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プロローグ
【魔法使いお貸しします】
潰れた玩具屋のシャッターに貼られたその奇妙な広告を1番最初に見つけたのは、近所に住む17歳の少年――小林京介だった。
試験期間中という事もあって夜中まで勉強をしていた京介は、突然襲ったアイスを食べたいという欲求を満たすためコンビニへと向かった。京介の家はコンビニから少し離れた場所に有り、そこへ行くには必ず数年前からシャッターが下ろされたままの玩具屋の前を通る必要があったのだ。
電灯に照らされた広告はやけに目立っていて、いつ貼られたのだろうと首を傾げながらも、既に頭の中では馬鹿げた広告があったと話のネタにしようと考えている。
その時の京介にとっては、それ程の興味しかなかったのだ。実際、明日になれば友人に話すまでもなく広告の事など綺麗に忘れて、代わりに数学の方程式で頭が埋めつくされているに違いない。
日常に起きた些細な出来事。奇妙な広告を見つけたからといってどうという事は無い。
その筈、だった。