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action!~売れない役者の異世界生活~  作者: とみ
第1場 異世界生活の始まり
10/47

この世の常識と初外出のお誘い

本日2回目ー

2人と共に過ごす事を決めた日から5日間。

俺は静養に努めた。

陽が昇るころには目を覚まし、シェスカが手配してくれる朝食を起きてきた者から順番に食べる。

俺が起きる時には必ずシェスカが食事を終えており、配膳と食後のお茶、怪我の痛み止めの薬の用意などをしてくれた。

俺が食事を終える頃にルルがのそのそとした動きで起きてきて、ルルが食事を始めるのを見届けた後で、シェスカは出かけていた。

ゆったりとベッドで昼まで過ごした後、体調が良ければ、昼食は食堂で食べる。

その頃にはシェスカも一旦宿に戻ってきていて、時間が合えば、共に食事をした。

夕食までは、2人と話したり、昼寝をしたり…夕食は必ず部屋で3人で一緒に食べた。


俺達が過ごす部屋は宿の3階にあり、普段2人が拠点としている場所ではないらしい。

なら拠点へは帰らないのかと尋ねると、そもそも今いる街は本来の拠点がある街ではなく、シェスカの仕事の都合で出かけてきているのだそうだ。


シェスカの仕事は冒険者ギルドの職員。

とはいっても、どうやら正規の職員という訳ではないらしい。

この世界における冒険者というのは、色々な小説やゲームで見た事のあるような華やかなイメージとは違い、端的に言えば、武装した無頼漢の事。

好意的にとるなら、護衛等をして金を稼ぐ、傭兵やガードマンみたいな者達の事らしい。

そのギルドともなれば冒険者同士の揉め事も日常茶飯事となり、シェスカはそんな揉め事の調停を基本的には仕事としているらしい。


正規の職員でないというのは、そもそも冒険者ギルド自体が国営であり、運営は国から直接給金を得ている、言わば国家公務員のような者達の仕事なのだそうだ。

シェスカは冒険者ギルドに所属し、実績を積み、認められた上で、ギルドと直接契約を交わし、調停を始めとした運営への協力をしている立場。

要するに、冒険者を管理する立場の冒険者。


シェスカ…どんだけ強いんだ。


ならばルルはどんな仕事をしているのかと尋ねると、一応冒険者ギルドに所属はしているものの、形式的にはシェスカに雇われた従者のような立場らしい。

冒険者が戦闘をしたり、探索をしたりしている間、仮拠点となるキャンプで留守番をしたり、糧食や装備等、荷物の管理をする為に冒険者が雇う人材。

社会的には補助者(サポーター)と呼ばれるらしい。

ちなみに冒険者は、戦闘・護衛を主に行う武装者(ガーダー)、探索や哨戒を主に行う探索者(スカウト)、それに、補助者(サポーター)を全て合わせて冒険者なのだそうな。

チームとして動くのなら、探索者(スカウト)の仲間もいるのかと尋ねると、仕事の内容によっては臨時で組んだりする事もあるが、基本的にはシェスカひとりで両方の役目を果たせるのだそうだ。


シェスカ…どんだけ強いんだ!?


他にもルルは、俺の調子が悪くて昼寝をしている時なんかは、宿の清掃等のお手伝いをして、お駄賃を貰ったりもしているとのこと。

おそらく宿の食堂も手伝った事があるのだろう。

昼食を3人で一緒に食べている時に、宿の女主人や女給、客の一部からにこやかに話しかけられる事もあり、天真爛漫な性格や見た目の愛くるしさも手伝って、一種のローカルアイドルのような人気者になっていた。


流石はルル…可愛らしいもんな。


ちなみに、何故朝食や夕食の手配を補助者(サポーター)であるルルではなく、武装者(ガーダー)であるシェスカがしているのか、と尋ねると、俺が意識を失っている間、ルルが俺の側を離れたがらなかった事や、ルルが食堂へ出向くと女主人等から手伝いを頼まれたりして、ルルが断りきれない時もある事を考慮して、シェスカが気を効かせていたらしい。

