閑話 アイリから見える事
閑話、アイリ視点で。
この旅、めっちゃ楽しいッス!
自分の率直な印象ッスね。
最初が楽しくなかった訳じゃないんスけど、ルルの足が治って以降、さらに楽しくなったんスよね。
最初はジルの事、スケベオヤジかよ! って思ってたんス。
だってそうでしょ!? 自分の裸見てるし、旅に誘ってくれたかと思ったら、すでにめっちゃかわいい娘2人いるし。
ナンパかよ!? ハーレムかよ!? どこのラノベ主人公だよ!? って。
でも、違うかなーって最近は思ってるッス。
自分の裸見た時も冷静に思い返せば、グイグイ食いついてくる訳じゃなく、かといって不用意に取り乱す訳でもなく。
結局、転生仲間かもってなっただけだったし、自分の寂しいとか、孤独感とか、気づいてくれて、穴を埋めてくれたし。
シェスカとルルも、ジルからどーこーじゃないんスよね。
あの2人がジルにベタボレ。
ルルはまだ助けてくれたー、って憧れみたいなのが先に来てるッスけど、足治った時もなんか男気? みたいなの見せつけられて、今では完全にお芝居の師匠ッスもん。
異性としてはっきり意識するのも、時間の問題っつーか………。
シェスカはマジで乙女モード入ってるッス。
見張りしながらもチロチロとジルの事見てるし、意識しちゃってるせいか、最近ジルに直接話しかける事が少ないし。
胸おっきくさせる方法聞かれた時は面食らったッスけど、「だって、ジル、アイリの胸、見る…」なんて! もー、可愛すぎか!
ジルのあれは、スケベ心はまるでないんスけどね。
なんか、珍しい貴重な美術品かなんかを見るような目っつーか、自分がどんだけバイトしても手が届かないくらい高いギター見かけた時と同じ目っつーか。
自分はジルに対してそういう気持ちはないッスけどね。
いい人だし、めっちゃ気にかけてくれるし、度胸があって、決めるとこで決めるからカッコいいとは思うッスけど。
たぶん、あっちで30とかまで生きてて、内面おじさんなんだってわかってるから、そういう目で見れないんだと思うッス。
それに、ジルがいい人なのは、自分に対してじゃなくって、みんなに対してッスから。
流石に勘違いして恋しちゃうような乙女にはなれないッスね、自分は。
自分の胸も美術品扱いッスし、きちんと女扱いされてないのがわかるんスよね、女の子扱いっつーか、ガキ扱いっつーか。
………なんか考えててちょいムカついてきたッス。
後で1発どついとくッス。
この旅の何が楽しいって、みんなで1つの事に取り組むのが楽しいッスね。
最初は狩りとかキャンプの準備とかくらいしかなかったんスけど、最近はみんなで自分の歌聞いてくれたり、一緒に歌ったり………。
ジルの芝居講座もわりと楽しいし。
シェスカが1番自分の歌には食いつきいいッスね。
いろんな歌聞きたがるし、自分でもよく歌ってるから。
ただ、こっちの人は歌に今まで触れあってないせいか、シェスカのリクエストへの答え方が難しいんスよ。
「元気になれる歌」とか「明日頑張れる歌」とか。
まあ、自分の気分でなんとなく選曲してるッスけど。
自分もあっちでオリジナル曲とか作ってたんスけど、まだ披露はしてないッス。
ちょい恥ずかしいっつーか………。
1度オリジナルを鼻歌で歌ってて、ジルが聞いてたから、感想聞いたら、「恋に破れながらも、次に向かって頑張る女の子の………」なんて、お芝居のどんなシーンで使えるか答えてきたんス!
いや、感想でいいッスから! つか、曲作った時のイメージまんま! 歌詞付きで歌ってなかったのに! なんでわかるの!?
あれから、なんかジルに見透かされてる気になっちゃうから、オリジナルは避けてるッス。
シェスカはリクエストも自分で歌うのも、アップテンポな曲が好みッス。
最初はいろんな曲があるって知ってほしくて、色々歌ってたんスけど、それでもリクエストはアップテンポばっかり。
シェスカの声質とか考えると、バラードとかミドルテンポくらいの曲のが映えると思うんスけど、そういうと、ジルの発言を引き合いに断られるッス。
「心を込めないと、嘘にもならない虚勢になっちゃうから」って!
まあ、聞くのが身内だけだし、好きな歌を好きなように歌ってくれていいんスけど………ジルめ、余計な事を!
とはいえ、実は自分もジルの芝居講座が役にたってる部分があるんス。
なんだったっけ? 「如何に自分と向き合って、如何に自分で工夫するか」だったかな?
ルルが芝居やりたいって言って、最初に物真似させた時はびっくりしたッス。
それじゃ、物真似芸人ッスよね!? 役者じゃないッスよね!? って。
でも、どんどん目に見えてルルがうまくなっていって、そのうちルルが物真似してると目が離せなくなって。
単純にスゲーなって思ったんスよね。
自分もためしにって歌を歌う時に、自分がスゲーって思ってるアーティストさんのイメージを頭に浮かべて歌ったりして、工夫してみたんス。
そしたらジルが「歌い方変わったね」ってすぐ気づいて「でも、芝居も歌も、突き詰めれば自己表現だから、完全に物真似にはしない方がいい」って「若いうちは難しいだろうけど、自分はどんな人か、他人からはどういう風に見えるか分析して、1番魅力的な自分を引き出す工夫をした方がいい」って。
若干、何様だよ!? って思ったんスけど、でも間違いじゃないなって。
それが巷で言う「オリジナリティ」ってやつなんだろうなって。
それで、自分なりに工夫して歌うようにしてみたら、ジルは何も言わなくなって。
それがなんか、自分の「オリジナリティ」を受け入れてくれてる気がして、自分自身も受け入れられた気がして、歌うのがもっともっと楽しくなって。
後、ジルは「努力」とか「頑張る」って他人に言わないんスよね。
ルルにも「稽古しよう」とか「工夫しよう」って促すんス。
考えてみれば、その通りなんスよね。
自分が好きでやってる事なんだから、「努力しないと」とか「頑張らなければ」とか考える必要なくて。
楽しいから稽古する、もっと楽しくなりたいから工夫する、っていうジルの姿勢はすごく自然に見えて。
思えば、あっちのバンドメンバーとのやり取りも、自然とそんな感じだったッス。
一緒にいて楽しいから集まるし、みんなバンド好きだから集まったら自然と練習するし。
専門とかで、講師に「努力しないと上にはいけない」なんて言われて死ぬほどギター弾いてた時より、バンドメンバーと遊びで弾いてる時のが集中できてたし。
ジルって不思議なやつッスね。
次から第2部スタートです。
一気にザムラ到着までとびます。
それでは、
ここまで読んでいただきありがとうございました。
良かったら、次も読んでくださいね。




