第一首 6話
「今の悲鳴はなんだ…!?」
小屋にいた村長とその他の男達が慌てふためいている。
(彼女が気づいたんだ。私が、いないことに。)
「おい貴様!一体何をした!?」
村長がローレンスに向かって怒鳴り問いかける。
「…私は何もしてはいない。君達が彼女から私を引き離したのが悪い。」
「さっきからその彼女とはいったいなんなんだ!」
ローレンスは惨殺された少女を見てふぅ…とため息をはく。
「君達にそこまで教える義理は無い。だが、忠告はしてやる。」
「ここからすぐに逃げろ。死にたくなかったらな。」
「ぐっ!この化物がっ!」
ガンッ
怒りに震え村長はローレンスの入った鳥籠を蹴り飛ばした。
「村長…どうします?こいつの言うとおり逃げた方がいいんじゃ…」
「さっきの悲鳴はアグじゃないか?やばいんじゃないか?」
と男たちはざわつき怯えだしていた。
「く、ええい!貴様ら落ち着かんか!こいつが言ってることなどはったりじゃ!確かにアグたちはやられてしまったかもしれんがここで迎え打てばよかろう!」
村長は猟銃を構え男達を叱咤する。
「そ、そうだな。あいつらは二人しかいなかったがこっちは10人以上いるんだ囲めぶぁびっ…!」
ドゴオッ
という音とともに蹴破られた壁に挟まれ、男の一人が死んだ。
「ひっ…!ひゃあぁあああ!」ドンッドンッ!
男たちが情けない悲鳴を上げながら現れた黒煙を纏った少女に対して発砲する。
が、しかし。虚しくも弾は空を切り少女に当たることは無かった。
「ぐぎゃあぁああ!!」
「たずげ…っ…!!」
男達の血肉が切り裂かれ、押し潰され周りを紅く染め上げていく。
ものの数分で小屋の中は阿鼻叫喚の巷と化した。
「な…なんなんじゃ…なんなんじゃ!あの化け物は!」
村長がその凄惨たる光景に喚き叫ぶ。
そして転がった鳥籠に気付き、手にとるとローレンスに
「おっ、おい貴様!アレは何じゃ!?止めろ!いや、止めて下さい!お願いしますぅ!!」
と哀願する。
ローレンスはギリ…と口元を歪めながらも
「…私を今すぐ籠から出し彼女に渡して逃げろ。」
と教える。
それを聞くと村長はすぐさまポケットから鍵を取り出し籠を開けローレンスの首を取り出す。
「ひ、ひい…こ、これで」
ブシャッ
が、一手遅かった。
ローレンスを渡す前に村長は頭を殴り飛ばされてしまう。
首から上を失った村長は両手でローレンスを掲げたまま絶命した。
地獄と化した小屋に生きた人間は最早一人もいなかった。