3/3
運命
少女はただ、平和な日常を取り戻したいだけだった。
顔も知らないあの男に復讐したいだけだった。
あいつさえ死ねば、幸せになれると信じて疑わなかった。
そんな時、少女はネットで奇妙な噂を読んだ。魔法使いを紹介してくれる会社が存在して、魔法使いと契約をすれば何でも願いを叶えてくれるという。それこそ、ペットの世話から殺人まで幅広くだ。
ネットの掲示板でその噂を流した人は多くの人に叩かれていたが、少女だけはその噂に魅せられていた。
もし本当にそんな会社が存在するなら、あの男を殺してくれるだろうか。魔法使いというのが本当なら、証拠も残さず完全犯罪ができるだろうか。
途端に、希望が湧いて来た。
翌日、居なくなった猫を探して近所の路地裏へ入ると、建物の壁に奇妙な広告が貼られていた。
【魔法使いお貸しします】
これはきっと運命なのだと、少女は歓喜の笑みを浮かべた。
顔は知らない。だが名前だけは知っている、あの憎い男を殺してもらえるのだ。自分はなんて幸運なのだろう。
「キョウスケ……」
――お願いだから、死んで?