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決裂

「ちょっと休憩しよう」

 功の言葉をきっかけに、それまで張りつめていた糸が弛緩したように、アシオトのメンバーたちはそれぞれ座りこんだり隣の人と話しはじめたりした。  

 アオはバーカウンターの中に入って、冷蔵庫に入れておいたペットボトルを取り出し、スポーツドリンクを火照った胃に流しこんだ。頭の上を、冷房のぬるい風が流れていく。

 換気が良いとは言い難い「ふくみ」は、熱い熱気がふくらませた風船のように破裂寸前まで膨れあがっていた。目に流れ落ちてくる汗を指でこすると、ペットボトルから口を離す。

 視線は無意識に正面の扉に吸い寄せられていた。

『あっついねー』

 頬から胸元、腕、足。見えている肌はすべて真っ赤になったポコちゃんがよろよろとカウンターに近づいてくる。汗で顔をてらてら光らせた丸い姿は、出荷される寸前の子豚のようだった。

 僕にもちょうだい、と言うとアオのペットボトルに向かって手をのばす。自分の分も冷蔵庫に冷やしてあるのに、カウンターまで回ってくるのが面倒なんだろう。

 アオは黙って蓋のしてないペットボトルを渡した。ポコちゃんは、砂漠で水を得た旅人のようにおいしそうにスポーツドリンクを飲んだ。

 ようやく人心地ついたらしいポコちゃんは、にっこり笑うとだいぶ中身の軽くなったペットボトルをアオに返した。目元に笑みを浮かべたまま尋ねる。

『マコト君が心配なんだね』

 ぼんやりしているようでその実誰よりも鋭い幼なじみは、アオの視線の先に気がついてたらしい。無意識に、ペットボトルを握る手に力が入る。

『おまえはどうなんだよ』

 尋ねると、ポコちゃんはあっさり頷いた。

『もちろん心配だよ。もう一週間だもんね』

 壁にもたれかかって話をしていた静香と黒田も、じっとこちらを見ていた。女の子たちのそういう表情はやけに迫力がある。

 アキバは扉近くのボックス席にぐったりと横になっていて、会話に気づかない。その隣でヨウが自分の流れる汗を気にもとめず団扇で恋人を扇いでいた。

 アネサンは、この一週間ずっとそうだったように、一切この話題に乗ってこない。黙って奥の扇風機の前で涼んでいる。

『辞めちゃうのかな』

 心配そうに、誰にともなく呟くように手を動かしたのは静香だ。その答えを探るように、いくつかの視線がアオに向けられた。アオは固く両腕を組み、扉を睨みつける。

 コーチに会いに行ったあの日以来、マコトは一度も練習に来てない。ポコちゃんや功が連絡しても出ないらしい。そう教えてくれたポコちゃんの顔はひどくさみしげだった。

 コーチと会ったときのマコトは、たしかに普通じゃなかった。マコトがどれだけコーチを慕っていたか聞いてはいたけど、あれほどまでとは思わなかった。あの瞬間、マコトの頭の中からアシオトのことが消え去ったのが、隣にいてはっきりとわかった。

 俺たちはチームだろう。

 合宿で言ったあの時の言葉に嘘はないつもりだった。だけど実際、マコトは一度も練習に来てない。自分の言った言葉を握りつぶすように、アオは拳を固く握りしめた。

 なにがチームだ。自分がひどく愚かな生き物のように思えた。

『もういいじゃないですか』

 黒田が言う。なにかを断ち切るかのように、素早い手話だった。

『ダンスの先生なら功さんがいるし、マコト君なんていなくても全然いいです』

 黒田は声も出してるんだろう。寝転がっていたアキバがむっくりと起き上がり、たしなめるようになにか言う。横顔だから、唇の動きはわからない。 黒田が目を吊り上げ、反論するように一層速い手話を繰り出す。

『あの子どうせ手話よりダンスが好きなんですよ。その証拠に、いつまで経っても手話が上達しないじゃないですか。もともとウチに必要ない人だったんです』

 その瞬間。アオは自分でも説明できない感覚に突き動かされて、気がつけばカウンターを出て黒田のもとに大股で歩み寄っていた。黒田がなに、と尋ねるよりも早く、両手が動く。

『あいつはあれでも一生懸命やってるんです。手話だって、前よりずっとうまくなったじゃないですか』

 自分でもわけがわからなかった。黒田が言ったことは、自分だって思っていたことだ。マコトは最初から手話が好きだったわけじゃない。むしろバカにしていた。サッカーチームの奴らと同じだ。そう思っていたのに。

