季節についてとこれからの暮らし
第2部開始です!
この世界にも雨季という物は存在するようで、最近はしとしとと雨が降り続いている。
旅には適さない季節だ。
道はぬかるんで、もーちゃんのスピードは目に見えて落ちるし、水場や泉が濁って水浴できないし、そのせいで水の補給も中々できないし、何よりジメジメと蒸し暑く、マントなんてつけてると暑くてたまったもんじゃない。
元々、雨季に入る前にザムラへ辿り着く予定だったらしいのだが、それはうだうだ言ってもしょうがない。
旅のスピードは目に見えて落ちた。
そもそも、この雨季にザムラの海が上がるらしい。
今ザムラに着いてもモンブー車ではホームに入れないそうだ。
それなら焦っても仕方ないし、無理に距離を稼ごうとしてモンブー車がぬかるみにはまったりしたら、おしまいだ。
雨が強くて身動きとれない時は、みんなで荷台に上がって過ごした。
アイリが昔の映画の主題歌を雨に唄えば、シェスカが続いて歌う。
ルルには、荷台だけだとあまり動きの激しい稽古が出来ないので、こっちの言葉で作ったオリジナル早口言葉なんかをやらせてみたりした。
以外とというかなんというか、早口言葉が1番うまかったのはアイリだった。
ルルやシェスカも割りとすぐにコツを覚えて、スラスラと発音する。
幸いにもこちらの雨季は割りと短かったようで、すぐに晴れの日が多くなる。
すると今度は一気に日中の気温が上がって、もはや誰1人としてマントをつけていない。
全員のマントは畳まれて、座布団と化していた。
「うっへえぇぇ………ここいらは暑いッスねえ………」
アイリは暑さにあまり強くないようで、ぐでんぐでんにへたれていた。
「自分雪国の出身だったんで、マジで初体験の暑さッスよ………」
「大丈夫よアイリ。ザムラの夏はすぐに終わる。また短い雨季があって、その後はまたいつもの気候に戻るから」
「はぁ…冬がなくて、春がめっちゃ長い感じッスかねぇ」
「雪は降らないのか?」
「ザムラでは雪は見たことないねー」
皆で他愛ない話をしながら、ゆったりと旅は続く。
次第に道の起伏が穏やかになり、周りの森が小さくなっていく。
そのうち、狭い峡谷のような道が見えた。
その手前をキャンプ地と定めて、車を止めた。
「明日にはホームへ帰りつけると思うわ」
「おぉ、ついにザムラ到着か」
食後にシェスカに告げられた言葉を聞き、途端にワクワクと気持ちが高ぶっていく。
また見たことのない土地を見られるし、何より、明日からは俺自身のホームにもなるのだから。
「明日の午後は大掃除だねー」
「しょうがないでしょルル。久しぶりだし、ちゃんと掃除しないと困るのは自分なんだから」
「バリバリ手伝うッスよー!」
「もちろん、俺も手伝うよ。明日は俺やアイリのギルド登録と仕事探しかな」
「しばらく忙しくなりそうッスねー」
「アイリは冒険者として稼げるからいいよ。俺は何するかなぁ………」
これは切実な問題だ。
いつまでもシェスカ達の稼ぎを食い潰すヒモになる訳にはいかないし、シェスカのサポーターはルルがいる。
いっそアイリのサポーターにでもなるか………? などと考えていると、ルルとシェスカが真剣な顔つきで切り出してきた。
「それなんだけどね、ジル」
「わたし達の統率者になって、宿屋を経営してみない?」
「おお! ジルがリーダーッスか。わかんないけど、向いてる気がするッス! 自分も一緒にやりたいッスよ!」
「………えっと、ごめん。話が見えないんだけど………」
シェスカの説明によると、ギルドには一党登録なるシステムがあるらしく、冒険者としてのランクと合わせて、ファミリアランクも存在するらしい。
ファミリアとは、共に行動する仲間を登録することで、仕事が受けやすくなったり、買い物がしやすくなったり、色々な恩恵が受けられるシステム。
ファミリアランクが一定の水準を超えると、ホームハウスとして登録した家屋で副業が出来るようになる。
冒険で手に入れた貴重な品々を売る小売店を設けるファミリアや、ギルドを通さずに護衛依頼を受けつける事務所を設けるファミリアなど、色々な種類の副業が存在する。
