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17.凪、軽音楽部に入部届けを出しに行く(後編)

 入部届けを出しに行くというミッションに些か気を張っていた凪であったが、理子のおかげ?でいつの間にか緊張をほぐすことができた。


 一度呼吸を整える。

「それでですね、今回自分がここに来たのは、軽音楽部に入部したいと思ったからなんです。入部届けを持ってきたんですけど、部長はまだいらしてないんでしょうか?」


 二日前、週初めにクラスの友人と様々な部室を回った時は17:00ちょっと前だったので、部員も多く凪たちのように部活見学に来る新一年生へのアピールのためにグループごとにローテで演奏していた。今日はまだ授業が終わったばかりだったためか理子と鉄之介しかいない。

 その時は三年生の女子生徒が場を切り盛りしていて、他の部員が彼女に対して部長と呼んでいたので、今日この場に部長がまだ来ていないことを解っての凪の発言である。ちなみに理子はその時部室にはいなかった。


「スーさん?もうそろそろ来ると思うよ」

 スーさんとな?理子の言葉で凪は真っ先に、あの国民的釣りバカコメディ映画のゼネコン会社社長が思い浮かんでしまった。鈴木だからスーさん?まさかスザンナではないだろう。凪の記憶では、彼女はどっから見ても日本人だった。ああキラキラネームって線もあるのか、などと口には出さず部長の名前を推測する。


「そう呼んでるのリコだけじゃん。活動開始は16:30からだから、部長も他の部員もそれまでには来るさ」


 部活見学の時は、部員は多少男子の方が多い程度で、意外に女子生徒の部員も少なくなかった。凪の勝手な想像では、アウトローな不良学生の溜り場の可能性を危惧していたのだが、フレンドリーな雰囲気にホッと胸をなでおろしたのは彼のの記憶に新しい。常葉高校は、凪の住む市において一番の進学校。そもそも不良生徒は少ないし部活動に汗することのない帰宅組がほとんどなので、彼の心配するようなことはなかったのだ。


 そういえば、と思いついたように凪は理子に話しかける。

「先輩は何がきっかけで軽音部に入ったんですか?中学時代を知る自分の勝手なイメージでは、同じ文化部でも文芸部って感じでしたけど」


「そういやナギくんとリコは、中学時代生徒会で一緒だったって言ってたな。どんな奴だったん?やっぱこんな感じ?」

 興味を持ったのか、凪が理子に尋ねた質問に鉄之介も乗っかる。きっと理子を揶揄えるネタの一つでもないかと思っているのではないだろうか。


「先輩は、眼鏡をかけていていつも本を読んでいるって感じの、今から想像できないくらいの落ち着いた感じの方でしたよ」


「いやいや、照れますなー」


「・・・。なので先輩が軽音部に入ってわいわいやってるのが想像できなかったんです」

 凪からしてみたら、中学時代のの生徒会で幾度となく助言をもらい彼を助けてくれた清楚な理子が、一年見ないうちに残念な子になっていたのが気がかりだった。


「自己分析ってなんか恥ずいけど、この学校に入学する前にメガネからコンタクトに変えたことで自分の殻を壊すことができたのかもねー。あ、これから来る子たちも左藤クンの先輩なんだから、あたしのことはリコでいいよ。あたしもテッちゃんみたくナギくんでいいかな?で、きっかけかぁ。あたし本の虫ってだけじゃなくて、詩とか書いてWebサイトに投稿してたのね。で、そのことを話したことがある友達が一緒に軽音入ってオリジナルの曲作って作詞してみないって誘ってきて。でもその子は彼氏ができて入部一ヶ月もしないうちに部活辞めちゃったのよ。・・・なんか思い出したら腹たってきた。リア充爆発しろー!」


 凪の目からは、コミュ力が高く誰とでも話せ、学校でも部活でも充実した生活を送れていそうな理子こそリア充に見える。コホンと咳払いをして会話をつなぐ。

「リ、リコ先輩は、作詞担当なんですか?」

 少し照れながら凪は下の名前で理子に話しかける。


「うんうん。あとボーカルとリズムギターね。一年の時はとりあえずカバーやりながらひたすらコード覚えてたよ。メンバーもあたしもやっとオリジナルやれるくらいになったし、メンバーが作った曲に詞を当てさせてもらってるんだ」