 それでも、人に言われると腹が立つ。

 黒田は一瞬呆気に取られたようにアオを見ていたが、やがて唇をゆがめたように笑うと、

『それはアオ君がゆっくり手話やってくれてるからでしょ。聞こえないとわからないかもしれないけど、あの子、しょっちゅう手話やめて口で話してるし――』

 馬鹿にするな。もしアオの口がきけたら怒鳴っていたかもしれない。アオは瞳に怒りをこめて頷いた。

『たしかに俺は聞こえないですよ。だけど、それくらい知ってました。黒田さん、聞こえないとわからないことなんて、健聴者(あんたたち)が思ってるよりずっと少ないんだ』

 その言葉に、黒田がハッと青ざめる。

 アオは怒りを抑えきれず、そのまま鞄を持って入り口へと向かった。背後から誰かが追いかけて腕をつかむ。力任せに振り払うと、その人が横に倒れた。

 アオが振り返ったとき、アネサンが倒れたまま、肩を抑えてうつむいていた。乱れた金髪が表情を覆い隠し、どんな顔をしてるのかは見えない。瞬間、背中に冷たいものがはしった。

 ぐいっと肩をつかまれる。功だった。幼なじみの兄貴のこんな表情を、アオは見たことがなかった。声が聞こえなくても、功の目が、赤い舌と喉が、真っ赤な怒りの波をアオにぶつけてきたのがわかった。黒田はヨウに肩を抱かれ、真っ青になったままアネサンを見ていた。

 アオはそのすべてを押しやろうとするように、扉を乱暴に押して外に出た。夏の熱が身を焼いた。

 マコト。拳を握り合わせる。唇を強く噛む。

 おまえ、どうする気なんだ?


 マコト。

 呼ぶ声に顔を上げる。紺野たちに指導をしていたコーチが、床に体育座りをしていたマコトのほうに歩いて来た。マコトはかすかに姿勢を正す。じっと座っていた床は体温がうつって生ぬるく湿っていた。

 コーチはマコトの正面まで来ると、マコトを見下ろして

「まだ一緒にやらないのか」

 責めるでもなくそう尋ねた。マコトは答える代わりに、コーチの後ろでこちらの様子をうかがっている紺野たちに視線を向ける。紺野はマコトと目が合うとパッと視線をそらした。まるで肉食獣に遭遇して脅えるウサギのようだ。

 紺野はコーチが教えてるダンススタジオの生徒らしい。一年ほど前からコーチのレッスンを受けている、と聞いた。コーチに教わる前はダンスの経験が無かったらしく、動きはまだ拙い。

 マコトの視線の先に気がついたコーチが、隣に腰かける。

「あいつ、あれでも随分うまくなったんだぜ。最初は心配になるほど体力も無かったんだけど、近頃は筋肉もついてきたしな」

 楽しそうに笑う横顔を、初対面の人を見るような気持ちで見つめる。

 マコトたちの前から消えた後も、コーチはコーチの生活を営んでいた。そこで出会いの喜びや、新しい悩みもあったんだろう。マコトがそうであったように、この人にも。当たり前のことなのに、驚きが波紋のように胸にひろがる。

「どこのスタジオなんだっけ」

「上野。駅から中途半端に遠いんだよな」

 コーチはひとさし指と中指で、鼻と唇の間をなでるようにこすった。煙草を吸いたいときのクセだ。

 スタジオの場所じゃなく、名前を聞きたかった。自分が幼い頃通っていたスタジオと一緒だろうか。些細な好奇心は、けれど表に出ることはなかった。過去につながることは聞けない。一緒にずるずると引き出されるものが多すぎる。

 わずかな心の動きが、コーチにも伝わったらしい。踊る生徒たちを見る横顔に、もう笑みは無かった。起きぬけにそれまで見ていた夢の内容を思い出そうとしているような、表情の抜け落ちた顔をしている。

「でも、意外だな」

 マコトは声を明るくして言った。

「ボランティアなんて、超にあわねー」

「言うなよ」

 コーチは指を口元にあてたまま、ニヤッと笑う。

 この顔は見覚えがある。悪戯を思いついた子どものような顔。照れ臭いのをごまかすときの顔。

「しょうがねーだろ、これもシゴトだよ」

 コーチの働いてるダンススタジオは、小学校や中学校に行ってダンス指導をするボランティアをしてるらしい。

 だったらぜひうちのダンス部にも来てほしい、と頼みこんできた紺野の情熱――コーチは「しつこさ」と言った――に負けて、四月から時間を見つけてはホウ大に来ているようだった。