この話を昼食時にした際には、ルルが赤面して固まってしまい、シェスカがニヤニヤとルルをからかいながら(俺の側を離れたがらなかったくだりは、嫌らしい程に詳細に)説明してくれた。

真っ赤な頬をプクリと膨らませたルルにペチペチと二の腕を叩かれたり、可愛らしく照れたルルを見た周りから生暖かく見守られたりして、なんとも居心地の悪い思いをする事になった。


………まぁ、ルルは可愛らしいもんな。

しょうがない。





元の世界との違いを突きつけられ、狼狽える事もあった。


先ずは水回りだ。

目を覚まさない間の俺の汗は、ルルが水に浸した布で毎日拭ってくれていたらしい。


「いや、だってアタシ、サポーターだから…」


等と真っ赤な顔で言われた為、目を覚ましてからはどんなに体調が優れなくても、木製の桶に水と布を用意してもらって、自分でやった。

2人も、毎日風呂等に入る訳ではなく、大きな盥に水を張り、その中で水浴するとのこと。


風呂という概念がない訳ではなく、単純に毎日風呂を用意するのは、常識的に考えて、とんでもなく贅沢な事なのだそうだ。2人の本来の拠点がある街には、この街にはない、大きな公衆浴場があり、2人もよく利用しているらしい。

その話を聞いた時には、まだまだ純日本人な思考の俺は、早く怪我を治して風呂へ入りたいと切実に願った。

元気になって街へ帰ったら、3人で一緒に公衆浴場へ行こうとシェスカに誘われた際に、全力で喜んでしまった為、赤面したルルに「男と女は別のお風呂なんだからね!お兄さんやっぱりエッチ!」と言われた。


大変大きな誤解があると、断固主張した。


トイレに関しては、寝ている間の事に関してはハナから聞かなかった。

…聞けると思うか?

最初は、ルルに各階にひとつあるトイレまで案内してもらい、勿論ひとりで入った。

扉を閉めた後、扉の向こうからルルが震えた声で使い方を説明するせいで、なかなか…その、出てこなかったのは苦い思い出だ。

水洗トイレなど勿論ある訳もなく、昔ながらの和式便所よろしく、底が暗くて見えない長方形に切られた穴の中へ用を足す。

部屋自体は割と広めで、水の張られた桶と小さな手桶、乾燥した藁束の山が用意されていて、かなり精神的に厳しかったが、用を足した後は念入りに処理した。

念入りにやり過ぎているのか、臀部の痛みも厳しい物があるが、いつかは慣れると信じている。

これは後で聞いた話だが、下水のような施設はなく、深く掘られた穴の突き当たりは大きな空洞があって、汚水等はそこで神の御技によって、母なる大地へ帰っていくのだそうだ。

…この世界にも微生物やなんかは存在するのだろう。


夜になると問題になったのが明かりだ。

宿が用意してくれる明かりは基本的に蝋燭で、元の世界の蝋燭では感じた事のない独特の匂いがした。

白い布を張った、蝋燭を囲むくらいの小さな衝立のような物を使ったりして、少しでも明るく見えるように工夫はされているが、如何せん光量が足りない。

ホラーに耐性のある人間で良かったと思うくらいには雰囲気のある室内になってしまう。


ルルは種族特性上夜目が効くようで平気そうにしていたが、シェスカは日中と比べると人との距離が明らかに近くなった。

3人でいる時は問題なかったのだが、ルルがトイレに立ってしまった時には、俺との距離をグイグイと詰めてきて、別の意味で雰囲気が出てしまわないように、会話をしながら頭の中で素数を数えたりしていた。

