表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結保証】借金取りの俺と親に5万円で売られた少女〜DVされ心を完全に閉した少女は5年後うざいくらいに甘えてくる〜  作者: 田中 又雄


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/52

かわらない未来

 ◇数年後


「んぁ…」


 うめきながら目を擦ると、視界が徐々にクリアになる。


 朝の光が彼女の背に柔らかな輪郭を描き、キッチンから漂う香ばしい匂いが鼻をくすぐる。


 透き通った肌に、肩まで伸びた髪がサラリと揺れている。


  ぼんやりと見つめていると、「えい」と彼女がお玉を手に軽く頭を叩いてきた。

軽い衝撃に頭が揺れ、現実感が一気に押し寄せる。


「…」

「どうしたんですか? ボーッとしちゃって。まさかいい夢でも見てました? でも、ダメですよ、唯斗さん。ソファで寝るなんて。昨日は私、一人で寝て寂しかったんですから」と、ゆあちゃんはくすっと笑いながら言う。


 楽しそうな声が部屋に響き、その明るさに思わず笑みが溢れる。


「…おはよ、ゆあちゃん」

「おはようございます!お寝坊さんな唯斗くん」

「そろそろ試験だっけ?夏休みは何か予定はあるの?」

「ん?そうそう!来週期末試験ねー。夏休みはねー、えーっとねー、友達と出かける予定はちょこちょこあるかなー」

「…そっか」


 すると、俺の表情を見て、クスッと笑うゆあちゃん。


 出会った頃より背も高くなり、体つきも大人っぽくなった。


 それに、何より表情が違う。

あの暗く沈んだ瞳ではなく、生き生きとした光が宿っていた。

健康的な頬の色と、どこか普通の可愛い女の子らしい雰囲気になった。


「もしかして嫉妬してるんですかー?大丈夫ですよ?女の子だけだし、私が好きなのは唯斗さんですから!」

「…いや、別に嫉妬してないし。ちょっと顔洗ってくるよ」

「早くしてくださいね! 私も洗面所使うので!」


 フラフラと洗面所にたどり着き、鏡を見ると、そこには少し疲れた顔の俺が映っていた。


 顎に生えた短い髭が綺麗に整っている。


 髭を触っていると、背後から優愛ちゃんが飛び込んできて、後ろからぎゅっと抱きついてきた。


「ちょっ!?」

「すぅ…へへ、唯斗さんの匂い。これで今日も一日頑張れます」と、背中に顔を擦りつけながら嬉しそうに呟く。


 彼女の髪からシャンプーの甘い香りが漂い、温かい体温が服越しに伝わる。

顔が熱くなり、心臓がドキドキと跳ねた。


「あのさ、ゆあちゃん。…いきなり抱きつくのやめてよ…」

「なんでですか?えっちな気分になっちゃいます?」

「そうではないけど…」

「あ、そろそろどいてください!歯磨きしたいので」と、甘えた声から一転、急いでいるような声でそういった。


 仕方なく洗面所を譲り、俺も準備を始める。

確か、そろそろ社長の誕生日だったか。

なんか買うかー。っつても、社長が欲しいものとか分かんねーな。


 5分ほどすると、玄関の方から「あー! やばい、やばい! もう行かなきゃ!」と慌てた声が聞こえてきた。


「お、おう。気をつけてな」と返事をすると、ドアが開く気配がない。

「…あの! 何してるんですか! 早く来てください!」と呼ばれる。


 あっ、忘れてた。


 そこには、目を閉じて唇を少し突き出したゆあちゃんが立っていた。


「はーやーく」

「はいはい」と、その口にキスをする。

「…//」

「ふふふ、今更照れてるんですか? 相変わらず可愛いですね、唯斗くん! じゃあ、行ってきますね!」


 弾けるような笑顔を残し、彼女は玄関を飛び出していった。


「…全く」


 歳を重ねるごとにどんどん可愛くなっていき、更に誘惑するようなことを言ってくる。


 ソファに座ってポケットからスマホを取り出す。


 日付は「2030年6月10日」



 ◇朝8時半


 事務所のドアを開けると、すでにタバコの煙と安いコーヒーの匂いが充満してる。


 狭い部屋にデスクが3つ、壁には借金のリストが雑に貼り付けられてて、俺の職場は今日もいつも通りだ。


 同僚の田中が「おい、昨日あのデブ締め上げたんだろ? 金吐いたか?」とニヤニヤしながら聞いてくる。


「半分だけな。あとは今週末だってさ」と答えると、「相変わらず甘いな、お前」と笑われる。

まあ、俺だって昔ほど鬼じゃない。


 9時になると、朝のミーティングが始まる。