 楓がどういう経緯でそのことを知ったのかわからない。けど正確な情報じゃなかったところを見ると、あいつも誰かから伝え聞いたんだろう。

 ということは、知らないのは自分だけで、すでに噂では広まっていたのかもしれない。

 くしゃりと髪をかきまぜられた。視線をふたたびコーチにあてる。大きな手がマコトの頭に置かれていた。

「おまえ、踊りたいからここに来てんだよな?」

 確認するように尋ねる言葉になにも返せないでいると、コーチは黙って少し笑い、頭から手を離すと立ち上がった。

「煙草吸ってくる」

「紺野たちに教えてやれよ」

 コーチは言葉をいなすように手をひらひらと振る。

「ぼちぼちな」

 コーチが講堂から出て行く。マコトは無意識に肩に力を入れていたことに気づき、ため息とともにゆるめた。右足に巻かれた包帯を見る。

 まだ一緒にやらないのか。

 コーチの言葉を頭の中でくり返す。免罪符のように巻いた包帯のケガは完治してることを、コーチはとっくに見抜いてる。

 紺野がコンポを再生させて、また音楽が始まった。紺野たちが神妙な顔で位置に着く。積み木の城をつくるように、丁寧にひとつひとつの欠片が積み上げられていき、つながってダンスが生まれる。

 キャハハハ。

 張り詰めた空気を裂くように嬌声が上がった。マコトはチラと横目で声のほうを見る。

 段々わかってきたことなのだけど、ダンス部の中にはここを喫茶店として使ってる奴もいるようだ。マコトがはじめてここに来たときに座りこんでいた男女四人組は、日によって一人もいなかったり増えたりしていた。

 今日はいつもいる女の子二人に加えて、見たことのない顔の男が一人仲良く床に座りこんでいる。こんな暑いところにいないで、スタバでもマックでも行けばいいのに。おもわずそう言ったマコトに、女の子たちは屈託なく笑って言った。

 こういうのがいいんじゃん、青春ぽくて。紺野たちとおそろいの部Tを着た胸を、誇らしげに反らせる。

 あっつい夏の日にさ、クーラーもないところで一日中過ごしたこと、いつか大人になったら思い出すんだよ。あぁあたし青春してたなーって。

 予想もしなかった答えに、マコトはポカンと口を開け、それから笑ってしまった。そういうのもアリかもしれない。自分と同じ場所にいながら、目の前の少女たちは全然ちがうやり方で、それぞれの「青春」を作ろうとしている。奔放ともいえる自由さを、嫌いになれなかった。同時に、自分が同じように染まることはありえないな、とも思った。

 目の前で踊る紺野たち。奥で我関せずとばかり笑い合うグループ。マコトはどこにも入れず、毎日床に座りこんで気のすむまで目の前の風景を眺めていた。自分でも自分のしていることの意味がわからなかった。一体どうしたいのか。携帯を見るとポコちゃんや功の名前で不在着信が表示されている。それが恐ろしいものでもあるかのように、すぐに画面を変える。

 踊りたいから来てるんだよな。

 コーチの言葉が頭の中を回る。だったら踊ればいい。じっと座ってコンビニの肉まんみたいに熱気で蒸されているより、目の前でステップを踏む集団に飛びこめばいい。思っては立ち上がり、入っていこうとするまさにその瞬間、声を聞く。

 

