第21話〜イングレア王立学園入学試験〜
第21話スタートです!
今回のお話ではユーマくん達が学園に入学するための試験を受けに行きます。
果たしてユーマくん達は合格するのでしょうか?
......
......
僕がルディとシルフィに告白し、プロポーズも済ませ、婚約者となってからおよそ1ヶ月が過ぎた。
この1ヶ月間は、取り立てて特別な事はなく、3人で勉強したり、魔物を狩ったり、3人でデートしたり過ごしていた。
そしていよいよ、今日僕達3人は、イングレア王立学園への入学試験に向かうのだ。
学園までは、3人で歩いて通う予定なので、今日も馬車は無し。ここ数日王都を色々散策したので学院の場所は分かってる。貴族街と平民街の境目位にあり、貴族、平民、どちらも通いやすい場所にある。
今日持って行く物は、受験票と筆記用具、それと冒険者を証明するギルドカードだ。
市民証もしくは冒険者登録している者は、ギルドカードがいると言われていたので、僕達はギルドカードを持っていく事にした。
因みにこのギルドカードは、王立の銀行でのキャッシュカードとしても利用される。
口座はカードに直接記録される。
本人以外に起動出来ない上、口座の内容を変更するのは銀行でしか出来ない為、銀行があればどこでも引出しと預入が出来る。不正操作は出来ない程強固なセキュリティになってる。
色々な準備を進めて、僕達はシンフィールド家の前で待ち合わせにしていた。
「シルフィ、いよいよだね」
「うん!紅銀の大地の皆様に鍛えられた私達なら、問題無く合格できると思うよ」
「だね笑。僕なんかは力をある程度セーブしないと目立ちすぎて大変な事になりそう」
「そうだね笑」
2人で話していると、可愛い幼馴染であり僕のもう1人の婚約者である、ルディが走ってきた。
「ユーマ君、シルフィ、おはよう」
「おはよう、ルディ」
「ルディ、おはよう」
シルフィは今まで僕やルディには、様付けをして敬語で話していたけど、僕とルディが3人で婚約者になったのだから、呼び捨てとタメ口で話すようにしようと持ちかけ、今のようフレンドリーな感じになった。
ただタメ口には慣れていないのか、未だに敬語か丁寧語で話す時がある。
因みにそれぞれの従魔は、お留守番である。
厳密にいえば、リムルとルクスに関しては、僕の空間魔法の中にいるから、付いてはきている。
3人で、談笑しながら歩いていると学園に着いた。
到着した学園は、大きさで言えばちょっと大きい私立の高校位かな?一学年百人の三年制で三百人しかいないのでそれくらいの大きさだ。
それにしてもこの王都の大きさでこの人数。
ここしか学園と呼ばれる所が無いって事は、相当狭き門だな。
さて、そんなに大きくないって言ってもそこは学校なので、初めて来た人間にはそれなりの大きさの建物である訳です。
何処に何が有るのか分からないので案内板で試験会場を検索中です。
「おい貴様、そこをどけ」
それにしても凄い人数だな、これ。
「おい! 貴様! 聞こえないのか!」
うーん、会場はっと......あ、あったあった。
「この無礼者が!」
何か後ろから肩を掴まれた。ので肩を掴んでる腕を逆に掴み返し、相手の後ろ手になるように捻りあげた。さっきから五月蝿いし、何なのコイツ?
「ぐあっ! 貴様ぁ! 何をするっ離せ!」
「さっきから何なのアンタ? いきなり人の肩掴んどいて何をするは無いんじゃないの?」
腕を解放しながらそう問いかけると、金髪碧眼の生意気そうなガキがこっちを睨んでる。
「貴様っ!私はチャルス・フォン・サルバードだぞ!」
「はい、僕はユーマです」
唐突に自己紹介されたな。
周りからクスクス笑われてる。何故だ?
「き、貴様ぁ、俺はサルバード伯爵家の嫡男なんだぞ!」
「へぇ、そうですか」
「おのれぇ! 俺に逆らって只で済むと思ってるのか!?」
ここまで言われて気が付いた。
これ貴族の坊っちゃんが権力を振りかざして俺に絡んでるのか。魔法学院内だからまさかと思っちゃったよ。
それにしても......
「あのさ、えぇとチャルス君? もうその辺にしといた方が良いんじゃない? 貴族が権力を振りかざす事は厳禁なんでしょ? 厳罰もあるって聞いたよ?」
「たかだか魔法学院の教師なんぞに、この俺を裁ける訳が無いだろうが!」
おおう!すごい過激発言っ!
