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ヤマトタケル物語  作者: 現代人が古代人にツッコんでみた
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生い立ちなどなど

前回、この連載では「ヤマトタケル」は「倭建」と書く、と高らかに宣言しましたが、実は「倭建」は後程もらう尊称で、本名は「小碓命(おうすのみこと)」と言います。

晴れて「倭建」となるまで、しばらくは「小碓」と書く事にしましょう。


小碓は、纒向之日代宮(まきむくのひしろのみや)(奈良県桜井市にあったとされる宮殿)で生まれました。

『紀』では、幼い頃から猛々しく、そのまま逞しく成長し、身長は1丈あったと記しています。

1丈=10尺で、『記』『紀』執筆時の奈良時代の1尺は約30cmなので、身長は3mもあった事になります。

尺が一番短い時の中国の周時代では1尺=約20cmですから身長は2mとなり、まあ、あり得なくもないですが、とにかくデカかったようです。


そんな小碓のお父さんの景行天皇(けいこうてんのう)もデカくて、身長は1丈2寸あったと言います。

この中途半端な「2寸(約6cm)」は、父親のプライドなのでしょうか。


ところで、この「景行」も尊称で、『記』では大帯日子淤斯呂和気天皇(おおたらしひこおしろわけのすめらみこと)、『紀』では大足彦忍代別天皇(おおたらしひこおしろわけのすめらみこと)と書かれています。

(正確に言うと、「景行」は『記』『紀』執筆以降に贈られた漢風諡号(かんふうしごう)で、「大帯日子淤斯呂和気」や「大足彦忍代別」は和風諡号(わふうしごう)、本名は「大足彦尊(おおたらしひこのみこと)」です)

でも、短くて便利なので、「景行」を使う事にします。


説明するまでもなく、景行も実在の人物ではないのですが、『記』『紀』では陵墓に埴輪(はにわ)を飾っていた古墳時代(4~5世紀辺り)の天皇と設定されているようです。

と言うのも、景行の父、垂仁天皇(すいにんてんのう)(つまり、小碓のお祖父(じい)さん)の時に、貴人の墓で家来を殉死させるのは残酷なので、代わりに埴輪を作ったという話が『紀』に出てくるからです。

ちなみに殉死の様子は、「悉生而埋立於陵域、數日不死、晝夜泣吟、遂死而爛臰之、犬烏聚噉焉。(悉く生きて陵域に埋め立て、数日死なず、昼夜泣き呻き、遂に死んで腐り臭い、犬や烏が集まり喰らう)」というホラー張りの描写になっています。

殉死、恐ろしすぎます。


一方、小碓のお母さんは景行の皇后で、『記』では針間之伊那毘能大郎女(はりまのいなびのおおいらつめ)、『紀』では播磨稲日大郎姫(はりまのいなびのおおいらつめ)と書かれていて、現在も兵庫県の稲美(いなみ)町として残っている地名にちなんだ名前と考えられます。

皇后のお父さんは若建吉備津日子命(わかたけきびつひこのみこと)との事ですから、岡山から兵庫の西辺りを支配した豪族の影響が反映されているのでしょう。


また、小碓には大碓命(おおうすのみこと)という兄がいて、『紀』では小碓と大碓は双子としています。

「碓」は「臼」と同じ意味で、名前に「碓」を付けた理由は、二人が生まれる時に景行が碓に向かって戒めたからと記しています。

何のこっちゃという感じですが、どうやら、妻が難産の時に夫が臼を背負って家の周りを回るという風習があったそうで、一人でも大変なのに二人分頑張ったので臼に毒付いたという事らしいです。

(この風習は、府中市や相模原市の民話にも残っています)

妻の苦しみを夫も分かち合うといったイクメンぶりを古代から発揮していたのでしょうか。

まあ、実際は、臼は農耕で大切な道具なので、呪術的な意味合いがあったと思いますが。


こんな奥さん思いっぽい景行ですが、ご多分に漏れず、伊那毘能大郎女や大碓小碓以外にも皇妃や皇子皇女がいて、子供は名前が分かっているだけで59人、分からないのも併せると80人いると書かれています。

『紀』では、『記』の妃がいたりいなかったり、子供の母親が違っていたりしていますが、やはり子供は80人いたと書かれています。

「80」という数は、どうしても譲れないようです。

当然ながら全部事実という訳ではなく、皇子のほとんどが地方豪族の祖先だとされている事から察せられる通り、地方の有力者が天皇の威光にタカって……もとい、集まって、繋がりを持ったのでしょう。


と、小碓の身上はここまでで、いよいよ次回からは物語部分に突入します。

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