ルルデートと新たな遺失物
「それで、シェスカ。今日の仕事は終わったの?」
「あ、そうでした。それなんですけど、ルル」
「んー?」
「サニアから連絡がきました。」
「おぉ! 馬車治ったんだ!」
んん? 話がわからないぞぅ?
「明日、発ちましょう」
「ごめん、俺にも説明を………」
「あ、そうだった。ごめん、おにい…ジル」
「んっ?」
「修理に出していた馬車が直ったんです。あなた…ジルも、準備を手伝ってくださいね」
「んぐっ?」
2人に説明しても意味がわからないのはわかってるけど………言い間違い方!
「ジルどしたの?」
「いや…何でもない。その、まだ言い慣れないよね」
「あ、ごめんなさい。少しずつ慣れますから…」
「本拠に帰るよ! ジル!」
「本拠………2人のホームか」
「はい。旅の間は仕事をこなすのは難しいですから、ジルのギルド登録はわたし達のホームに戻ってからにしましょうね」
2人のニコニコとした顔を見るに、喜ばしいニュースなのだろう。
俺も釣られて顔がほころぶ。
「そっか…2人のホームか。楽しみだな」
「うふふ、そう言われるとなんだか嬉しいですね」
「すっごくいいところだよ!」
「それで、ルル。わたしは今から馬車を受け取りに行って、そのまま食糧の支度をしておきます。あなたはジルとのデートの中で、日用品を揃えていただけますか?」
「了解だよっ! …って、あ、そうか。デート………」
指摘されて急に意識したのか、ルルの頬が赤く染まる。
可愛らしい反応のルルをシェスカと2人でニマニマと生暖かく見守る。
「ならさっさと動こうか。お昼はどうする?」
「わたしは明日の朝までに買い出しの品を揃える事を考えると、直ぐに動かなければなりませんので、我慢します」
「シェスカ…………………………………………………大丈夫?」
「だっ、大丈夫です! 仕事によっては、何日単位で食べないことだってあるんですよ!?」
「そうか…それで、普段から食い溜めを…」
「ジル! …もう、知りません!」
「ははは、ごめんごめん」
やっとシェスカと気安いコミュニケーションがとれてホッとする。
なんだか、やっと2人の仲間になれた気がした。
「ジルはどうする? お腹空いてる?」
「いや、忙しくなるんだろ? 俺も大丈夫だよ」
「んー、それならアタシ達は屋台かどっかで軽く済ませようか」
「オーケー。それじゃ、行こうか」
3人で顔を見合せ、動き出した。
「ジルー。最初はこっちだよ」
ルルと一緒に宿を出た後、目の前の大きな道を横断する。
行き交う馬車の間をすり抜けて反対側へ。
「こちら側へ来るのは、初めてだな」
「そうなの? あ、わかった。シェスカの事だから、ギルド周辺しか回ってなかったんでしょ?」
「おぉ、正解」
「鍛冶所で変なテンションなってたでしょう?」
「あぁ、なってたなってた。振り回されたよ。楽しかったけど」
「あはひへへ…やっぱり」
軽く雑談しながら最初の店へ向かう。
途中で、忘れていた事を思い出し、ルルを呼び止めた。
「んー? ジル、なーに?」
「服、すごく似合ってるよ。ルルのイメージにぴったりで、可愛い」
「~~~~~~~!!!ま、まぁね…」
「あ、照れた」
「てっ、照れてない!」
頬を染めたルルのしっぽはブンブンと左右に振られていた。
喜んでくれているなら、まぁいいだろう。
焦げ茶のズボンは、かなりのローライズなホットパンツだった。
ローライズなのは、腰の後ろから生えるしっぽや翼を避ける為だろう。
上半身は、白いブラウスに、薄手の緑色をしたカーディガン。
やはり、腰の後ろを大きく開けるように縫製されていて、後ろについて歩いていると、子供のような背丈に不釣り合いな程セクシーなのだが、天真爛漫なルルとは意外にもマッチして見えた。
