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01

最近の話を読み返したら何だか文章が粗いことに気付いた今日この頃。


やー、すっかり寒くなってきましたね、朝寒くて眠くて起きられず筆がなかなか進まない~。そして自分で書いてて面白いのかわからなくなってきた~!!( ̄▽ ̄;)と読み返しては悶絶している作者です。――けど、もうそろそろ終わりも見えて来たので何とか最後まで頑張りたい……。

読者の皆さま、あともう少し、アメリアたちにお付きあい下さいませ!


「はぁ?ってことはつまり、アメリアはルイスの妹で、お前の娘だったってことかよ!?」

「俺ではない、ローレンスの娘だ。まぁだとしても、全面的に信用したわけではないがな」


「いやいや、それは信じようぜ。そんな嘘ついたって何のメリットもないわけだし、寧ろデメリットだらけだろ。どんな事情があったか知らないけど、父親のパートナー寝取るとか普通に人格疑うしな」

「にしてもアーサーって今も昔も変わらないのな。ある意味俺たちより行動力あるかも」


「黙れお前たち。少しは緊張感を持て」


 アーサーは今にも吹き出しかけているエドワードとブライアンの姿に、頬をひきつらせ深い溜め息をついた。



 まだ正午を回らない時間帯。アーサーとウィリアム、エドワードとブライアンの四人はウィリアムの屋敷の居間にいた。部屋の中央には長方形のテーブルと、それを挟んで三人掛けのソファが二つある。そのうちの一つにアーサーとウィリアム、そしてもう一方のソファにエドワードとブライアンが腰かけていた。


 アメリアが姿を消してから既に五日が過ぎている。ヴァイオレットとライオネルの情報を掴むと言ってウィリアムの屋敷を出たエドワードとブライアンは丸三日姿を見せず、今朝になってようやく戻って来た。それも庶民を装い、かなり薄汚れた格好で、である。二人はその後ろに同じく庶民を装わせ、眼の下にくっきりとした隈をつけ疲れ果てた様子のトリスタンを引き連れていた。


 そのトリスタンだが、彼はアーサーの顔を見るなりそれはそれは弱々しい様子で「二度とこのお二人の護衛は御免です」と泣きついたのである。どうやらこの三日の間に余程酷い目にあった様だ。そういう訳でトリスタンはアーサーの指示により、ハンナ、マーク、そしてエレックに連れられて客室で仮眠を取ることとなった。そのついでに、マークとエレックも今日一日休暇を与えられた。

 その為今ここにいるのは、本当に四人のみである。


 アーサーとウィリアムは腕を組み、対面に座るエドワードとブライアンに呆れたような視線を向けていた。エドワードとブライアンは今、三日ぶりの入浴を済ませたばかりである。着替えはウィリアムのシャツを借り、全身から入浴剤の甘い香りを漂わせていた。


「やー、いい湯だったわ。サンキューな、ウィリアム」

「いい。薄汚い格好で彷徨(うろつ)かれる方が迷惑だ。それよりお前たち……その品のない香りは一体何だ」

「ああこれな。一昨日貰ったんだ、娼館で。せっかくだから使ってみた」

 平然としたエドワードの言葉に、ウィリアムは眉をひそめる。


「娼館?何故そんな処に」

「情報を集める為に決まってんだろ。あそこにはありとあらゆるネタが集まるからな。定期的に出入りしてるんだ」

 ニヤリと笑うエドワードに、アーサーとウィリアムは呆れたように嘆息した。もう何を聞いても驚くまいと、二人にじっとりとした視線を向けて話を促す。


「それで、収穫は」

「ヴァイオレットの居場所はわかったのか」


「まぁ聞けよ。俺たち、ヴァイオレットとライオネルを調べてたら二人の男に行きついたんだ」

「二人の男……?」

「あぁ。ヴァイオレットが一週間前にとある男を探してたって情報を手に入れてさ。それを調べてた。二人は知ってるか?先週、街の隅で喉を掻ききられた遺体が発見されたんだ。そいつこの辺では結構有名な奴でさ、孤児を拾っては面倒見てたんだよ」