 こっちへ来い。おまえは俺たちのチームだろ。


 声の主は、黒い目でじっとマコトを見ている。

 こいつ、こんな声してたのか。一度も聞いたことのない彼の声を想像して、かわいた息を飲みこんだ。


「君さ、もう来ないほうがいいんじゃない」

 しゃがみこんで帰り支度をしながら紺野が言った。ダンスシューズを袋につめた紺野は、出入り口のところで笑い合っている女の子たちを忌々しげに見た。

「これ以上、踊る気ない連中が増えるとやりづらくてしょうがないよ」

 マコトは紺野の視線を追うように、ジュースを回し飲みする女の子たちを見た。

「コーチはなにも言わないのか」

 紺野はふんっと鼻息も荒く、

「わかってるだろ? 言うわけないよ。そういう人じゃないんだ」

 そういう人とはどういう人なんだろう。紺野の目には、コーチはどう映ってるんだろう。

 思いを巡らせていると、紺野はあれこれ詰めてふくらんだドラムバッグを引き上げて立ち上がった。小柄な紺野は、向かい合うとマコトの口元に頭のてっぺんが並ぶ。

 紺野はキッと挑むようにマコトを見上げ、

「それなのに、君に対してはちがう。昔の知り合いだかなんだか知らないけど、なんだか」

 言葉を探すように口をもぞもぞと動かす。威勢が削げ、ふてくされた子どものような視線がマコトの胸のあたりに注がれる。

「なんだか、待ってるみたい。君が自分から踊りたいって言うのを」

「……そんなことねぇよ」

 答えをはぐらかして、視線を宙にさ迷わせる。コーチは紺野より一メートルほど後ろで、生徒たちと笑い合っていた。その輪の中には床に座りこんでいた女の子もいる。

「前に一緒に来た男の子って、耳が聞こえないの?」

 唐突な話題に、はっと紺野を見る。

「なにがあったか知らないけど、あんなふうに自分のことで怒ってくれる人、めったにいないよ」

「なにが言いたいんだよ」

 いらいらを隠そうともしないマコトの声に、紺野は肩をすくめる。ドラムバッグがわずかに揺れた。

「言ったとおり、踊る気がないなら来ないでほしいんだよ」

 紺野がマコトを見上げる。まっすぐな視線が、なぜかポコちゃんと重なった。胸が鈍く痛む。

「君、ほんとにここにいていいの? 君のしたいことってなんなの?」

 聞き覚えのある問いを、もう一度ぶつけられる。その時、

「マコト」

 振り返らなくてもわかる。コーチだ。紺野が気まずげに俯き、足早にマコトの前を去る。

 コーチの手がマコトの髪をくしゃりとかきまぜる。

「飯でも食ってくか」

 親しげに自分を見る眼差しに、すくいとられたように身動きが取れなくなる。マコトは曖昧に頷いていた。

 



 渋谷が乗り換え駅だというコーチが帰りやすいように、渋谷まで出た。ここ安くてうまいんだ、とコーチが連れて行ってくれた店は、偶然にもアシオトの新歓で使った店だった。  

 店員に二人だと告げると、コの字型のカウンターに通される。四月に自分が案内された座敷が向かいのカウンター越しに見えて、おもわず目をそらした。

 お通しの小鉢と一緒に、生ビールが運ばれてきた。カンパイ、とグラスをつき合わせる。コーチは喉をそらしてビールを飲む。日に焼けた喉が上下に動く。

「ひさしぶりだな、おまえと酒飲むの」

 プハッとジョッキから口を離したコーチは嬉しそうに目を細めた。マコトはジョッキを傾けながら頷く。

 マコトがはじめてお酒を飲んだのは中学ニ年生のときだ。コーチが「昔の男は十四で元服だったんだぞ」とよくわからない理屈を言ってマコトに飲ませたのだ。以来、二人でコーチの部屋で朝まで飲んだことは数え切れないくらいある。まったくたいした「先生」だ。

「来週」

 運ばれてきたサラダを咀嚼しながらコーチが言う。

「ジャパン・ダンス・アワードがある」

 マコトは口に運びかけたなにかの和え物を小鉢にもどした。

「もうそんな時期か」

 鼓動が速くなる。いきなり話の核心を突いてこられてとまどう。

 マコト、と呼ぶコーチの声は少し低くなっていた。ダンスの指導をするときの呼び方。

「一緒に行こう」

 コーチの目がマコトを捕らえる。びくりと体が揺れた気がしたけど、実際は石のように固まって身動き一つしなかった。コーチは淡々と続ける。

「今年は無理でも、来年必ず一緒に出よう」

「――だって」

 ジャパン・ダンス・アワード。あれが全ての原因だった。そこから始まって二人の間に生まれたしこりは固く沈殿したまま、この一週間正面から語られたこともなかった。

 それなのにいきなり、出場なんて。マコトは拳を固く握りしめ、前を向いた。

「嫌だよ」

「マコト」

 非難するような声に、ますます拳を握りしめる。ハリネズミのように、全身をチクチクとした嫌な感触が這う。

「俺はたしかにダンス部の練習を見に来てる。でもそれだけで、別に入部するなんて言ってない」

 隣からコーチの手が伸びてくる。掴まれる寸前、身をよじって振り払う。耳元で鼓動の唸る音が聞こえる。コーチの眉がしかめられている。ワガママな子どもを見る母親のような顔。カッと頬が熱くなる。

「あんた、なに考えてんだよ。目の前からいきなり消えて、俺がどんな思いだったか、考えたことあるのかよ。どうして」

 やっぱりこの話を避けて通ることはできないんだ。マコトは自分の声がかなり大きくなっていることも構わず、

「どうしていなくなったんだよ。それで今度はまた一緒に踊れなんて、ムシが良すぎるだろ」

 お客さん、周りの方のご迷惑になりますので――。慌てた様子で店員が止めに入る。

 コーチは痛みを我慢するような顔でマコトをじっと見ていた。やがてため息をつくと、店員に謝り、ちらっとマコトを見た。手負いの獣を見るような、哀れむような、途方に暮れたようにも見える顔で、

