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明日の俺、頑張って

掲載日:2026/11/03

 外回りの仕事から戻ると、事務所にはもう誰もいなかった。

 まぁ、定時をとうに過ぎているから仕方がない。

 自分のデスクの椅子に座ると、一気に力が抜けた。

 あとはもう帰るだけなのに、尻と椅子が接着剤でくっついたかのように、動くことができない。


 スマホを取り出し、SNSを見る。

 俺が仕事をしている間にも、フォロワーさんの日常がたくさん更新されている。

 SNSというのは、人様のキラキラした部分ばかりが表示される。

 皆充実してるな、と思いつつ、それはその部分だけを切り取って投稿しているからなんだよな、とも自覚する。

 SNSの中だけでも、キラキラした自分でいたい。

 そこは、ある種の逃避場所なのだ。

 そうでもしないと、現実のしんどさに押し潰されてしまうから。


 SNSとは怖いもので、気が付くと1時間も経っていた。

 明日も早いし、早く帰らないと。

 そうは思うものの、やはり俺の尻は椅子から離れてくれなかった。

 心身ともに疲れ切っている。

 このまま会社に泊まってしまった方が楽なんじゃないか。

 いや、帰ってシャワーを浴びたい。

 そしてベッドにダイブして、泥のように眠りたい。


 意を決して、俺はなんとか尻を椅子から引っぺがし、立ち上がる。

 さぁ、帰ろう。

 さっさと帰ろう。

 刻一刻と、俺の自由時間が減っていく。

 鞄を手に取り、事務所の戸締りをして、会社を出る。

 行き交う人々は、まるでゾンビのように足取りが重く、表情も疲れ切っている。

 夜空を見上げた。

 まん丸の満月が浮かんでいる。

 ふと思う。

 俺は生活をする為に仕事をしているはずなのに、仕事をする為に生活をしているような気がする。


 あぁ、なんてつまらない人生。

 空から女の子やお金が降ってこないだろうか。

 人生が劇的に変わるような出来事が起きないだろうか。

 ないものねだりで、気持ちは落ちていく。


「俺もキラキラした瞬間を投稿したいなー」


 そんな瞬間すら作れない、社会の奴隷。

 今日の俺、お疲れ様。

 明日の俺、頑張って。

 欲を言えば、頑張らなくていい日が来るといいな。

 隕石でも落ちて、この世界が崩壊してしまえばいいのに。

隕石様、出番です。

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