シェスカとルルのファミリアランクはすでに水準を突破しているものの、人員が少ない為に副業は展開していなかった。
副業を始めるにあたってギルドへ登録しなければならないのが、リーダー、つまり、責任者という訳らしい。
「なるほどな………。俺としては働き口を見つけられるならありがたい話だけど………」
「何か気になる事でもあるんすか?」
責任者をやるなら、色々と疎かには出来ない物もある。
気になる事は聞いておかねばならない。
「宿の経営って事だけど、ホームの室数は?」
「3階に5部屋、4階に5部屋の10部屋かな」
「全10部屋の食事や清掃、その他にも細々とした宿の管理を俺達4人だけでやれるのか? よしんばやれたとしても、それにかかりきりになるぞ」
「自分はまだ大丈夫ッスけど、シェスカなんかは名指しの仕事なんかも来るッスよね?」
「それに、ジルやアイリは芝居や音楽の活動もしなきゃならない………となると、宿の管理の主な実働はアタシになるのかぁ」
「流石にルルに丸投げはしないつもりだけど、例えば人員不足を解消するために誰か雇うにしても、まだ色々不透明すぎる」
「じゃあ、どうするのジル? サポーターになるの?」
「いや、副業のリーダーになることに異議はないけど、もう少しザムラの街自体を把握したり、何が求められてるのか、俺達に何が出来るのかは、しっかり考えてから行動に移したい。考える時間が欲しい」
アイリ以外の2人が考えこむ。
アイリも俺と同じく、見切り発車には反対らしい。
しばらくして、シェスカが顔を上げた。
「宿屋の建物で宿屋以外の副業をやるの? それとも、副業に合わせて引っ越す?」
「どうなるかはわからない。まだ判断したり、決断できる程の情報がないんだ」
「アタシはよくわかんないや。ジルのやりたいようにやってもらえばいいんじゃないかな?」
「そうね………わたしもジルになら任せられる。時間をかけてくれて大丈夫だからね。お金なら問題ないし、入り用ならいつも通り冒険者として稼いでくるし」
「自分も頭脳労働には向いてないッスから。シェスカを手伝いながら待ってるッスよ」
「ありがとう。決断する時にはきちんとみんなの意見も聞いて、反映できるよう頑張るから」
「それは心配してないッスよ。どうみてもジルは独裁者タイプじゃないッスから」
3人共コクリと頷いてくれる。
これからについて楽しみなだけではなく、皆に対しての責任が生じた事で、身が引き締まる思いだった。
炎天下の夜は、ゆっくりと更けていった。
翌日。
朝早くに出発し、街に入る前に関所を抜ける。
やはりホームタウンなだけあって、シェスカの顔は売れているらしく、俺やアイリがいるにも関わらず、ほぼ顔パスだ。
門を潜ると、真正面がやけに眩しい。
陽の光を反射していたのは、濃く広い青。
「海ッスーーー!!!」
アイリが歓声を上げる。
俺も、今までの山あいの景色とはガラリと変わって、テンションが上がってきた。
しかし直後、頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになった。
「アイリ………あれ、水着だよな?」
「あっちの人は作務衣着てるッスよね………?」
道行く人々の服装が、未だ記憶に新しい、元の世界の物と似通っているのだ。
ザムラでは一般的な衣服なのかと思いきや………
「珍しい服だね? シェスカ見たことある?」
「わたしも初めて見るわ。旅の間に流行ったのかしら………?」
俺とアイリは思わず顔を見合わせた。
間違いない。
あの衣服の仕掛人は………
「「転生者がいる!!!」」
これからしばらく小事件はありつつも、情報収集しながら、しばらくまったりと過ごす皆を書いていきます。
芝居他、文化活動に集中できる環境を作るため、みんなで少しずつ頑張っていきます。
暖かく見守ってやってください。
それでは、
ここまで読んでいただきありがとうございました。
良かったら、次も読んでくださいね。