「まぁ、落ち着け」

 低い声で言うと、煙草に火を点けた。そのしぐさで店を変える気はないと悟り、マコトは唇を噛んで座りなおす。周囲の客が好奇に満ちた視線をこちらに投げてくるのが煩わしい。中途半端に残っていたビールをひと息にあおる。

「おまえさ」

 煙草の灰を灰皿にトントンと落としながら、コーチは呟くように言った。

「いじめられてただろ」

 予想もしないことを言われ、ジョッキが手から滑り落ちそうになる。振り向くと、コーチは真剣な顔でこちらを見ていた。

「いじめ?」

 マコトの脳裏に、上履きが隠されたりノートにカミソリが仕こまれていたりという「いじめ」の図がランダムに浮かんでは消える。コーチは重々しく頷く。マコトは慌てて

「俺が、いじめって、誰に?」

「ダンス部の奴らだよ」

 コーチは隠せない苛立ちと怒りを瞳に乗せ、煙を強く吐き出す。

「紺野たちに?」

「じゃなくて、高校のとき」

 なにとぼけてんだよ、とコーチが言う。高校のとき。楓たちに? 俺が、いじめられてる?

「いや、そんなことないと……」

 ふっと、楓の言葉が蘇る。


 おまえだけが気づいてないんだ。コーチもとっくにわかってた。このチームはチームとして終わってたんだ。


 ぐっと唇を固く噛みしめ、うつむいた。

「よくわかんねぇよ、俺」

 いつも見落とす。人の気もちも、自分の置かれている状況も。見えないことが多すぎて、すべて終わった後に、「あぁこういうことだったのか」と気づかされるんだ。

 コーチはマコトをチラッと横目で見て、また視線を正面に戻した。

「おまえのことだから、同級生がシカトするとか一緒に帰ってくれないとか、そんなことどうでもいいんだろうなって思った。実際、俺それとなくおまえに聞いたことあるんだよ」

 全然覚えてない、と言うと、クッと短く笑った。

「そうだろうな。おまえ、俺しか見てなかったもんな」

「きもち悪い言い方すんなよ」

 ふて腐れて小鉢に残った和え物を一口で平らげる。ジョッキに手を伸ばすと空だったので、店員に向かって手を上げる。

「まぁ事実じゃねーか。俺もそうだったしな」

「……あんたもなにか食えよ。さっきから吸ってばっかだぜ」

 着ているシャツに染み付く煙草の臭いを想像して、今からげんなりする。帰ったらソッコー洗濯機に放りこもう。

「話そらすなよ」

 コーチは煙草を灰皿に置いて箸に手を伸ばす。

「あのとき、俺らはお互いしか見てなかった。ダンスは集団競技なのに、完璧にマンツーだったろ」

 マコトは食べ物で口を一杯にし、答えられないようにする。やっぱりコーチもそう感じてたんだな、とだけ思った。

 周囲の客は、普通に話しはじめた二人に興味を失ったのか、またそれぞれの会話に集中し、マコトたちのことはすっかり忘れているようだ。ざわめきや笑い声が、ときおり岩にぶつかる波のようにどっと弾けて店内に反響する。

 お待たせしましたー。店員が来たので、食べ物と焼酎を頼む。あ、俺も。コーチが横から店員に頼む。

 店員がいなくなると、コーチはマコトに向かい合った。その表情から険しさはもう消えていた。どこか楽しそうに笑みさえ浮かべて、

「でも、楽しかったな」

 過去に思いを馳せるようにゆったりと言う。マコトもつられるように頷いていた。

 そう。楽しかったんだ。子どもの頃、ダンススタジオに通っていたときの続きをしているようで。

「だけど、やっぱそれじゃダメなんだって思ったよ。俺も、おまえも」

 問うようにコーチを見る。コーチの手がまた伸びてくる。大きな手に、音もなく髪の毛がかき混ぜられる。

「俺は先生で、おまえは生徒で、特別扱いしたシワ寄せはおまえに来ちまうって、一人で帰ってくおまえの後ろ姿見て、痛感した」

「そんなの気にしねぇよ」

「俺が気にするんだよ。弟みたいに思ってる奴が目の前で同級生にシカトされてたらさ」

 コーチは苦く笑った。眉間にわずかにシワが寄る。近くで見ると、焼けた肌に浅いけれど取れないシワがうっすらと刻まれていて、二年の月日を感じた。

 コーチは運ばれてきた焼酎をグッとあおると、正面に目を向けた。

「すげぇ迷ったよ。このままでいいのかって。おまえだけじゃなくて、皆を平等に扱えって思う俺と、いや、こいつはまだまだ伸びる。こんなこと気にすんなって思う俺と二人いたんだ」