ちなみに、トイレから戻ってきて部屋の様子を見たルルに、頬をピンと伸ばした人差し指でグイグイと突かれたりもした。


痛い。


後は服。

俺がこの世界に来た時に来ていた服は怪我をした際に破れたり血で汚れたりで、既に処分されていた。

2人が用意してくれていた服は、白いシャツに黒のズボン、濃い茶色のブーツのような革靴だった。

シャツもズボンもブカブカのサイズで、胸元、脇、腰等、至るところに調整用の革紐がついていた。

この世界の服は、オーダーメイドでない限りは全てワンサイズで、余程の金持ちでない限りは、普段使いの服はこんなものなのだそうだ。

ブーツは流石にサイズが合わせてあったが、やはり至るところに革紐がついていたので、一度全部緩めてみると、縫製されていない型紙くらいまで分解出来てしまい、再度履くのに苦労した。

革靴はどうしても蒸れてしまうので、使わない時には全て緩めて換気するためらしい。


下着は基本的に存在せず、男も女も1枚布を体に巻きつけるだけ。

靴下も同様だ。

裕福な人達は下着用の身体にフィットした服を用意するらしいが、すぐに汚れてしまうのが明らかな所に金をかけるような事は、庶民はしないものらしい。

男なので、上半身はいらないかとも思ったのだが、怪我を覆うように巻き付けられている包帯がズタズタになってしまったり、包帯のない肩や首回りが赤く擦りむけてしまった。

何年も同じ服を使っていけるように、服には基本的には丈夫で強靭な布が使われている。

それを悟ってからは、面倒でも朝起きたら自分をミイラのようにするところから1日が始まるようになった。


余談だが、うちの女性陣は、ルルは勿論、シェスカも割と慎ましやかなお胸をしているので、問題ないのだが、立派な物を持っている方は、コルセットのような物で身体のラインを整えたりもするらしい。

自分からこの話題を持ち出してきたシェスカが「まぁ、わたしには関係ありませんが…」等と遠い目をしたり、ルルが「アタシはまだまだこれからだから!」と慎ましやかな胸を目一杯張ったりしていた。

俺は愛想笑いだけでこの時間を乗り切った。


1番の違いは、やはり魔法(のような物)の存在だろう。

ルルは一切使えないらしいが、シェスカは身体能力を向上させたり、空気中から水を作りだしたりといった事が出来るそうだ。

フィクションの世界であるような派手な攻撃魔法みたいな物は、今のところ存在しないらしい。

魔法という言い方はルルが先日使っていたが、この世界でもフィクションのような扱いで、シェスカが使う程度の物は、「神の力の一端」という呼ばれ方らしい。


俺にもその素質があるか?とワクワクしながら尋ねたところ、シェスカは素敵な愛想笑いで明言を避けた。

薄々感づいてはいたが、異世界物の物語でよくあるチートな能力は、俺は持っていないようだ。

…ちょっとだけ、ちょっとだけ残念。




2日連続で昼食を食堂で食べた5日目の夕食後。

シェスカが初めて俺の予定に外出を入れた。


「いいの?」

「はい。体調が許せば、明日は怪我の状態を診てもらうために治療士の所へ行き、少し街の様子を見てまわりましょう」

「わかった。そっか…楽しみだな」

「ええ、わたしもです」


クスクスと笑いながらシェスカは頬を染めつつ言葉を続けた。


「明日はわたしが付き添います。うふふ、その…デ、デート…ですね」


照れるくらいなら別の言い方をすればいいのに、とは思いつつも、シェスカの可愛らしい様子にほっこりとした気分で眠る準備を進めていった。

めっちゃ長なった…汗

説明to説明になりすぎないように挟み込んだエピソードを考えるのが思いの外楽しくて、長くなっちゃった原因かしら…?


読みにくかったらごめんなさい…

精進します。


次回は遂にデートですよ!デート!

先ずはシェスカ姉さんと!

お楽しみに!


それでは、

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

良かったら、次も読んでくださいね。

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