国のお偉いさんが聞いたら、ただじゃ済まないだろうな。
「ん?よく見れば、貴様の両サイドにいる女どもは、見目麗しいではないか。貴様!その女どもを私に渡せば、今までの無礼は不問にしてやるぞ」
あ⁉︎今こいつなんて言った?
ルディとシルフィを引き渡せだと?
「おい!貴族の嫡男だか何だか知らないが、僕の婚約者であるルディとシルフィに手を出してみろ、絶対に許さないからな!」
これはちょっと不味いか?、と思っていると横合いから声が掛かった。
「そこまでだ」
「っ! あ、あなたは....」
どちら様?
「ここイングレア王立学園において権力を振りかざす行為は厳罰に処するとあったはずだ。それにそのルールはこの学園の校則では無く、王家の定めた法であったはずだ」
「う、そ....それは」
おや? チャルス君が急に大人しくなった。ひょっとして彼より上位の貴族様なのかな?
「それとも、先程の発言は王家に対する叛意なのか?」
「ま! まさかそんな事は!」
「ならばこれ以上騒ぐな。ここは入学試験会場だ。皆の心を乱す様な事をするな」
「は……はっ、かしこまりました」
そして、俺に怨みが篭った様な視線を向けてから立ち去って行った。
なんで?
「大変だったな。大丈夫か?」
「ん? ああ、全然大丈夫だよ。というか学園であんな行動を取る奴が居るとは思わなかったからさ、最初気付かなかったよ」
「ふっくっく、あの自己紹介を返したのは傑作だったな」
高位貴族っぽい少年が楽しそうに笑っている。
伸長は僕よりかなり高いな。
175cmくらいあるんじゃないか?黄土色っぽい金髪と蒼い目をしており、白磁の肌っていうの? 透き通る様な肌をしたすっげえ美少年だ。
「それにしても、いくらこの学園が貴族の専横を許さないとはいえ、実際に相対すると萎縮してしまう者の方が多いんだがな」
「ああ、俺権威とかあんまり関係ない立場だし、あれを恫喝って呼ぶのもどうかと思うよ。あんまり迫力無いもの」
「フム、聞いた通り大分ズレしているみたいだな」
「聞いた通り?」
誰に?
「ああ、自己紹介が遅れたな。私の名はアウグスト。アウグスト・テラ・イングレアだ。近しい者からはオーグと呼ばれているから、君もそう呼んでくれ」
イングレアってもしかして?
「ユーマ、君の事は父上から色々と聞いてるよ」
やっぱり、ガルム陛下の息子だったか。
という事は、この国の王子様じゃないか?
「ふふ、こうしてようやく会えたんだもう少し話をしたい......所だが、そろそろ試験会場に行かないとまずいかな?」
「え、あ! ホントだ。もう行かないと」
「それじゃあ、お互い頑張ろう。次に会うのは入学式かな?」
「はは、そうなる様に頑張るよ。じゃあな、オーグ」
「またな、ユーマ」
こうして僕達3人は、この国の王子であるオーグと初めてあったのである。
あれから試験会場にて筆記試験を受けた。やっぱり人で一杯だった。
終わり。
筆記試験にこれ以上何を言えと?
そして実技試験が始まった。
試験は室内練習場で行われ、設置された的を破壊できれば良し。
破壊できなくても魔法の錬度を見るらしい。
受験番号順に五人づつ室内練習場に入り、一人づつ魔法を披露していく形式だ。
僕は5人のうち、最後だった。
因みにルディとシルフィとは、班が分かれてしまったので、この試験が終わったら合流する予定だ。
最初の奴が受験票と市民証を試験官の先生に渡してる。
試験官の先生は、黒いローブに肩に届く位の黒い髪をした眼鏡をかけた女の先生だ。何か黒いスーツ着てたら、秘書って感じの人だな。
「それでは、自分の一番得意な魔法を力の限り放ちなさい」
「因みに私の名前は、コノエよ。みんなよろしくお願いしますね」
「ハイ! よろしくお願いします!!」
おお!ルディ以外の同年代の魔法だ。どんな魔法を使うんだろう?
〈全てを焼き尽くす炎よ! この手に集いて敵を撃て!火球!〉
......
ボンっ!
......
「ふう」(ドヤ顔)
......恥ずかしい! 恥ずかしいよ! 何だよあれ? 詠唱ってあんななの? それにファイヤーボールってベタにも程があるよ! 撃つまでが派手だった割に効果がショボいよ! それなのに何でドヤ顔してんの?
