表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
首に交われば黒くなりて  作者: 人生浪人
2/8

第一首 1話

もう日も沈み始め、ただでさえ薄暗い森がさらに暗さを増そうとする中

まだ真夏だというのに丈が腰の下まである分厚いコートをまとい、目深にフードを被った者が森の中を歩いていく。

背丈は170センチ程といったところだろうか。

コートの裾から見える右腰には黒い鞭を携え左手には生首を抱えていた。

生首の顔は死人の様に白く、女性のように見えるが端整な顔立ちをしている。


「日が暮れてもまだまだ暑いな。」

抱えられていた首が喋る。声からして男性のようだ。


「…もう少しすれば森を抜けると思うのだが。この辺には凶暴な魔物がいるという噂もある。

できれば夜を迎える前に抜けたいところだな。」

首を持つ体は疲れてきているのか足取りが重そうに見える。


――キャアアアアアっ!


突然、前方から恐怖の入り混じった悲鳴が聞こえた。彼が声の方へ向かうと女性が魔物に襲われている。

ゆうに女性の三倍はある巨大な体躯に、無骨な棍棒を手に持った怪物。

腰に毛皮を巻いており、その顔には一番の特徴である『大きな一つ目』が見開かれている。


「ふむ、噂の怪物はサイクロプスか。ただの人間が敵う相手ではないな。」


腰が抜けて動けないのか、女性はその場にへたれこんでしまっている。

それを見てサイクロプスの目がいやらしく笑う。<獲物>が恐怖で震えているのが愉快なのだろう。

そして持っていた棍棒を女性をめがけ振り下ろそうとした瞬間!


――シュウッ!!  パシィッ!


棍棒に黒い鞭が巻きつき、狩りを中断させた。


  ギロリ  と大きな目が鞭をよこした方へ顔を向ける。


そこには首を抱えた者が右手に持った鞭だけで怪物の攻撃を止めていた。

そして、首は高らかに声を上げ名乗った。


「我はデュラハンの者、名はローレンス!サイクロプス、君に恨みは無いが女性に対しての暴力は見過ごすことはできないぞ!」

挿絵(By みてみん)


サイクロプスはローレンスと名乗った者の方に向き直り、棍棒に巻き付いた鞭を振り払った。

「戦うのは気が進まないが、君はそうもいかないようだな。仕方あるまい、ゆくぞ!」

真正面から突っ込んでくるローレンスに怪物は力任せに棍棒を降り下ろす。


ブオン! ドガッ!!


ローレンスはサイクロプスの股の下を滑り込むようにくぐり抜け、攻撃を回避しながら背中に回り込む。

空を切った棍棒は地面にめり込んでいる。


パシィンッ!!


怪物の背中に乾いた鞭の音が響く。が、虫に刺された程度の反応で怪物は振り向く。

「強靭な肉体を持つサイクロプス。だが、君の弱点は知っている。」

そう言うと同時に首を持った左手を大きく振りかぶり、サイクロプスの一つ目にめがけて首をぶん投げた。


ゴチュン!


サイクロプスの大きな瞳にローレンスの頭が直撃した。

「ガァアアアアアアアアッ!」

野太い叫び声を上げ、サイクロプスはその一目散に逃げ出した。


「ふむ、せっかく逃げてくれたのだ。深追いする必要はあるまい」

体に拾いあげられながらローレンスは言う。

「さて、怪我は無いかね?お嬢さん」

ニッと笑ったローレンスの歯が光も無いのにキラリと光った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