調整用の革紐がほとんど見当たらないところを見ると、だいぶめかしこんでくれたようだ。
そんな風に考えているうちに、最初の店へたどり着く。
どうやらここは生活雑貨の店のようだ。
「歯みがきは10本は買うから。予備はあるけど、一応ね。後はジル用の食器と盥と…」
ルルは子供っぽい見た目からは想像できない程にてきぱきと品物を選んでいく。
流石に旅慣れているなと感心する。
品物は全て店の見習いが宿まで運んでくれるらしい。
大荷物を抱えてうろうろする事はないようで、少しホッとした。
「次は衣類だね。途中に屋台あるから、休憩しようか」
てくてくと歩いていくルルの後ろをついていく形で歩く。
何でも見た目で判断するのは良くないが、シェスカが必ずどこか服を摘まんで引っ張っていたのと比べると、先に立って歩くルルが不思議だった。
「ちゃんとついてきてね! はぐれないよーにっ!」
クルリと回ってこちらに胸を張って注意した後、再び胸を張って歩き出すルルのしっぽの先がピクピクと震えてるのを見つけて、思い直す。
あぁ、これ、あれだ。
初めて後輩が出来て、イキってる感じのヤツだ。
やっぱりうちの子供っぽい担当はルルだ。
屋台では、スライスした肉を、薄く伸ばして焼いたパンに挟んだような物を食べた。
ルルはやはりカプッとかじりついて、まるでリスのようにはむはむと食べていた。
癒しの時間でした、はい。
衣料品店では、今まで子供っぽい、小動物っぽかったルルが一転して、元気な女の子になった。
鍛冶所で見たシェスカのように、くるくると俺を振り回す。
「下布は最低5枚ね! 水場があったらみんなの服はアタシが洗濯するけど、下布だけは自分でやること! 後は、旅の必需品、マント!」
ピタッ! と立ち止まったルルが指差す先には、かなりの数のマントがあった。
モコモコとした毛に覆われたもの。
かなり薄手で、豪華な刺繍がされたもの。
「どれがいいの?」
「今から暖かくなっていくから、ここから………ここらへんまでがオススメかな」
「暖かくなっていくなら、必要なくない?」
「あまーいっ! 昼は暖かくても、夜は冷えるんだから。ブランケット代わりにもなるし、火の番をするときなんかにクッション代わりに下に敷いたりもするし、重要なんだから」
まあ、ちっこくて旅慣れた先輩様が言うのなら間違いないだろう。
マントはしっかり丈を合わせなければならないようで、店員に連れられて、店の奥にある試着スペースへ向かう。
ちっこい先輩ルルは、その間に他の衣類の候補を選んでおいてくれるらしく、陳列スペースに残った。
試着スペースの造りは、元の世界の物とほとんど同じだった。
へえ、初めて見たけど、この世界にも鏡ってあるんだ、なんて思いながら鏡を覗きこむ。
鏡に写った自分の姿を見て、愕然とする。
(これ………誰だよ!?)
そこには、黒髪に黒茶の目という、自分と配色だけが同じの、俺とは似ても似つかない少年が写っていた。
若い頃の自分の姿を記憶の中から掘り返して比べるが、断言できる。
別人だ。
(俺、若返った訳じゃなかったのか?)
店員の「どうしました? お客さん?」という声で我に帰った俺は、ルルがついてきていなくて良かったと考える程に狼狽していた。
自分が失った物が名前の記憶だけでなく、もう1つあったのだと、初めて気づいた瞬間だった。
楽しい楽しい旅立ちの支度の途中で発覚した新事実。
狼狽するジルくんですが、出発は明日です。
果たして、気持ちを立て直す事が出来るのでしょうか?
うーん………。
普通にあとがきっぽいの書いてみようかと思ったけど、
いまいちですねww
次回からは今までのユルい感じに戻します。
それでは、
ここまで読んでいただきありがとうございました。
良かったら次も読んでくださいね。




