表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
action!~売れない役者の異世界生活~  作者: とみ
第1場 異世界生活の始まり
31/47

旅の再開と必死の寄り道

あの後、シェスカとアイリは精力的に動いた。

シェスカを呼び出した男は1人だった。

が、本当に1人だったのか? 

残党は本当にいないのか?

俺達の使っていたモンブー車の行方は?


調べなければいけない事は山積みだった。


戦闘能力のない俺は動いても足手まといだ。

ルルにずっとついていた。


翌朝、ルルを治療所から宿へ移した。

もーちゃんには乗らず、自分で抱えて運ぶ。

もーちゃんは手綱もひいていないのに、ちゃんとついてきて、自分で宿の厩舎に入った。


ルルはまだ目を覚まさない。


夜にシェスカとアイリは宿へ帰ってきた。

俺が2人分の部屋をとるのを忘れていて、2人は2人部屋を1つとった。

俺はルルを寝かす部屋とは別に1人部屋をとっていたのだが、まだその部屋に入っていなかった事に気づいた。

夕食はシェスカがルルの部屋まで持ってきてくれて、狭い1人部屋で肩を寄せ合いながら3人で一緒に食べた。

その日、朝から何も食べていない事に気づいた。

夕食は味がしなかったので、まあいいか、と考えた。


ルルはまだ目を覚まさない。


そして翌朝。

ずっと寝ていなかった俺は、意識が落ちていた事に気づいた。

ルルを寝かせているベッドサイドに突っ伏して寝ていたようだ。

目を擦りながら顔をあげる。


「あ! ジル起きた! おはよー」


目を瞬き、思わずもう1度目を擦る。

横になったまま、満面の笑みを浮かべたルルがいた。


「アタシ、どれくらい寝てた?」

「あ………えと、丸2日…くらいかな?」

「うへえ………そっか。ごめんね? ミスった」


ルルはちょっとしたイタズラが見つかったかのような軽さで謝った。

心配していた俺に気を使ったのが、すぐにわかる反応。

本当にこいつは………。

ルルの優しさと強さに、涙が出そうになったが、必死に我慢した。


「朝食、食うか?」

「んー、食べるけど、シェスカ辺りが用意してくれるでしょ? ジルはここにいて」


ルルはそっと俺の手を握った。

片手を上から被せるようにそっと。

そして、うぇへひひひ…と、いつもの調子で笑った。


「あー、朝ごはんの話なんかするから、お腹減ってきちゃったよ。お腹鳴ったらどーしよ?」

「やっぱり、俺がとってき…」

「だめ。ここにいて」

「………ルル?」

「お願い」


切羽詰まったように、ここにいて、と言うルルの声音を聞いて、ルルの心情がやっとわかった。

ルルには今、何が必要なのか。


ルルが手を重ねている俺の手をひっくり返し、きゅっと、軽くルルの手を握る。

もう一方の手をさらに上から重ねて、ルルの手を擦った。


「怖かったな、ルル。よく頑張った」

「………うぇへ…うぇへひ………うぅ…うぅぅ…」


ルルはへらへらと笑った後、自分の目からこぼれる物に気がついたのか、やっと素直に感情を溢れさせた。

でも、声を押し殺すかのような、どこか必死に素直になろうとしているようなその姿を見て、「泣いている」とは思えなかった。

声を殺せていない事が嫌だったのか、ルルはもう一方の手を出してきて、俺の手を握り、自分の手ごと口に押し当てて、必死に声を殺した。

ルルの唇は、熱く、柔らかく、鼻息はひどくくすぐったかった。


ルルはその後、くぐもった声も上げなくなった後、ブランケットの端からしっぽをするすると出してきて、俺の腕にクルリと1周巻きつけた。

俺は何も言わずにそのままにしておいた。

シェスカとアイリが朝イチで様子を見に来るまで、ずっと俺達はそのままの体勢でいた。





その日のうちに俺達は街を出た。

治療所では、もう少しルルを安静にさせておくよう言われたし、消耗品の買い出しも出来ていなかったが、モンブー車もほぼ無傷で見つかっていたし、一刻も早くこの街を離れるべきだと考えていたからだ。


結局、シェスカを呼び出した男は1人だったらしい。

最近は少なくなったというか、絶滅危惧種らしいが、自分の強さを求め、強い者と殺し合う事で、自分の強さを確認したがる類いの男だったそうだ。


ギルドの方で調べは続けるらしい。

いくらルルが小柄でも、ギルドの支部があるくらいには人口の多い街で、衛士が守る門を、人1人担いで歩き、誰も気に止めなかったというのは不自然だ、という理由だ。


手綱はシェスカが握り、後方の見張りはアイリが担当した。

俺は荷台に寝かせているルルの側に座り、話し相手を勤めた。


昼前くらいの出発だったので、早めにキャンプの準備に入る。

シェスカが狩りに行き、アイリが他の食材や薪を探す。

俺は備蓄してあった薪で火を起こし、モンブー車の掃除をした。

ルルは荷台の端に寝転んだままで、それを見ていた。


翌日、俺達はアイリの提案で、ルートを変えた。

一旦ライン方面へ戻って、湯の村へ向かうのだ。

あそこの温泉は、傷や怪我の治りが早くなるという噂があるらしい。

季節外れではあるが、俺やアイリは温泉大国日本の出身だ。

その手の効能はあると信じている。


それに、何かをしてやりたい。

何か出来る事はないかと、そんな考えでいっぱいだった。


そんな俺達を見て、ルルはいつもの調子で笑った。





ルルはまだ、自分で身体を起こせない。

3連休につらい話でごめんなさい。


このエピソードの後は、真っ直ぐザムラに向かいますから!

もう少しだけお付き合いください。



それでは、

ここまで読んでいただきありがとうございました。

良かったら、次も読んでくださいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