 若かったから、とコーチは唇を歪めた。

 若いっつーのは、傲慢なんだよ。

 そしてコーチは語った。あの時のことを。


 マコトは教えたことに確実に応えていった。幼い時から面倒を見てきた男の子が、自分の持っている全ての力で教えに応えようとする(さま)は、胸を打つものがあった。マコトの置かれてる現状は心配だったけれど、当の本人が気にも留めてないようだ。

 それならもう少しだけ、このままでもいいんじゃないか。そう思いながら、現状に甘んじていた。

 だからあの日、ジャパン・ダンス・アワードの前日に部長が自分を呼び出したときも、「とうとう来たのか」という思いが先に立った。けれどまさか、出場を辞退したいとまで思いつめていたとは思わなかった。

「コーチに僕らは必要ないんでしょう」

 部長は肩を震わせて呟いた。目をこすり顔を伏せた「教え子」の姿を見たとき、自分がしてしまったことの大きさにようやく気がついた。

 今までなにをしてたんだろう? 俺は「ダンス部」のコーチなのに。なにかを教える者として、決して許されないことをした。

 そこから交渉がはじまった。いや、懇願だったかもしれない。俺は学校を辞める。できるだけ早くに。だからその代わり、ジャパン・ダンス・アワードだけは出てほしいと訴えた。マコトの為でも学校の為でもない。ろくに指導もしない先生の下で努力し続けた自分たちのために出てほしい。そう伝えた。

「おまえには、ひどいことをしたと思ってる」

 コーチは一度持った箸を箸置きにもどすと、残りの焼酎をやや勢いをつけて飲んだ。

 マコトは言うべき言葉が見つからず、ごくりと喉を上下させる。いくつもの考えが細切れになって頭に浮かんでは消える。

「だから、一度も連絡をよこさなかったのか」

 かすれた声で問うと、コーチはしっかりと頷いた。

「そうだ」

 最後の最後に、俺より部長たちを取ったってことか。浮かんだ言葉は、グッと腹の底に沈める。そんな女々しいこと言えるわけない。

 マコトはあっという間に空にした焼酎のグラスを持ち上げて、傍を通った店員に「同じもの」と頼む。グラスを回収されて空いた手を勢いのままテーブルにダン、と叩きつける。

「だったら、ますますダンス部なんて入れない。また同じ失敗をするぜ、俺たち」

 皮肉めいた笑みを浮かべる。酒の所為か自分が興奮しているのか、急激に顔が熱くなる。アルコールの所為で首筋が疼く。かゆい。いっそ血が滲むまでかきむしりたい。

 コーチは、マコトを正面から見た。

「しょうがねぇだろ、また会っちまったんだから」

 大きな声だった。それまで必死に抑えていたなにかがあふれ出てきたかのような勢いで、

「俺がどんな気もちで離れたとおもってんだよ。それなのに、なんでおまえこの学校来てんだ」

 剣幕に圧され、マコトはひるみ体を反らす。

「なんだよ、逆ギレかよ」

「俺がいなくなっても、おまえはダンス続けてるだろうって思ってた。おまえの才能は、そんなことで無くならないって思ってたんだ」

 コーチははぁっと大きな息を吐く。カウンターに肘を突いて、崩れそうな体をなんとか支えているようだった。

「それなのに、ホウ大にいるなんて」

 周りの喧騒にかき消されそうな、小さな呟き。店内の橙色の灯りが俯いたコーチの顔に濃い影を落とす。マコトは反射的に口を開いていた。

「やめろよ」

 それ以上、言わないでくれ。

 だけどこちらを見返したコーチの目は厳しく、容赦なかった。

「なんでダンスをやめたんだ」

 心の奥の柔らかいところを突かれた気がした。

「おまえは踊り続けなきゃいけなかったんだ、なにがあっても」

「……なんだよそれ」

 目を伏せる。くしゃくしゃに丸まったおしぼりと、バラバラに置かれた割り箸。醤油が小皿から零れて茶色い水滴をテーブルに作っている。

 マコトがダンス部を退部したと知ったとき、周りの反応はさまざまだった。家族は驚き、心配し、そして見守ってくれた。従兄弟がダンスとは全く無縁のホウ大を、かわいい子が多いからここにしろよ、と冗談交じりで言ってくれたとき、体の力が抜けた気がした。

