4日(日)
一部改稿しました。
それでは、
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
良かったら、次も読んでくださいね。