「すごいですね。リコ先輩の詞、見せてもらってもいいですか」


「ダメダメ。まだ粗削りだし日本語のままだから」

 珍しく理子が焦ったように返事を返す。


「日本語のままってことは、英語で歌う予定なんですか?」

 疑問に思い凪は理子に尋ねる。


「曲がメロコア?メロディック・パンクっていうの?ほらSC◯TLAND GIRLみたいな?それっぽい感じだから、英語がいいかなーって」

 SC◯TLAND GIRL、女性ボーカル/ベース、男性ボーカル/ギター、男性ドラムからなる3ピースの地方バンドで現在は活動を休止している。ボーカル/ギターを担当している理子は、このSC◯TLAND GIRLのボーカル/ベースSHI◯RIに憧れている。


「真実は、自分の考えた歌詞をストレートに日本語で曲に乗せるのが恥ずかしいだけなんじゃん?」


「テッちゃん、シャラップ!!」

 理子と鉄之介がわちゃわちゃと言い合いを始めた中、凪は自分の知らない単語が出てきたので理子に聞いてみる。


「SC◯TLAND GIRLってバンド名ですか?聞いたことないんですけどどんな感じなんですか?」


「メロコアを教えるんならSC◯TLAND GIRLよりハ◯スタのが定番じゃん?テレビのバラエティ番組とかでもイントロの部分がよく使われたりしているから、ナギくんも耳にしたことがあると思うよ、ほれ」


 鉄之介は自分のスマホを操作しイヤホンを凪に渡す。イヤホンから流れてくる曲に耳を傾ける凪。小気味良いドラムのビートにギターとボーカルとベースが乗るアップテンポの曲だ。アーティストはHi ST◯NDARD。曲は『please please please』。ボーカル/ベース、コーラス/ギター、ドラムの男性3ピースバンドである。ちなみに彼らが活動を一時停止した2000年の夏に凪が生まれている。


「はい、聞いたことあります。というか父がこういうの好きで車中や書斎で流してます」


「へぇ、ナギくんのお父さんって幾つくらい?」


「今年で40になると思います」


「なるほど。もろA◯R JAM世代だね。家でお父さんに色々ととお勧めのCDを借りて聴いてみるといいよ」


 A◯R JAM。Hi ST◯NDARDの企画により開催されたロック/パンクバンドのフェスである。1997年に初開催され、98年、2000年と多数のバンド/アーティストが参加したが、現在でも一線で活躍しているバンドも少なくない。その後Hi ST◯NDARDの活動休止に伴い中断していたが、2011年には横浜スタジアムで、2012年には宮城県国営みちのく杜の湖畔公園で2デイズ開催され、2016年12月には福岡ドームで開催予定である。


 さて、凪が、理子や鉄之介ととりとめのない話をしていると、一人また一人と部員であろう学生が部室に入室してきた。部長が入室したので入部届けを提出し、凪は軽音楽部の先輩から暖かく迎えられたのであった。

 私は4年前に開催されたA◯R JAM2012のDAY2に行ったことがあります。1次抽選には漏れ、2次抽選でチケットをゲットできた時は声を出して喜んだのを覚えています。

 しかしホテルはどこも予約で埋まっており、辛うじて予約したビジネスホテルは通常料金の2倍以上に跳ね上がっていました。さしずめA◯R JAM特需と行ったところだったでしょうか。

 晴れ渡る空の下、だだっ広い草原の中で行われたフェスは、最高の一言でした。フェスの翌日は、1年6か月前に被災した観光地を回り現地にお金を落とすことで気持ちばかりの復興支援をさせていただきました。

 4年ぶりに開かれるA◯R JAM2016の一般抽選、何卒当選できますように( ̄人 ̄) そして2016年4月の熊本地震で被災した方々が、一日も早く安らげる平穏な日々に戻られますようお祈り申し上げます。

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