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序章 77代目魔王

「魔王様!」

 声が聞こえる。

「魔王様!」

 目が動かせる。

 ゆっくりと視界が開いていったその先には__。

「おお、魔王様がお目覚めに__」

「きゃあぁぁぁ!!!」

 沢山の悪魔たちがいたのだった。




「ま、魔王様、落ち着いてください!」

「これで落ち着けっていうの!?目が覚めたらいきなり悪魔たちに囲まれているなんて、誰が落ち着いていられるの!?」

 私は16歳になったばかりの、璃々井美偉子。

 いつものように眠って目覚めたら、いつの間にか、わけの分からないことになっていた。

 どういうわけか、魔王扱いまでされているし。

「ご安心ください、私たちは魔王様の僕です」

「そういうことじゃなーい!」

 本当にわけが分からない。

 自分の体を見下ろすと、パジャマからかなり変わっていた。

 黒い体ともいうべきようなことになっている他、最低限のマントなどがつけられているので、威厳がないということはない。それ以上に、乙女の大切なアレが見えていないことにほっとしていたが。

 だからといって、この状況がいいというわけではない。

 私はさっさと帰してほしい__と、考えた所で、これは夢かもしれないと思った。

 私はいつも、空想することが大好きだ。

 だからといって、男の子たちが特別に仲良くするアレが大好きというわけではない。

 宇宙人が攻めてきたとか、魔法が使えるとか、25世紀の世界とか、かっこいいあの人との恋愛とか、そういう空想が大好きだ。

 本当にいるはずの私は、どうせ自分が魔王として、世界征服したいと思っているはずだ。空想世界で。

 それならば、もう少しこの世界を見るのもいいだろうと思ったので、悪魔たちを眺めた。

 小さい熊のような悪魔、3つの頭を持つ犬(要するにケルベロス)のような悪魔、大きな牛(要するにミノタウロス)のような悪魔、中にはデーモンとでも呼ぶべき、人間に近い悪魔までいた。

「魔王様、落ち着かれたようですね」

 そう話してきたのは、この悪魔たちで最も偉そうな、いかにも悪い魔法使いといえる、老いぼれの悪魔だ。

「魔王リリス様、どうか、私達を導いてください!」

 そう言って、その悪魔が土下座すると、周囲の悪魔も一斉に土下座した。

 段々、考えていることに奇妙さを覚えていると、夢でないという可能性に至り始めた。

 まさか、と思いつつ、自分の頬をつねってみる。

 痛い。

 と、いうことは__。

 現実だ。

 まぎれもない、現実だった。

「え、えーーー!!!!」

 その悲鳴が、遺跡の屋上で激しく伝わった。

「ま、魔王様!?やはり、まだ混乱しているので?」

「しています!ものすごくしています!!どうしてこうなったの!!」

 アイデンティティが微妙に崩壊していることにも気づかずに、自暴自棄になり始めた時。

「私たちがお呼びしました」

 老人の悪魔が、そう答えた。

「え・・・あなたたちが?」

「そうです。我らの国が今にも滅亡しそうなので、新たな魔王様をお呼びしたのです」

 少しだけだが、事情は分かった。

「・・・私の質問に、答えられるものは答えて」

「承知しました。ようやく、落ち着きましたか」

 どうやら、状況はこれで理解できるようだ。

 念のため、もう一言加えておく。

「そうじゃない。今の私は何も知らない。だから、あなたたちに聞くの。言っとくけど、魔王になるとは一言も言っていないからね」

「・・・承知しました」

 悪魔相手に堂々と敵対発言するのは、やりすぎたかと思ったが、少しの沈黙で済んだ。




 その話を纏めるとこうだ。

 今、ここにいる場所はデッドナイト王国。

 死の夜とも解釈できる名前は、悪魔たちの住処に相応しい。

 対して、勇者がいる場所はエクスヘブン帝国。

 極地の天国だろうか。

 勇者の名は、エクスバルドという。

 彼は、最強の武具を揃えて、ほぼ全ての魔法を扱える勇者と呼ぶのに相応しい人物だとか。

 究極剣・アルティメットカリバー、永遠盾・エターナルアイギス、伝説鎧・レジェンドアーマー、万能兜・マイティヘルムの4つを携えている。

 正直、ネーミングにものすごく突っ込みたい。中二病か何かか?