先輩の佐藤さんが眠そうな目で今日のターゲットを読み上げる。


「山田って奴、50万借りて1ヶ月滞納。住所はここ、電話はこれ。頼むぞ」と俺に書類を放ってくる。


「了解っす」と短く返して、デスクで地図と借主の情報を確認する。


 スマホにはゆあちゃんから『唯斗くん!今日も頑張って!』なんてメッセージが入ってる。仕事前に一瞬だけ笑顔になるが、すぐ切り替える。


 10時過ぎには外回りだ。

山田って男のアパートに向かう。


 ボロい木造の2階建て、ゴミが散らかってて生活の匂いがする。


 ドアをノックして「山田さん、いるか?」と低く声をかける。


 中から「誰だよ…」と怯えた声が返ってくる。


「金借りたの忘れたか? 」と言うと、慌ててドアが開く。


 40代くらいの冴えない男が汗だくで立ってて、「今週末まで待ってくれ」と土下座してくる。


 昔ならここで詰めていたかもしれないけど、今は「金曜までに半分用意しろ。次逃げたら終わりだぞ」とだけ言って立ち去る。


 ゆあちゃんに「優しくなったね」って言われたのが頭にちらつくからか、最近は必要以上に荒っぽくしない。


 昼は事務所近くの立ち食いそばで済ませる。


 300円のそばをすすりながら、隣で田中が「今度のパチンコ屋の客、借り癖ついてて美味いぞ」と得意げに話してる。

俺は「ふーん」と適当に相槌打つだけ。


 昼過ぎに戻ると、事務所で電話番だ。

借金の督促電話をかけまくる。


「お宅の旦那、100万借りてますけど?」「子供の学費払えなくなっても知りませんよ」と淡々と脅す。


 目の前にいないと詰めやすい。

向こうが泣こうが喚こうが、こっちは仕事だと割り切れた。


 夕方になると、回収金の仕分けだ。

今日集めた現金を数えて、帳簿につける。


 佐藤さんが「今月は上々だな」と満足そうに頷くけど、俺はただ黙々と計算する。


 18時頃に仕事が終わり、事務所を出る前にゆあちゃんから『晩ご飯何がいい?』とLINEが来る。


『チャーハンがいい』と返すと、『了解! あの好きなやつ作るね!』とスタンプが飛んでくる。


 闇金の世界で1日過ごした後、こんなやり取りが癒しになる。


 帰り道、駅前のコンビニでタバコを買うついでに、ゆあちゃんが好きそうなプリンもカゴに入れる。


 事務所での冷たい空気と、家の温かさが頭の中で切り替わる瞬間だ。


 闇金の日常は、脅しと金の奪い合いでしかない。


 でも、家に帰ればゆあが「おかえり!」と飛びついてくる。

それが俺のスイッチだ。


 この仕事、いつまで続けるかわからんけど、今はまだ辞められない。


 そんなことを考えながら、夜の街を歩いて帰る。



 ◇


 家に帰ると、美味しい匂いが漂ってくる。


「はい!お帰り!」と、抱きついてからキスをしてくる。


「はい、ただいま」と、俺からもキスをする。


「チャーハン作ったよー?あ、ご飯にする?お風呂にする?それとも…ゆあ?」

「もうゆあは頂いちゃったからチャーハンで」

「えー?まだまだ食べられるところいっぱいだよー?」と、寝巻きの胸元をチラチラとさせる。


 思わずそちらに目が行き、「うわー!えっち!//」と言い始める。


 そんな乳繰り合いを終えて、2人でご飯を食べる。


 今日あった話をしながら、盛り上がり、食べ終えるとお風呂に入る。


 そうして、ソファでゆっくりしていたゆあちゃんとともに2人でベッドに行く。


 ベッドに入るとそのまま抱きついてくるゆあちゃん。

俺もそのまま抱きしめる。


「…大好きだよ、唯斗くん」

「俺も大好きだよ、ゆあちゃん」

「ねー?いつまでちゃんづけ?子供じゃないけどー」と、頬を膨らませる。


「俺にとっては子供みたいなもんだもん」

「…あんなことしちゃってるのにー?子供にあんなことしちゃうのー?」

「…じゃあ、もうしない」

「ごめんごめん!だめ!…してね?これからも」

「うん」


 おでこにキスをする。


 その時にふとあることを思い出す。

  

 そういえば…数年前にこんな夢を見た気がする。


 大きくなったゆあちゃんとイチャイチャするような夢。


 どうやら、俺はちゃんと幸せな未来を歩めているようだ。


 だとすれば、このまま大人になっても、結婚して、子供を生まれて…。


 そんな未来を楽しみにしながら、俺は目を瞑った。


 ゆあちゃん、大好きだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