これはマズイ。
皆の期待に応えようと全力でやろうと思ってたけど、全力でやったら確実に変な目で見られる。全力出すのは止めとこう。
そして試験はどんどん進んでいく。
〈荒れ狂う水流よ! 集い踊りて押し流せ!水球!〉
......
〈風よ舞え! 全てを凪ぎ払う一陣の風を起こせ!風!〉
......
〈母なる大地よ力を貸して! 敵を撃ち払う礫となれ!土礫!〉
....うおぉ.......しんどい....何だこの厨二病発表会は!?
聞いてるだけで大昔の黒歴史が甦って来るようだぜ....
人知れず精神にダメージを受けていると前の4人が全て終わったので、次は俺の番だ。さて、どんな魔法を使うか?
「さて次は....」
俺の受験票とギルドカードを見て試験官の先生が一瞬目を見開いた。
「君が....ふむ。それでは、自分の一番得意な魔法を力の限り......と言いたい所だが、君の場合は注意しておこう」
注意? なんで?
「君はあの的を破壊する程度の威力の魔法でいい。くれぐれもこの練習場を破壊するような魔法は使わない様に」
陛下から伝わってるな?これは。
ていうか陛下はどんな説明したんだよ!
その逆特別扱いにちょっとションボリしながら定位置に着いた。
さて、的は両手両足の無いマネキンみたいな形をしてる。
今までの魔法に耐えているので強度はそこそこありそうだ。
ちなみに不公平が出ない様に毎回新品を用意してる事から、強度があると言ってもそこまで高価な物は使ってないだろう。
となると......あれでいいか。
僕は、自分の魔力を集中させると、雷属性のある魔法を指先に集中させた。
そう、雷弾〈サンダーバレット〉だ。
バレット系の魔法なら、下位の魔法使いでも訓練次第で、撃てると聞いたことがあるから大丈夫だろうと踏んでいた。
〈サンダーバレット!〉
無詠唱でその現象を起こした事に周りがザワつく。それを細長く成型し弾丸として打ち出した。
超スピードで打ち出された雷の弾丸は目にも止まらぬスピードで的に吸い込まれた。
ドンッッッ!!!!
大音量を撒き散らして的が爆散する。そして的を打ち砕いた弾丸は勢い衰えず後ろの壁に着弾した。あ、やっべ。
ドガアァァァン!!!!!
壁に施されていた魔力障壁にぶち当たり、練習場全体を激しく揺らした。そして全てが収まった時、周りの面々の反応は、唖然、としか言い様の無いものだった。これ先生に怒られないか?
「一つ聞きます....今の魔法は、全力を出したのですか?」
「いえ? 先生が練習場を破壊するなって言うから、相当抑えて撃ちましたけど」
「あ......あれで相当抑えた?」
「ええ」
「そうですか。分かりました。試験はこれで終了です。皆さんお疲れ様でした」
良かった。怒られずに済んだ。
因みにルディやシルフィも試験は問題なかったようなので、3人とも合格するのは、誰がみても明らかだった。
全ての試験が終わった魔法学院に教師達が集まっていた。
「そんなに凄かったのか?紅銀の大地の息子は」
「凄いなんてモノではありませんでした。相当抑えて、本人は軽く撃ったつもりの魔法で練習場が壊れるかと思いました」
「そ、そんなに?」
「ええ、しかも無詠唱で、撃ち出すまでも一瞬でしたね」
「なぁ、それ、ワシらが教える事あるのか? 寧ろワシらが教わりたいんだが」
「それは私も同じです。授業の時は皆のお手本となって貰っては如何でしょうか?」
「おお!そりゃあ、良いな」
「そうですね。その方向で行きましょうか」
「はい。所で入試順位はどうなったんですか?」
「筆記も見ました。まだ採点中ですが、ほぼ満点だった様ですね」
「となるとこれは....」
「ええ、今年の『入試首席』は決まりですね」
こうして、ユーマ達の知らぬところで、ユーマ含め3名の首席、次席、3席が決定した瞬間である。
あとがき
今回から第2章スタートです。
ユーマ君含め、みんなの無双っぷりにご期待ください。
もしこの話が面白いと思ってもらえたら評価やブックマークをよろしくお願いします。
1人1人の評価はとても大切ですし投稿や作成の励みになります。
また「ここはこうした方が面白くなるよ」とか「ここ面白かった」などの感想もどんどん受け付けています。
感想は確認次第返信していきますのでじゃんじゃん送ってきてください。
次回予告
試験を終え、自宅に帰ったユーマ達。
その頃、父ブライトはギルド長から驚愕の事実を聞いていた。
次回:忍び寄る脅威