事件の顛末と新たな事件
エド(ロリコン)を捕まえた翌日。
俺達は最寄りの冒険者ギルドへ訪れていた。
勿論、エドを連れて。
今は、シェスカと共にギルド内の食堂でアイリの報告が終わるのを待っているところだ。
ちなみに、ルルは次の旅立ちの為、買い出しに行っている。
そして、俺は今、猛烈に困っていた。
「ジル………ジルはおっきい方がいいの? 男の子ってみんなそうなの?」
1日だけとはいえ、ずっと1人で待っていたシェスカは、よほど寂しかったのか、テーブルの向かい側に座ってくれない。
俺の隣に座り、マントやシャツの袖をクイクイと引っ張り、上目遣いで話かけてくる。
そして、なんとも答えにくい、というか、答えることの出来ない質問を繰り返してくる。
「すみませーん。ガーフおかわり………」
「ジル! ちゃんと聞いてる!?」
ちゃんと聞けるかー!!!
そして、答えられんわー!!!
埒が開かないので、話を変える事にした。
「そういえば、シェスカ強いんだねぇ。アイリとの腕試しの時、俺見えなかったもん」
「ああ………訓練していないジルは見えなくても仕方ないよ。達人同士の闘いは、本当にあっという間だから」
「アイリはやっぱり達人レベルなんだ…それに勝つシェスカはやっぱ凄いな…」
「いえ、アイリは別に達人という程では…」
「え? アイリも見えなかったよ?」
あれが達人じゃないなら、あなたはなんなんですか!?
「アイリはミックスとしての身体能力の高さとの親和性が抜群に高いだけ。反射神経や速度は目を見張る物があるけど、技術は未熟もよい所だし」
「そ、そうなの?」
「そういう意味では、アイリの武装の選択は正しいと思う。相手に攻撃する事を考えず、守りに徹するだけなら反射神経をフルに生かして、かなりの時間、護衛対象を守り抜ける。例えば、わたしはジルを2秒で殺せるけど、アイリに守られたジルは2分はかかると思うよ」
言葉もありません。
それでも2分なんだなあ………。
怪物だあ。
でも………
「シェスカ」
「はい?」
「俺にも闘い方を教えてくれないか?」
「………はい?」
「な、なんで笑顔なの………?」
あるぇ………?
何故かシェスカが怒ってるぞぉ………?
「ジルはわたしが貴方を守りきれないと?」
「いや、別にそういう意味じゃ………」
「それに、忘れたの? ジルの記憶が戻るまで、あなたが間者である疑いは晴れないよ? わたしが間者かもしれない人に闘い方を教えると思う?」
「そうだったね………ごめん」
「まあ、わたしも本当にあなたが間者だとは思ってないけど………」
「けど?」
「だいたい、なんでジルは闘い方を覚えたいの?」
「それは………」
これは真面目に思いを伝えなきゃならない場面だ。
椅子に座り直し、真っ直ぐシェスカの方へ身体を向ける。
隣に座っていたせいで、近すぎて窮屈だが、関係ない。
近すぎるせいか、シェスカはフッと身体を引いた。
「シェスカやルル、アイリもそうだけど、大切な人が誰かの助けを必要とした時、何も出来ない自分で居たくないからだよ」
「ジ…ジル!? た、たた大切って?」
「勿論、大好きな………」
「だ!? だだだだ………!」
「仲間達って意味だ」
「……………」
「シェスカ?」
シェスカはジト目になって、ほうっとため息をついた。
その後、少し微笑みを取り戻してこちらを見やる。
「ジルはすでにわたし達を助けてくれてるよ」
「でも………」
「情報収集の作戦立案に、エドと対峙した時の話も聞いたよ? 度胸があって、頭が回る。ジルみたいな人はなかなかいないし、少なくとも、すでにわたしは頼りにしてる」
「シェスカ………」
「あなたの指示になら命を賭けられるし、あなたの指示があればもっと強く戦える」
