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【完結保証】借金取りの俺と親に5万円で売られた少女〜DVされ心を完全に閉した少女は5年後うざいくらいに甘えてくる〜  作者: 田中 又雄


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星のかけら

 車内の空気は重く、誰も口を開かなかった。


 バックミラー越しに秋野さんを見ると、彼女は窓の外をじっと眺めてて、長い髪が顔を隠してる。


 虚ろな目はまだそのままだった。


 そんな中、 ゆあちゃんがポツリと呟いた。


「…星を…見に行きませんか?」


 その言葉に、俺の手がハンドルを握る力が一瞬緩んだ。


 総一が後ろから「お?」と驚いた声を上げ、秋野さんが小さく顔を動かした。


 俺はゆあちゃんを横目で見て、彼女の小さな横顔に目を奪われた。


 暗い車内で、街灯の光がチラチラと彼女の瞳に映り込んでる。


 その瞳には、疲れと一緒に何か柔らかい光があった。


「星か…」


 ゆあちゃんを引き取ったばかりの頃。

彼女はまだ心を閉ざしてて、俺に触れられるのも嫌がってた。


 古びたビルのアパートで暮らす日々は息苦しくて、ある晩、俺は思いつきで彼女を連れ出した。


 山の上の見晴らし台まで車を走らせて、二人で星を見たんだ。


 その夜、ゆあちゃんは初めて俺に言葉を返してくれた。


「…きれい」と小さく呟いて、少しだけ笑った。


 あの時、彼女の心に小さな隙間ができた気がした。


「…そっか。じゃあ、あそこいこうか」


 俺が言うと、ゆあちゃんが頷いて、俺の手をそっと握ってきた。


「うん…唯斗くんと見た星、ずっと忘れないよ。あの時、私、初めて安心できた気がした…。だから、今みんなで…見たいなって」


 その声はどこか頼もしさを感じた。


 今、俺の隣にいるゆあちゃんは、傷を抱えながらも誰かを支えようとする姿に成長してた。


 総一が後ろから身を乗り出し、「おい、いいアイデアじゃねぇか! 星なんて久々だぜ。 唯斗、行こうぜ!」と子供みたいにはしゃいだ。


 その声に、俺は思わず笑ってしまった。


「分かったよ。じゃあ、あの見晴らし台まで行くか」


 無言を貫いていたアイラが身を乗り出す。


「おー!いいっすね!行きましょう!」と、いつものテンションを取り戻した。


 そうして、俺は少し飛ばしてあの場所へ向かった。



 ◇


 車は山道を登り、街の灯りが遠ざかる。


 見晴らし台に着くと、エンジンを切って5人で外に出た。


 車は一台も止まっておらず、他に誰もいなかった。


 夜風が冷たく頬を撫で、木々のざわめきが耳に届く。


 空を見上げると、雲が切れて、無数の星が広がってた。


 都会の光がない分、星屑がキラキラと輝いて、まるで空が生きてるみたいだった。


 ゆあちゃんが俺の隣に立ち、「やっぱり…きれいだね」と囁いた。


 その声に、俺は彼女の手を握り返した。


「ああ…あの時と同じだな」


 心の中で、これまでのことを振り返った。


 借金取りだった俺が、ゆあちゃんを5万円で引き取った日から始まった日々。


 彼女の心が閉ざされてた頃、進藤との戦い、総一との絆、社長の支え、秋野さんの件…はまだ解決してないけど。


 これまでにないほどに濃密な数ヶ月に心を巡らせる。


 そして今夜、進藤を殺さずに済んだこと。


 あの倉庫での話し合いは、ここ数ヶ月の自分の成長を試す試練だった気がした。


 殺す選択を拒んだ瞬間、ゆあちゃんの震える手が俺を支えてくれた。


 それにゆあちゃんから「星を見に行こう」と言ってくれたことがただ、嬉しかった。


 総一が突然、「うおお!すげぇ! 流れ星だ!」と叫んで、指を空に突き上げた。


「すげーっすね!めっちゃ綺麗っす!うぉー!見てくださいよ、総一さん!街も綺麗に見えますよ!」と、アイラも走りまわる。


 子供みたいに跳ね回る2人の姿に、俺とゆあちゃんは笑い合った。


「総一、お前何歳だよ!」

「おい、唯斗! 流れ星に願い事しろよ!俺は…そうだな、金持ちになれますように!」

「うちもお金持ちになりたいっす!」と、空に向かって手を合わせて、空を見上げる。


 そのバカっぽい声に、車内の重さが少しずつ溶けていく気がした。


 秋野さんが静かに空を見上げてた。

長い髪が風に揺れ、虚ろだった目が星の光を映してる。


 彼女が小さく呟いた。


「…きれい…」


 その声は弱々しかったけど、5年前のゆあちゃんを思い出すような柔らかさがあった。


 俺は彼女の目に、少しだけ光が戻ったのを見た。


 今までのことが、星空の下で少しずつ薄れていくのを感じた。


 ゆあちゃんが俺の腕に寄りかかり、「唯斗くん…ありがとう。みんなでここに来れて、よかった」と囁いた。


 その言葉に、俺の胸が熱くなった。

その瞬間芽生えたのは、小さな女の子としての意識ではなく、1人の女性に抱く、恋心そのものだった。


「俺の方こそ…ありがとう。あそこで星を見に行こうって言ってくれて…ここに来れてよかった」


 彼女の提案がなかったら、俺たちはあの倉庫の重苦しさから抜け出せなかったかもしれない。


 ゆあちゃんの成長が、俺を、総一を、アイラを、秋野さんを、ここに連れてきてくれた気がした。


 そして、5人で並んで空を見上げた。


 星が瞬き、流れ星が一筋、夜空を切り裂く。


 総一が「うおお!まただ!流れ星!」と騒ぎ、アイラが続き、ゆあちゃんが笑い、秋野さんが小さく微笑んだ。


 俺は目を閉じて、静かに願った。


 これからも、こんな夜が続けばいい。


 進藤の罪は遠くで償われ、俺たちはここで、それぞれの光を見つけていく。


 そうして、俺はずっと…彼女のそばにいたい。

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