第一首 5話
ローレンスが監禁されている小屋から若干離れた場所に川が流れていた。
少し幅広い川で深さは大人であれば膝下くらいだろうか。本来かかっていたであろう橋は壊されていた。
二人の男が何かを待ち構えている。
「なあ…聞こえたか。今の。」
若い男が川の対岸に猟銃を向けながら隣にいる強面の男に訊ねる。
強面の男も同じく猟銃を構えている。
「…気にするな。俺達はただこれから来るだろう化け物に鉛弾を撃ち込むだけだ。」
「そ、そうだな。」
強面の男は気丈に振る舞い答えたが内心恐ろしくてたまらなかった。
(何で俺がこんなことやらねばならんのだ!俺はただの猟師だぞ!化け物退治は専門じゃねえ!)
銃を構えどれだけ経ったか。数時間かもしれないし、もしかしたらまだ数分かもしれない。
「うちの村が貧乏でなきゃ城の兵士を駐在させられたのによ。」若い男が愚痴る
「まったくだ…。」それに強面の男が答えたその時
ザワザワ
森がざわつきだす。
「何か来るぞ!!」強面の男が叫ぶ。猟師としての勘が危険を察知したのだろう。額から汗が流れ落ちる。
ザザザザザ
対岸の奥から何者かが物凄い速さで向かってくる。
(大きさから見ておそらく獣でも一つ目でもない。デュラハンか?)
猟師の経験から強面の男が予測する。
その姿が月明かりで照らし出され、その顔が見えた。
「頭がある!?女!?」
強面の男がそれに気づいた時、そのまま意識は途切れた。
グチャッ!
強面の頭が乱暴に吹き飛ばされた。
首から上を失った胴は血を噴きながら膝をつき、ゆっくりと倒れこむ。
若い男は見ていた。
鬼の様な形相をした少女が凄まじい速さで対岸から一気に飛び、そのまま強面の頭を殴り飛ばしたのだ。
「あ…ああ、わあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」ドォン!
若い男は目の前で起きた惨状に恐怖し、悲鳴をあげながら少女を撃った。
グジュッ!
弾は空を切り、次の瞬間男は白目をむき、少女の巨大な黒爪に臓物をぶちまけられ、絶命した。
「フーッ! フーッ!」
荒い息づかいが聞こえる。殺した二人の返り血を黒煙が吸い取っていく。
少女は何かにひかれるようにローレンスの元へ向かって行った。