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 大通りまで出てみたり、アパートの回りを一周したり、長い間そわそわし続けていたと思う。二つの光が近づき、二台の自転車がアパートの前に止まった。そして警官が二人わたしのアパートに入っていく。

「ニュークラウド天神103。ここか」

「住んでいるのは大鳥カズミ。24歳の女性です。一人暮らしです」

 てっきり男が二人だと思っていたのだが、一人は背の高く髪の短い女であった。声を発しなければ気付かなかっただろう。

 女の警官はわたしの部屋のインターフォンを押した。

「出ませんね……」

「寝てるだけかも知れん」

「まあ、夜遅いですからね」

 そんな事はどうでもいい、早く家に入ってくれとひたすら祈る。もうわたしに出来る事はそれしか残されていなかった。

「大鳥さーん、いますかー?」

「あまり大きな声を出すな。近隣の住民の迷惑だ」

「すみません……」

「しかしな、死んでいるという通報だけだとどうしていいのか分からんな。事件に巻き込まれたのかもしれないし、事故かもしれない。病気かもしれないし、そもそもイタズラの可能性も考えられるしな……」

「でももし通報が真実だとしたら市民を見捨てる訳にはいきませんよ」

 そうだそうだ! だから早く中に入れ!

「しかしなー、何でもない人の家に無理矢理入って問題になるのも……」

 ガチャ。

「あれ? この部屋鍵かかってないですよ」

「え……」

 二人の表情が一気に硬直した。わたしが鍵をかけ忘れたせいで申し訳ない。

「お前は下がれ」

「はい」

 男の方がドアの前に立ち、そーっと音を立てずにドアノブを下ろす。薄く開いたドアから中を覗き込んだ途端、一気に全て開ききった。

「これは……」

 女の方が部屋に飛び込もうとするのを、男が押さえつける。

「何するんですか!? 早く助けないと!」

「待て、事件性があるかもしれん。下手に手を出すな」

「でも、それじゃあどうすれば」

「とりあえず署に連絡を……」

「そんな事している間に死んじゃったらどうするんですか?」

 全くである。

「しかし……自殺の可能性もあるし……」

「だったら尚更踏み込むべきでしょう!」

「とりあえず、何か事件性があったときのために現場保全はしっかりとしとかないと」

「了解です!」

 女が靴を脱ぎ、『わたし』の元へと駆けつけた。

「寺井さん! この人生きてますよ!」


 そこからはめまぐるしい展開だった。救急車が呼ばれ、パトカーがアパートに急行した。

「首つり? 頸椎は損傷してるの?」

「いえ、足がついていたのでその可能性は低いです」

「策状痕もなく、頸動脈の圧迫も少ないかと」

「分かりました」

 バタバタと救急隊員に連れられて、『わたし』は近くにある総合病院に連れて行かれた。わたしも救急車に同乗し、一緒に行く事にした。

 刑事の捜査にも興味があったが、それよりもまず自分自身の生死が大事である。救急隊員になす術もなく至る所を調べられている『わたし』の姿は滑稽ではあったが、如何せん自分自身のため恥ずかしさも勝る。客観的に見る自分は、なんか、もう、不細工すぎて辛かった。

「自発呼吸」

「心拍」

「意識」

「血圧」

「体温」

 様々なチェックをされる『わたし』の体。救急隊員の様子を見る限りまだ生きているようだ。それも、かなり安全度の高い状態だと思われる。

「大鳥さん、大丈夫ですか? ……反応無し!」

 雲行きがにわかに怪しくなってきた。

「大鳥さん、ちょっと痛いですよ」

 救急隊員が『わたし』の手を握った……のだろうか。それからぐっと力を入れた。

「……反応、無いですね」

 救急隊員の反応が変わった。車内に一気に緊張が走る。わたしは……どうなってしまったのだろうか。

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