 この言葉に、アーサーはピクリと眉を震わせる。


「ヴァイオレットがその男を探していたと……?」

「そうだ。どうやらその男は殺される当日の昼間、セントラル通りでガキにスリを働かせたらしい。――アーサー、ウィリアム、お前たちは知ってる筈だ。そのガキを追い掛けたアメリアのせいで、お前たちひと悶着あったんだろ?」

「――!」

 エドワードの言葉に、ウィリアムは顔を蒼くし思わずソファから立ち上がった。そのときにアメリアが何者かに襲われ、首を絞められたことを思い出したのだ。


 それと同時に脳裏に過るには、あの日の夜の出来事。高熱を出したアメリアを医者に見せた後、ウィリアムはルイスに命じたのだ。アメリアを襲った者を探し出せ――と。けれどそれはもうウィリアムとルイスの契約が終了してしまった後のことだった。その為だろうか、ルイスはウィリアムの命令に対しこう答えたのだ。

 “見つけた後のことはこの僕に一任頂けますか。それをお約束頂けるなら、必ず探し出すことをお約束致します”――と。ウィリアムは一度は躊躇ったが、結局その申し出を受け入れた。それがこの結果というわけだ。


「……ルイスだ」

 ウィリアムの呟きに、三人の視線が集まる。


「俺が命じた。その男を探し出せと。……見つけた後は好きにさせて欲しいというルイスのその言葉を……俺が許した」

 彼の口から零れ出る、どこか張り詰めたような声。


 だが三人はこの程度で驚いたりはしなかった。エドワードに至ってはソファの上で胡座をかきながら「やっぱりな」と平然と呟く。


「まぁ――つまりはこういうことだ。ウィリアムの指示を受けたルイスは、ヴァイオレットに男を探させ殺させた。街外れのパブで何度か二人が一緒にいるところを目撃したって情報もあるから、これは間違いない。――それから、もう一つ」

 エドワードが人差し指をピンとたて、それに応えるように今度はブライアンが口を開く。


「殺された男が連れていた子供の名前はニックと言う。ウィリアムは知ってるな?アメリアを見つけたとき、彼女と一緒に居た筈だ」

「あぁ。マクリーンが背負っていた子供のことだな」

「俺たちニックとは顔見知りなんだ。二年前、俺たちがアメリアと街のパブに通っていたときに着替えら何やら世話になった」

「――!」

 その言葉にウィリアムは眼を見張る。アーサーも眼光を鋭くした。

 そう、男はニックを使いアメリアを誘き寄せたのだ。つまりこれは、偶然起きたことではなかったのだ――と。


「話はこれで終わりじゃない。俺たちはそのニックに会ってきたんだ。彼は今マクリーン家の屋敷にいる。ライオネルに連れてこられたと言っていた」

「――何故、マクリーンがその子供を」

「さぁな。それはニックも知らないと。けど、アメリアとライオネルが姿を消したことを伝えたら、気になる情報を教えてくれたぜ」

 その言葉と同時に、エドワードとブライアンの瞳が鋭く細められる。二人は顔を見合わせ一層笑みを深くした。


「ライオネルは深夜になると屋敷を抜け出してどこかへ出かけていたらしい。だが朝になってニックがそのことについて尋ねても、凡そ知らない様子だったと。まるで別人であるかのように」

「別人……?」

 ブライアンの言葉に、アーサーとウィリアムは考え込む。それはまるで、アーサーとローレンスの様ではないか、と。


 ブライアンは続ける。


「それだけじゃない。俺たちはニックからこれを預かって来たんだ」

 そう言うと彼はどこからともなく一本の短刀を取り出し、テーブルに置いた。それは一見どこにでもありそうな、革製の鞘に納められた銀色の短刀。それはアーサーとウィリアムには見覚えのないものだった。――だが。


「――それはお嬢様の……!」

 その声に四人が扉の方へ視線を向ければ、ハンナが驚いた様子で短刀を見つめていた。エドワードとブライアンはハンナを快く迎え入れる。


「そう、これはアメリアの短刀だ。ニックも、俺たちにも確かに見覚えがある。これは彼女が肌身離さず持ち歩いていた筈のもの。……だがこれを持っていたのはライオネルだ。俺たちが調べた限りでは二人は2ヶ月前のあれが初対面だった筈だから、恐らくこれはそのとき盗んだんだろう。でも問題はそんなことじゃない。

