表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

いざ 屋敷へ


 王様に教えてもらったところによると、クロック・オ・クロックの屋敷というのはとにかくデカくて時計の形をした建物で、王宮から歩いて5分くらいの場所にあるらしい。北のはずれとか言うからもっと長い冒険の旅的なくだりがあるのかと思ったら、そんなものは願うべくもなくラスボスの館へと着いてしまうようである。

 あまりに近いので向かいがてら散策をしていると、人間以外の動物の中にも顔が時計の奴らがいることが分かった。僕が見た中では犬だけだったが、他にももっといるのかもしれない。


 この顔の気味の悪さは種類の垣根を越えても共通のものらしく、普通は可愛いと思うだろうチワワだろうが柴犬だろうが決して近づきたいとは思わないし、普段からちょっと怖いなと思っている土佐犬やブルドックなどに至ってはもう存在自体がホラーであり、彼らの半径3メートル以内に近寄る勇気は僕には無い。そんなことで勇者が務まるのかよとか言われてしまいそうだが、とりあえず怖いものは怖い。

 クロック・オ・クロックの屋敷にいたら嫌だなあ・・・・・・なんて思いながらふらふら歩いていくと、あっという間に屋敷に着いてしまった。やはり徒歩5分は近い。


 金色の壁がどこまでも続くだだっ広いその屋敷は、確かにデカいけれどどの辺が時計の形をしているのかよく分からないし、横が広い割に縦がせいぜい3階建て程度の意外と地味な建物だった。時計だらけになってもハデハデで豪華絢爛さがにじみ出ている王宮とはえらい違いである。


 僕は入って早々捕えられるのを恐れて、壁の崩れたところからゴソゴソと這い入った。中は吹き抜けで装飾があまりないせいか比較的簡素だが、街中を時計だらけにするだけあって時計だけは沢山あり、某ブランド製の高そうなものからそこら辺の雑貨屋で100円くらいで売っていそうなチープなものまで、色とりどり玉石混交でごちゃっと飾られている。時計であれば何でもいいんだろうか・・・・・・。よく分からない奴だ。


 戦うためにはまずクロック・オ・クロックを探さなくてはいけないわけなのだが、どこに行ったらいいのか全く見当がつかない。困り果ててウロウロしていると、ふとジリリリリ・・・とけたたましいベルの音が鳴り響き、警備員の格好をした目覚まし時計が列をなして現れた。何だこいつらは? と状況を把握できずに固まる僕を尻目に彼らは数を増やしてあっという間に取り囲み、何だお前は? と言わんばかりにぐいぐいと詰め寄った。多分、全部で100体はいるんじゃないだろうか・・・・・・。こんな経験は後にも先にもきっとないだろう。いや、そうであってほしいと切実に願う。


 僕がなかなか何も言わないので、時計たちは段々としびれを切らして早く言わんかとでも言いたげに時計の針で僕の頬をツンツンと突きだした。決して痛くはないが、時計のくせに偉そうでイラッとくる。しかもそれを大勢でやるものだから、結構シャレにならない。頬がみかんの表面みたいになってしまいそうだ。

 このままイライラに任せて彼らを引きはがすことは出来るかもしれないが、何せ喧嘩が弱いことで有名だった僕だ。いくら相手が時計とはいえ、100体もの数に対して一人で立ち向かうのはなかなかハードだろう。それにこいつらに魔法を掛けているのは事実上この国で最も強い魔法使いだ。なめてかかったら、痛い目を見るのは確実だろう。

 

 なので僕は適当に嘘を吐くことにした。


「この国に新しく来たものですが、大魔法使いクロック・オ・クロック様にご挨拶をと思いまして」


 その言葉に、彼らは文字盤を見合わせて不思議そうな顔(何となくそう見える)をした。そしてちょっと待っていろと言わんばかりに振り返りながら、また列をなして去って行った。多分確認を取りに行ったのだろう。


 勿論僕は一人残らず去って行ったことを幸いに、さっさとその場を後にした。歩きながら、クロック・オ・クロックって意外と馬鹿なのかもしれないとぼんやり思っていた。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