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【完結保証】借金取りの俺と親に5万円で売られた少女〜DVされ心を完全に閉した少女は5年後うざいくらいに甘えてくる〜  作者: 田中 又雄


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少し未来の話


 額に鋭い痛みが突き刺さり、眠りから引き戻された。


「んぁ…」


 うめきながら目を擦ると、視界が徐々にクリアになる。そこには、見慣れない可愛らしい女の子がエプロンを着て立っていた。

朝の光が彼女の背に柔らかな輪郭を描き、キッチンから漂う香ばしい匂いが鼻をくすぐる。


 年齢は15歳くらいだろうか。

透き通った肌に、肩まで伸びた髪がサラリと揺れている。

…誰だ、この愛らしい子は?


  ぼんやりと見つめていると、「えい」と彼女がお玉を手に軽く頭を叩いてきた。

軽い衝撃に頭が揺れ、現実感が一気に押し寄せる。


「…」

「どうしたんですか? ボーッとしちゃって。まさかいい夢でも見てました? でも、ダメですよ、唯斗さん。ソファで寝るなんて。昨日は私、一人で寝て寂しかったんですから」と、彼女はくすっと笑いながら言う。


 楽しそうな声が部屋に響き、その明るさに戸惑う。


 周囲を見回すと、微妙な違和感が目についた。

家具の配置が微妙に異なり、テレビが一回り大きくなっている。


 壁の色や窓の形は変わらないから、ここは間違いなく俺の家のはずだ。


 でも、何かが違う。


 頭が混乱して整理しきれず、「……えっと、君、誰?」とつい口に出してしまう。


 彼女が目を丸くして、「ちょっと、寝ぼけてるんですか? 何ですか、記憶喪失のふりですか? ゆあですよ、ゆあ! ほら、朝ごはんできたから早く食べましょう。唯斗さんは休みでも、私、学校があるから急がないと!」と、少し焦ったように言う。


 ゆあ…? ゆあちゃん? この子が? どう見てもあの小さな優愛ちゃんとは別人だ。


 背も高く、体つきも大人っぽい。

それに、何より表情が違う。あの暗く沈んだ瞳ではなく、生き生きとした光が宿っている。

健康的な頬の色と、どこか普通の可愛い女の子らしい雰囲気。

信じられない変化に、頭が追いつかない。


「…ちょっと顔洗ってくるよ」

「早くしてくださいね! 私も洗面所使うので!」


 フラフラと洗面所にたどり着き、鏡を見ると、そこには少し疲れた顔の俺が映っていた。


 顎に生えた短い髭が妙に整っていた。

何だこれ…と首をかしげていると、背後から優愛ちゃんが飛び込んできて、後ろからぎゅっと抱きついてきた。


「ちょっ!?」

「すぅ…へへ、唯斗さんの匂い。これで今日も一日頑張れます」と、背中に顔を擦りつけながら嬉しそうに呟く。


 彼女の髪からシャンプーの甘い香りが漂い、温かい体温が服越しに伝わる。

顔が熱くなり、心臓がドキドキと跳ねた。


「あのさ、ゆあちゃん。驚かないで聞いてほしいんだけど…」

「はい?」

「…俺、タイムスリップしたみたいなんだ。」

「…タイムスリップ? また変なこと言ってますね。映画の見過ぎじゃないですか? 最近そんなの観ました? はいはい、すごいですね、タイムスリップすごいですねー。あ、そろそろどいてください。歯磨きしたいので」と、甘えた声から一転、呆れた口調に変わる。


 仕方なく洗面所を譲り、ソファに戻って頭を抱えた。

一体何が起きているんだ? 現実なのか夢なのか、さっぱり分からない。


 5分ほどすると、玄関の方から「あー! やばい、やばい! もう行かなきゃ!」と慌てた声が聞こえてきた。


「お、おう」と返事をすると、ドアが開く気配がない。

「…あの! 何してるんですか! 早く来てください!」と呼ばれ、わけも分からず玄関へ向かう。


 そこには、目を閉じて唇を少し突き出したゆあちゃんが立っていた。


「はーやーく」

「え?」

「何してるんですか! 行ってきますのチューですよ! 忘れたんですか!?」

「…え!?」

「んー!」と、催促するように顔を近づけてくる。


 戸惑いながらも、彼女の柔らかな唇に軽く触れた。


「…」

「ふふふ、何照れてるんですか! 相変わらず可愛いですね、唯斗さん! じゃあ、行ってきますね!」


 弾けるような笑顔を残し、彼女は玄関を飛び出していった。


「…おいおい、何だこれ」


 呆然と呟きながら部屋に戻ると、ポケットからスマホを取り出そうとした。


 だが、手にしたのは見慣れないデザインの機種だった。

恐る恐る操作すると、顔認証が反応し、画面が開く。


 日付は「2030年6月10日」


 5年後の未来?

どうやら俺は未来に飛ばされたらしい。


 ゆあちゃんがこんなに明るく可愛くなって、俺に懐いてるなんて、今の彼女からは想像もつかない。


 でも、もしこんな未来が待ってるなら、少し希望が湧いてくる気がした。

いや、夢だろ? 夢に決まってる。分かってるって。


 ソファに横になると、急にまぶたが重くなり、意識が遠のいていった。


 ◇


 目を開けると、いつもの部屋が視界に広がった。


 薄暗い天井、使い古したソファの感触。

夢だったか…そりゃそうだよな、と苦笑する。


 でも、もしあんな未来があるなら、いや、俺がそんな未来を作ってみせる。

そう決意して体を起こした。


 寝室のドアが少し開いているのに気づき、気になって近づく。


 そっと覗くと、ゆあちゃんが無表情でステッキを手に持っていた。


 小さな手でぎこちなく振る姿が目に映る。

あの通販で頼んだやつだ。

気に入ってくれたのかな…良かった。


 内心でほっとしながら、『火魔法だけは出さないでね?』と心の中で呟いた。


 さて、3日目だ。今日は何をしようか。

そんなことを考えながら、朝食の準備を始めることにした。


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