「俺はそんないいもんじゃ………」
ルルもそうだが、俺を買い被りすぎだ。
俺は芝居をしているだけ。
2人が見ているのは、ジルじゃない。
俺が演じる、冒険者ジルだ。
「ジル。わたしは弱いの。すっごく弱い」
「はあ? シェスカ何言って………」
「今どう思った?」
「どうって…」
「ジルが自分は大したことないって言うと、わたしはそれと同じように思うよ。仲間と自分の戦力を正確に把握して? あなたの知恵も、正統に評価しなくちゃ、いつか間違うよ」
「………!」
シェスカの言葉には重みがあった。
日々、命を賭けて闘う者の重みが。
だから、思っていることをはっきりぶつける。
「シェスカが見ているのは、芝居をしている俺だよ。本当の俺が演じて、フィルターのかかった…」
「ジルは誇りを持って芝居をしてきたんじゃないの?」
「誇り………?」
「じゃないと、あれだけの技術、身に付かない。あなたの培った技術もひっくるめたあなたを、わたしは見てるよ。それとも、わたしの目は節穴?」
「………シェスカには敵わないな」
何も言えなくなった俺はガーフを飲んだ。
苦いけど、美味しいと思った。
アイリが食堂へ来たのは、すぐあとだった。
「ジル、ちょっと面倒な事になったッス」
「面倒って?」
「エドがジルのライアーになりたいって言ってて………」
「はあ?」
とりあえず、顛末を先に聞く。
ギルドは、盗賊行為よりも、国を騙した村長の罪を重く受け止めた。
村長と、それに加担した他の村の長達、村長と癒着関係にあった孤児院長には処分が下る。
その後の後継等は追って考える。
特に要望のあった孤児院は、悪いようにはしない。
とのこと。
すでに、捕縛隊が組織されているらしい。
「んで、なんでエドはそんなアホな事を?」
「なんでも、子供達にお話を聞かせてるのを見て、憧れたらしいッス。自分もあんな風に子供達を笑顔にしたい、あの技術を教えてほしいって」
「マジか………」
「でも、ジルはまだ冒険者じゃないよ? わたし達のホームに戻ってから登録する予定で………」
「伝えたッスけど、それなら登録するまで待つって言ってるッス。で、ギルドとしては、ライアーとして契約する意思があるかどうかだけはっきりしてほしいと」
「なるほどね」
なら、答えは決まってる。
「オーケー。契約するよ」
「いいんスか!? ロリコンッスよ?」
「確かに行きすぎてて気持ち悪いけど………」
「2人共…辛辣だね」
シェスカは生であの気持ち悪さを見てないからだ。
「芝居がやりたいって人を拒否するほど腐っちゃいないよ」
俺の言葉に、2人はキョトンとした顔を見せた後、呆れたように笑った。
「なんつーか………ジルはバカッスねえ、芝居バカ」
「ジルらしい理由だと思う。わたしは支持するよ」
そうして、俺はエドと契約する意思があることを明記した、契約まで処分しないように嘆願する書面に署名した。
俺がギルドへの登録を済ませたら、エドはザムラまで護送され、そこで正式に契約を済ませてから釈放、という流れになるそうだ。
これで、この街での用事は全て終了。
後はルルと合流して、一路港湾都市ザムラへの旅路へ戻る事になる。
その後、いくら待っても、ルルは帰って来なかった。
もーちゃんだけが帰ってきて、その背中には手紙がくくりつけられていた。
「ミックスの少女と馬車は預かった。返してほしくば、シェスカ・ロンド1人で墓場まで来い」
さ、新しい事件が起こりました。
囚われの姫はルルちゃん、救い出すヒーローはシェスカ姉さんです。
ロリコンは、かなーり後に再登場です。
お楽しみに………?
それでは、
ここまで読んでいただきありがとうございました。
良かったら、次も読んでくださいね。