 さらっとながしたが、この世界には魔法が存在する。

 つまり、私のいた世界とは別物のようだ。

 自身の魔力を放出することで使えるようだが、それは後にしよう。

 また、この世界において、強さはレベルという形で表される。

 今の私はレベル1。

 まだ来たばかりとはいえ、魔王である(とされている)のに、あんまりではないか。

 ちなみに、エクスバルドとか言う勇者、レベルは以前確認した時に、65535まで上がっていたらしい。

 どう考えても、普通じゃない。

 この手のゲームだと、高くても999が精々だというのに。

 対して、こちらは一番高い奴ですら、68程度である。

 どう解釈しても、絶望的としか言えない。

 圧倒的強敵である勇者は、王都でやりたい放題しているらしい。

 暇つぶしに魔王を殺したり、20人を超える女性と弄んだり、無駄にプラチナ像を作らせたりと、もう突っ込み所しかない。

 とりあえず、この勇者が圧倒的に強すぎて、色々酷い奴だということは分かった。

 次にこちらの事情はというと、ほぼ毎日のように、大寒波や日照り、大洪水などと、大惨事としか言いようがない。

 魔王を頂点として、国をまとめて、領土を広げようとしたのだが、エクスバルドに完敗。

 初代魔王・サタンを失った後、「魔王」の名を持つ悪魔を生成して、新たな魔王を誕生させては、エクスバルドに殺されるということを繰り返している。

 魔王を作ることに色々突っ込みたいのだが、この不毛と言えそうな状況を76回も繰り返しているのも驚きだ。

 さらに言えば、死に方も無駄に多彩で、公開処刑されるわ、水没させられるわ、飢餓で死んだわ、酷い時には、全身を弄られて心を壊されて殺されたとか、誕生して3秒ももたずに死んだとか、魔王城を大爆破されたとか、もう理解が追い付かない。

 数十回繰り返した頃に、この世界だけの力では駄目だと判断して、異世界から魔王を呼び出すことにしたのだ。

 そして、76回目の魔王復活の儀式で、高い知性を持つと評判である地球から召喚しようとした。

 その結果、77代目魔王・コードネーム「リリス」として、私は魔王リリスとなった。

 なぜ私が呼び出されたかというと、意識的に、共鳴を起こしていたのが、私だったという。

 確か、魔王の世界征服とかを妄想して、今の現実につまらなくなってきたと思い始めていたからだろう。

 もし、その時に戻れるなら、全力でぶん殴りたいが。

 戻る方法については、儀式をあべこべに行うことで戻れるらしい。

 万が一、この世界で死んでも、召喚された場合は元の場所に戻される、つまり、帰れるのだが、ここにいた記憶は全て失ってしまう。

 言い換えれば、完全に記憶に残らない夢となってしまうとのことだ。

 魔王となった私には、特別な才能を与えられたらしい。

 今はまだ、特筆できる程の凄い力を持っているわけではないのだが、レベルアップしてスキルポイントを得て、スキルを習得することで特殊技能が使えるようになるということだ。

 この辺は、よくあるRPGと関係が近いが、現実?に持ってこられると、突っ込み所が満載である。

 他の悪魔たちも同様に強くなれるのだが、魔王と比べると、そこまでは強くなれないとのことだ。

 勿論、今、レベル1の魔王である私よりは、遥かに強いのだが。

 しかし、エクスバルドが悪魔狩り、魔王狩りを繰り返しているせいで、大半の悪魔はレベルがわずかの新米悪魔ばかりだ。

 過去の魔王も含めて。

 レベルが100を超えたのは、初代魔王・サタンくらいで、次にレベルが高かった魔王は、60になろうとしていた程度だった。しかも、大半はレベル20にも満たない内に、勇者たちに倒されるのが現状であった。




 正直、不安しか感じていない。

 だが、この国の圧倒的な不安な状況、勇者の国の天国から生まれた悪夢のような勇者。

 その話を聞いて、私は決断した。

 私は、77代目魔王・リリスとして、勇者エクスバルドを倒すことを。

「・・・ということです。魔王様、理解できましたか?」

「・・・分かった」

 それまでと口調が違っている私に対して、悪魔たちは歓声を上げた。

「あなたたちの思い、しかと受け止めた。この私が、77代目魔王・リリスとして、勇者エクスバルドを倒してみせよう!」

 そう宣言して、悪魔たちは大歓声を上げた。

 こうして、77代目魔王・リリスとして、勇者エクスバルドを倒す、勇者と魔王が入れ替わったかのような、奇妙な冒険の旅が始まったのである。

はじめまして。

一部の作品でご存知の人もいるかと思いますが、雅弥華蓮です。

異世界系のシナリオを描こうかと考えたら、王道とはずらした、勇者と魔王のお話になりました。

最初は序章として、作品の導入部分、プロローグとして纏めました。

初っ端からぶっ飛んだ設定が多数現れましたが、いかがでしょうか?

この作品は不定期更新です。

気長にお楽しみください。

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