想いの奇跡とこれから
「うぇーっす。久しぶりー」
気の抜けた声が聞こえた。
ゆっくりと目を開ける。
プラチナブロンドの髪、蒼く澄んだ瞳を持つ、天使のような少女がいた。
どこか、何か、違和感がある。
これは………?
「思い出したぁ? 今日は正規のルートで来たから、全部繋がってるでしょ?」
「あ………」
確かに、思い出した。
何故か忘れていた夢で聞いた話。
先程の違和感はこれだ。
知らないハズなのに知っている。
不思議な感覚。
「確かに………思い出したッス」
「!!!」
アイリがいた。
俺の左隣に立って、きょろきょろと辺りを見回している。
そして、未だ俺が胸の中に抱きかかえている、ルル。
シェスカは………いない。
「ちょっとキミ、竜の娘を降ろしたげてくんない?」
「でも、ルルは………」
「もう立てるよ」
「は?」
ルルを見下ろすと、コクリと頷く。
ゆっくりと足を地面につけてやると、ルルはしっぽも使ってグイッと一気に立ち上がった。
「立てる………立てるよ! アタシ治った………治ったぁ………」
「ルル………」
「良かったッス! ルル!」
ルルはにっこりと笑いながら、ポロポロと涙をこぼした。
アイリはルルにとびついてウリウリと頭を撫でまわした。
「んー? ルル、角伸びたッスか?」
「え? うそ?」
「そーなんよー。あーし、それ困っててさ」
「どういう事だ?」
話が見えない。
角が伸びると、困る?
「とりあえず、ぜーんぶ説明しちゃうと、竜の娘ちゃんの足は、別に治った訳じゃない」
「え?」
「切れちゃった神経の代わりに、魔力で繋いでる状態って言えばわかる?」
「あー………何となく」
「で、ドラゴニュートの魔力は角で使うんよ」
「えっと………さっきから出てる魔力ってのは………?」
「キミ達は『神の力』って呼んでるんだっけ?」
「うわ、ヤバ! 魔法だ魔法! ルル、魔法少女ッスよ!」
ルルはキョトンとしながらアイリを見ている。
そりゃわからんよな。
「で、今竜の娘ちゃんの角を形作ってんのは、そもそもキミの物だった魔力な訳」
「ジルの魔力?」
「結果、今後一切、キミは『神の力』を使えない。竜の娘ちゃんも、自分の身体を動かす以外では使えない」
正直、使えなくても別に構わなかった。
今までも使ってなかったし、神の力も、シェスカみたいに戦闘に使える程まで使いこなすのは、不可能に近かっただろう。
皆を守る力は、別の方法を考えよう。
ルルも別に不満はないようで、スリスリと新しい角を擦っていた。
ほんのりと顔を赤らめて………再び歩けるようになったのが余程嬉しいのだろう。
「まあね、竜の娘ちゃんが歩けるようにってのは、キミ達全員の願いだったし、不満はあーしにもないけどさ? 本来、キミの魔力は芝居に使って、文化を広める目的で与えた物だったわけよ」
「はあ………」
「それよか、キミ達!」
「え!?」
「自分ッスか?」
「全然文化してないじゃん! キミはまだちょいちょいやってるけど、全然足りない! 猫娘ちゃんは、もう全然ダメ! この2年、人前で歌ってないでしょ!?」
「あぅぅ………」
「戻ったら、今すぐザムラに帰って文化して! マジでいつまで待たせるの!? 今ちょうど、ザムラにもう1人いるから、合流して文化して!」
「は? もう1人?」
「それって………」
「早く行く!」
少女がパンと両手を叩くと、目の前が真っ白に変わる。
ふわふわと身体が落ち着かなくなって、地面が消えたかのような不思議な感覚に襲われ、意識が暗転した。
目を開けると、湯の中にぷかぷかと浮いていた。
身体を起こし、辺りを見渡す。
「ジル起きた!」
「ジル! ジル!」
「うわっぷ!」
バシャッ! と水音を立てて、ピンク色の何かにとびつかれた。
シェスカが俺に抱きつきながら泣きじゃくっていた。
俺はポンポンと背中を叩きながら、さらに辺りを見渡す。
ルルもアイリも戻ってきていた。
ルルはちゃんと、自分の力で立てている。
「ルルは大丈夫そうだな」
「うん! でも、まだなんか慣れない感じする。ふわふわするの」
「慣れるまで無理は禁物だな」
「ジルはどうッスか?」
「大丈夫だ、問題ない。………アイリは?」
「そのネタ古くないッスか? 自分も問題ないッス」
「そっか………シェスカ、ごめんな? 大丈夫か?」
「ジル………ジル………!」
シェスカはずっと俺の名前を呼びながら泣き続ける。
話を聞くのは、後回しにした方が良さそうだ。
「じゃあ………帰るか」
「そうだね!」
「自分、怒られちゃったッスからねえ………つか、楽器すらないんスよ!? どうしろと?」
「なんとかするしかないな………俺だって、1人だけじゃ芝居なんて出来ないからさ」
「なんとかするしかないッスねえ」
天使の少女と話した記憶は全て持ち帰れていた。
アイリも、どうやら同じらしい。
アイリはニヤニヤとしながらこちらを見てくる。
あれは、たぶん嬉しいんだろう。
俺も同じ気持ちだから、間違ってないはずだ。
自分の大好き………俺の芝居、アイリの音楽は、元の世界では、否定的な意見に晒される事が多かった。
金にならない、報われない、他にやるべき事があるだろう…と。
今は、あの天使の少女に「やれ」と、言われているのだ。
こんなに嬉しい事はない。
ルルがニコリと笑って、しめてくれた。
「帰ろう! アタシ達のホーム………ザムラへ!!!」
予定よりショートしましたが、第1部終了です。
閑話とイントロダクションを1~2話挟んで、第2部をスタートします。
ちょっとグダグダしちゃってる気がしたので、意図的にショートさせましたが、どうなんだろう………
ともかく、第2部から、本当に筆者が書きたかった事を書いていく感じになります。
ゆったりゆっくりと文化していくみんなを見てやってください。
それでは、
ここまで読んでいただきありがとうございました。
良かったら、次も読んでくださいね。