 それは、一生下ろすつもりのなかった荷物を肩から下ろした開放感なのか、虚無感なのか。未だにわからないでいる。

「この前俺が言ったこと覚えてるよな」

 覚えてるもなにも。マコトはコーチから逃れようとするかのように顔を背ける。それとは反対に、耳の中でコーチの言葉がくり返される。

 ――考えてくれ。おまえが本当にしたいことはなんなのかを。 

「マコト」

 マコトはぎゅっと閉じた目を、開いた。このひとが自分を呼ぶ声には、逆らえない。

 意外なほど不安そうな顔で、マコトをのぞきこむコーチと目が合う。

「俺が踊ってないおまえを放っておけるわけないだろう」

 このひとに、どれほど会いたかったろう。

 踊らないくせに毎日講堂に来ては、その存在をたしかめている。マコトの中で、まちがいなく特別なひと。

 コーチは口を開いた。煙と一緒に吐き出される、言葉。

「俺を信じてくれ」




 翌日。マコトは目の前で踊る紺野たちを、昨日と同じ場所に体育座りをして眺めていた。

 ジャパン・ダンス・アワード。頭の中で単語がこだまする。マコトは唇を噛みしめた。汗の塩辛い味がした。

 結局、あの場ではなにも言えなかった。「信じてくれ」なんて、そんな言葉がコーチから出るなんて。コーチらしくない、すがるような眼差し。振り払うことなんてできなかった。

 だけど。軽く結んでいた両手に力がこもる。

 あのとき頭に浮かんだのは、べつのことだった。

 

 まだわかんないのか、俺たちはチームなんだよ。

 

 アオのあの言葉が、なぜか頭の中によみがえった。 

 選ばなくちゃいけない。外側で見てばっかりじゃどうしようもない。

「マコト」

 いつの間にか、コーチが振り返ってこっちを見ていた。眼差しが、深く狭くなる。コーチはクイッと顎を紺野たちに向けた。

「踊れ。見てやる」

 瞬間、背中につめたいものが走った。

 けれどそれは、甘美な戦慄だったのかもしれない。

 マコトはゆっくりと立ち上がった。練習を中断して、こちらを見る紺野たちを見た。すっと息を吸う。一歩踏み出した。

 そのとき。


「マコトいるか」

 入り口から大声が聞こえた。ビクッとして立ち止まる。コーチが訝しげに目をほそめる。振り返ったマコトは、目を見開いた。

「功さん」

 功だけじゃなかった。すぐななめ後ろにはアネサン。その後ろにポコちゃんと静香、アキバとヨウがそれぞれアネサンを中心に並んでいた。

「みんな」

 鼓動が高く跳ねあがる。無意識に笑っていた。長い夏休みの果ての新学期に、友だちに再会したような高揚感。

 けど次の瞬間、皆の今まで見たこともないような険しい表情を見て、その場に縫いつけられたように動けなくなった。高く跳ねた鼓動がそのまま固まった気がした。

「マコト、おまえどういうつもりだ」

 功は怒鳴りながらずかずかと講堂に入ってきた。ほかのメンバーも同じように後を追う。マコトはその様子をぼうっと見つめていた。

 功にむかってコーチが近寄る。けれど功は片腕で振り払うようにコーチを追いやり、マコトの目の前まで来た。

 ドクン。

「何日さぼったら気がすむんだ」

 これが功なのか?

 マコトは信じられない思いで目の前に立つ男を見た。

 功の声は今まで聞いたこともないくらい低かった。きつく細められた目の下には、黒いクマができている。顎には剃り残したヒゲがまばらに生えていた。おだやかに笑いながら、居酒屋で後輩にサラダを取り分けていた先輩じゃない。

 おもわず周りに視線を漂わせる。アキバと目が合い、一瞬でサッとそらされた。

 ズキン。体の奥に、はっきりと痛みを感じた。体の内側がざわざわと波立つ。自分が震えていることに、ようやく気がついた。

 アキバの隣に立つヨウは逆に、じっと睨むようにマコトを見続けていた。ポコちゃんの丸いめがねの奥が泣きそうに歪んでいる。静香の顔は見ることができなかった。

 なんだよ、やめろよ。そんな目で見るなよ。

 言いたいのに、笑い飛ばしたいのに、言葉が出てこない。まるで実体のない幻を見ているように、なにもできないでいる。

「アシオト辞めて、ダンス部に入るのか」

 功は畳みかけるように問い質した。紺野たちがハッとしたように息をのむ気配が伝わってくる。

「――――俺」

 かすれた声が喉の奥から出た。水の中にいるように、息ができない。自分を見るたくさんの目。

 まるで高校生にもどったみたいだ。どこを見たらいい?

