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【完結保証】借金取りの俺と親に5万円で売られた少女〜DVされ心を完全に閉した少女は5年後うざいくらいに甘えてくる〜  作者: 田中 又雄


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部屋の完成と夜景

 気づけば4日目か。


 休みの折り返し地点に差し掛かり、そのタイミングで注文していた家具が届いた。


 ゆあちゃんのために選んだ小さな机と椅子、本棚にベッド。

ふわっとしたクッションや、桜色のカーテンなど、部屋を彩る品々が揃い、数日前までがらんとしていた空き部屋が、まるで少女の夢を紡いだような空間に生まれ変わった。


 ついでに、愛らしい雰囲気のぬいぐるみもセットで購入していた。

柔らかな毛並みのそれは、彼女にそっと手渡すと、部屋に温かな息吹を添えるようだった。


 ドアには木目調のプレートを飾り、【ゆあの部屋】と刻んだ文字が優しく浮かんでいる。


「…今日から、ここがゆあちゃんの部屋だよ」と穏やかに伝える。


 すると、彼女と出会って以来初めて、彼女の内側が揺れたように感じた。

瞳が微かに広がり、驚きが静かに波打っている。


「…私の…部屋」


 小さく呟きながら、彼女は新しい空間へ足を踏み入れる。


「うん。必要なものはだいたい揃えたつもりだけど、何か欲しいものがあったら何でも教えてね?」

「…ありが…とう…ございます」と、振り返って深く頭を下げた。


「お礼なんて気にしなくていいよ。ほら、俺たちは家族なんだから」

「…」


 彼女の部屋の扉が静かに閉まり、俺はその場に立ち尽くす。

初めて自分の居場所を手に入れた彼女にとって、これはどれほどの意味を持つのだろう。


 俺がそばにいると気を遣わせてしまうかもしれない。

あとの数日は、一人で出かけるのもいいかな、とぼんやり考える。


 リビングに戻り、ソファに身を沈めてテレビの光に目を遊ばせていると、仕事のことが頭をよぎる。さすがに気になって社長に電話をかけた。


「おう、どうした?」

「あ…いえ、ちょっと会社が気になって」

「特に問題ねえよ。ったく、せっかくの休みに社長に電話かけてくる奴がどこにいるんだ。ゆっくり休め。用がねえなら切るぞ」

「あっ、はい…」


 闇金の社長とは思えないほど気さくで優しい人だった。も

ちろん、それは俺たち社員にだけ向けられた顔だが。

電話を切り、サブスクでアニメでも流そうかと画面を眺めていると、後ろから「あの…」と小さな声が響く。


 音もなく近づいてきた気配に、「びっくりした!? ど、どうしたんだ、ゆあちゃん?」と振り返る。


「…いえ…」と呟き、何事もなかったかのように少し離れたソファの端に腰掛けた。


 部屋を見せてからまだ5分も経っていない。

もしかして、気に入らなかったのか…。


「ご、ごめんな、ゆあちゃん。俺、あんまりセンスなくて…あんまり好きじゃなかったかな?」と恐る恐る尋ねると、彼女は首を軽く振る。


「…そういうわけ…じゃないです。ただ…私は…こっちの方が落ち着くので…」


 人の温もりが恋しいのだろうか。

その気持ちは分からなくもない。ど

れだけ華やかな装いを施しても、誰かの気配がなければ、空間はただの冷たい殻に過ぎない。


「…じゃあさ、少し外に出てみない? 顔の傷もだいぶ目立たなくなってきたし、夜なら誰かに見られても大丈夫そうだよ。もちろん、嫌なら全然いいし、山の方だから人もほとんどいないから」と提案すると、彼女の顔に一瞬だけ苦しげな影が差す。


 あ…こんな言い方だと、山に置き去りにするみたいに聞こえるか。


「ち、違うよ、ゆあちゃん! 山に置いて逃げたりしないから! ほら、これ見て。ここ、この時期に素敵な夜景が見えるんだって。広い場所じゃないから人も少ないみたいだし。どうかな?」と慌てて付け加えると、数秒の静寂の後、彼女が小さく頷いてくれた。


 昼間は出前を頼み、適当に映画を流したり、買ったまま放置していたゲームを一緒に遊んだりした。


 彼女は相変わらず感情を顔に出さないけれど、頷いてくれるその仕草に、きっと少しずつ前を向こうとしてくれているのだと、心がそう囁いた。


 ◇


 ゆあちゃんを助手席に乗せ、車を走らせる。

車に乗ること自体が珍しいのだろう。

窓の外を流れる景色に、彼女の視線がずっと寄り添っている。


 前回乗った時は怯えでいっぱいだっただろうから、風景を楽しむ余裕なんてなかったはずだ。


 無言が寂しく感じて、俺の好きな曲を流してみる。

柔らかなメロディが車内に広がり、外の風音と溶け合う。


 2時間ほどかけて山の頂に辿り着くと、噂の夜景スポットが静かに待っていた。


 まだ知られていない場所なのか、辺りはひっそりとしている。


 ゆあちゃんを車から降ろし、手を繋いで夜景の見える場所へ向かう。

冷たい夜風が頬を撫で、遠くの木々がささやくような音を立てていた。

そこに広がる景色は息を呑むほどだった。


 漆黒の山々に抱かれた都会の灯りが、まるで星屑をちりばめた絨毯のように輝いている。闇が深いからこそ、一つ一つの光が鮮やかに浮かび上がり、この夜景を織り上げるために存在しているかのようだった。


 ゆあちゃんはその場にしゃがみ込み、静かに見入る。

彼女の瞳は、出会った時の絶望に沈んだ黒ではなく、夜景を映す鏡のように澄んでいた。

まっすぐな光が宿り、まるで星の欠片がそこに溶け込んだかのようだ。


 表情は変わらないのに、彼女が以前とは違うことがはっきりと伝わってくる。

俺も隣にしゃがみ、その光景に目を委ねた。時の流れを忘れるほどに美しく、どこか儚いその眺めを、二人でただひたすらに味わった。


 1時間ほど見つめた後、車に戻り、家路につく。


 どうか、この夜が彼女にとって優しい記憶として刻まれるよう、静かに祈りながら。


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