 ニックは言っていた。ライオネルは夜な夜なこの短刀を見つめ、ある言葉を繰り返していたのだと」

「……ある言葉?」

 ウィリアムは困惑げに顔をしかめる。


「あぁ。アメリアの短刀を見つめ、“もうすぐ君を迎えに行ける”――ってな」

「――なん……だと」

「意味わかんねーよな。でも、それを聞いて俺たちは思ったんだ。もしかしたらライオネルは――もしくは彼の中にいるかもしれないもう一人のライオネルは、アメリアと出会う前から彼女のことを知っていたんじゃないのかって」

「……まさか」


 アーサーとウィリアムは押し黙った。突拍子もない考えだが、これだけあり得ないようなことが起きているのだ、否定など出来る筈がない。それにローレンスは言っていた。あるはずのウィリアムの記憶が無い、と。魂が半分しか無いのだと。

 ――それはつまり、千年前の記憶を持ったもう一人のウィリアムが何処かにいるということにはならないか。ライオネルが、かつてのアメリアの恋人だったのだとしたら……“迎えに行ける”という言葉の意味が通るのではないか――と。


「それと――そもそも殺された男は何故アメリアを襲ったのかってことだけど。

 男は事件を起こす前に“エリオット”と名乗る男に会っていたらしい。アメリアを襲うように依頼したのはそいつだとさ」

「エリオット?聞かん名だな」

「そりゃあ偽名だろうからな。でも容姿はわかったぜ。男の仲間だった奴らの話によれば、“エリオットと名乗った男”は細身の長身、フードに隠れて顔は見えなかったらしいが、藍色の長髪だったと」

「……それは」


 二人は再び考え込む。それはローレンスより聞かされた、千年前のナサニエルの容姿と一致するのでは、と。


 それに思い当たった二人は一旦エドワードとブライアンの話を遮り、ローレンスより聞かされた内容を二人に話して聞かせた。加えてテーブルに一枚の地図を広げ、この三日の間に調べたナサニエル・シルクレットについての情報も述べる。


 エターニアの最西端の町、ダミアを救った医者が自身をそう名乗っていること。だがそのような人物は戸籍には存在していないこと。またそのナサニエルと思われる人物が、ここ数週間の間に何度かこの街で目撃されていたこと。そしてダミアには既にマークとエレックの部下である数人の騎士を派遣し、同時にウィンチェスター公爵とファルマス伯爵の名を持って、西部の土地を治める貴族及び領主たちに書状を出したことを。


 ――そして、冒頭に戻る。


 エドワードとブライアンはひとしきりアーサーをからかうような言葉を浴びせた後、「決まりだな」と宣言した。


「アメリアを襲うように男に依頼したのはナサニエル。だがそれを知らされていなかったルイスはヴァイオレットに男を始末するように命じ――そのヴァイオレットは、ナサニエルと共にアメリアを連れ去った。……こいつら点でバラバラだ、付け入る隙は大いにあると思うぜ」

 エドワードの言葉に、ウィリアムが頷く。


「そうだな。ライオネルについては謎も残るが――少なくともローレンスの言った通り、ナサニエルにはルイスの言葉を聞く気は無いように見える」


 するとその言葉に応えるように、アーサーは薄い笑みを浮かべた。「分かりやすい罠であることは間違いないが――」と呟いて、アメリアの短刀を左手に取り右手で柄を握り締めると、音もなく鞘から引き抜く。そしてその切っ先を、躊躇いもなく地図に突き立てた。テーブルに深く食い込んだナイフに貫かれているのは、“ダミア”の三文字――。


「明朝出立する。ナサニエルを追うぞ。準備をしろ、お前たち」


 その言葉を受け、三人は一斉に立ち上がる。


「ハンナ、君にはここに残ってもらう。アメリアから連絡が来る可能性もあるからな。俺たちは日に三度、居場所を伝える文を出すから」

「畏まりました。何かあれば早馬を出します。どうか……お嬢様を宜しくお願いします」

 祈るようなハンナの表情に、ウィリアムは優しく微笑み返す。


「心配するな。アメリアは必ず連れ帰る」

「はい。私、皆さまを信じております」



 そして翌日の日が昇る頃、彼らは数人の騎士を引き連れてエターニアを出発した。


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