 たすけてくれ。

「いいかげんにしろよ」

 功がマコトのシャツの肩口を握って乱暴に引き寄せる。

「おまえがいない間にアシオトはめちゃくちゃになったんだ。知ってるか? アネサンはケガしたんだぞ」

 殴られたような衝撃を受けた。肩口を握られたまま首をめぐらす。

 一番後ろで無表情に両腕を組んでいるアネサンの、半そでから除く白い包帯。

「どうして」

「アオに突き飛ばされたんだよ」

 アネサンより先に功が尖った声で告げる。突き飛ばされた? アオに?  その時になってようやく気がつく。

 アオがいない。

 よく見れば、アオだけじゃなく黒田もいなかった。どれだけ不満を言っても練習を一度も休まなかった黒田の不在に、なぜか嫌な予感がした。

 アネサンが落ち着いた声で、

「功、あれはワザとじゃねぇ。おまえもわかってるだろ」

「そんな問題じゃないだろ!」

 功は荒々しく声を張り上げた。マコトは乾いてひりつく喉を飲み下した。 なにかがおかしい。自分がいない間、なにが起きたんだ?

「あの、なにが」

 尋ねるより先に、グイッと体を後ろに引き寄せられた。功の手がマコトから離される。

 顔を上げる。コーチがマコトの肩に手を置いて、決然とした表情で言った。

「こいつはダンス部に入るよ」

 功の目が見開かれる。怒りの表情から一転して、傷ついたような眼差しに変わった。ヨウが母国語でなにか低く呟いた。アキバは息を吐いて下を向く。ダンス部の連中が、「やっぱり」と囁きあう声が背中に届く。

 マコトはそのすべてを呆然と見聞きしていた。

 アネサンと目が合った。猫を思わせる目は、やっぱり無表情に自分を見ていた。

「本当なんだな」

 猫の目が、まっすぐにマコトを見続ける。

 答えを知りたがっている。コーチからではない。マコトの出した答えを。 それがわかるのに、相変わらずなにも言えなかった。口を開けると、ひゅうひゅうと掠れた息が漏れ出た。汗が一筋、こめかみの脇を通って落ちていく。

 アネサンの顔にはじめて変化があらわれた。ため息をひとつ落としたその顔は――後から思うと、失望、だったんだと思う。


「わかった」


 その声が今までより小さかったことにも気づかなかった。

 アネサンはそれ以上なにも言わず、サッと身を翻して出入り口へと向かっていった、ポコちゃんが慌てて呼び止める。アネサンの歩調は緩まない。凛とまっすぐに伸びた背中に、きっぱりと拒絶されている気がした。

 ちがう。本当に拒絶されたんだ。

 ヨウはこちらを一度も見ず、まっさきにアネサンの後に着いて行った。その後を慌ててアキバが追いかける。

 静香はポコちゃんの隣で、その場に立ったまま、じっとマコトを見ていた。静香のきれいな眉が薄く歪められている。

 毎日の練習は、このひとをさらに美しくさせた。筋肉がついてよりしなやかになった身体。久しぶりにまともに見て、胸が息苦しいくらい締めつけられる。このひとに見つめられることを願っていたけど、それはこんなかたちじゃなかった。

 静香さん。呼びかけようとしたまさにそのとき、静香はすっと視線をそらして出入り口に向かっていった。一瞬、その目元から涙が見えたような気がした。

 マコトの前には、功とポコちゃんだけが残った。

「マコト」

 功が呼ぶ。マコトがいない数日で、なんだかずいぶん老けたように見えた。

 疲れてるんだ。そのことにようやく気がつく。

「悪かったな、突然押しかけてきて」

 そう言って、無理に笑おうと唇を歪める功はマコトのよく知る功だった。 功は片手で反対側の肩を揉みながら、首を回した。回しながら、その目はマコトの隣に立つコーチにそそがれる。

「ほんとは、戻ってきてくれって言うつもりだったんだ」

 マコトではなく、コーチを見ながら言うと、力なく笑った。

「でも、ホントにここにいるおまえ見たら、なんも考えられなくなった。後で皆に怒られるな」

 力なく笑う。

 ポコちゃんはじっとマコトを見ていた。

「マコト君、本当にこのままでいいの?」

なにも言えなかった。そうだ、俺はまだ答えてない。コーチにも、皆にも。

「俺」

 おもわず大きな声が出た。

 言わなくちゃ。なんでもいいから。このままなんていやだ。はっきりとそう思った。

「二人トモ、何しテルデスカ」

 ヨウのとがった声が出入り口から聞こえたのと、コーチがマコトの肩を強く握ったのは同時だった。功はヨウに向かって頷き、コーチに頭を下げると走っていった。

 ポコちゃんは先に出入り口に戻る兄をチラッと見た後、早口で言った。

「マコト君。アオに会いに行って。もう君だけなんだよ、アシオトを元にもどせるのは」

 そう言うと、丸い体を揺らしながら出入り口へと走って行った。

 アシオトを元にもどす――?

 去っていく後ろ姿を、マコトは立ち尽くして見ていた。

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