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【完結保証】借金取りの俺と親に5万円で売られた少女〜DVされ心を完全に閉した少女は5年後うざいくらいに甘えてくる〜  作者: 田中 又雄


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過去の実績と後悔

 インターホンが家に響く。


「…いらっしゃいます〜?畦倉さーん。いやー、この前は偽名を使われてたみたいで、まんまと引っ掛かっちゃいましてねー。私も随分、緩くなったもんですよ」


 インターホンを押しながらそう呟いていた。


 いるのはもうバレている。

隠れる場所もない。


「開けてもらえないなら扉破っちゃいますよー?いいんですかー?あっ、もしかして、お連れさんもいらっしゃいます?だったら話が早いんですよねー。山奥で見たかったらしいんですよー。あの男の遺体が」


 嘘だ。

遺体は既に骨となり、海に撒いた。

ということは、奴は証拠をでっち上げようとしているということだ。


 すると、アイラの目が険しくなる。


「いやー、困りましたね。それじゃあ、無理やり開けますよー?いいんですねー?」


 緊迫の瞬間、何かドアの外で鈍い音が聞こえた。


 すると、別の声が聞こえた。


「どもっす。えっと、居るのは山坂先輩と、ゆあちゃんと、笹ヶ峰さんと、秋野さんで間違い無いっすか?俺、社長の部下なんす。とりあえず、進藤は今眠らせたんで、安心してください。あー、いきなりすぎてわけわからんと思うんで、詳しい話は事務所の方で」と言った瞬間、俺の携帯が鳴る。


 電話は社長からだった。



 ◇1995年 春


 東京都内のとある警察署。


 朝8時。


 まだ肌寒い春の風が署の窓を叩き、埃っぽいカーテンがわずかに揺れる。


 進藤健一、27歳。

刑事課に配属されて3年目の若手刑事は、狭いデスクに腰を下ろし、目の前の書類を睨みつけていた。


 テーブルの上にはコーヒーの染みが付いたマグカップと、灰皿に山積みになった吸い殻。


 昨夜の徹夜捜査の疲れが顔に滲み、目の下には濃いクマが刻まれている。


「進藤、また徹夜か?」


 隣のデスクから声をかけてきたのは、上司の笹ヶ峰さん。


 50代後半のベテラン刑事で、がっしりした体格と穏やかな口調が特徴だ。

あと2年もすれば定年退職らしい。


 進藤にとっては父親のような存在でありながら、時折その優しさが鬱陶しく感じることもあった。


「ええ、まぁ。昨日の傷害事件の容疑者が口を割らなくてね。ちょっと粘ってみましたよ」


 進藤はニヤリと笑い、タバコに火をつける。


 煙がモクモクと立ち上り、狭い部屋に漂う。笹ヶ峰は眉をひそめたが、何も言わず自分の書類に目を戻した。


 進藤の頭の中は、昨夜の取り調べの情景でいっぱいだった。


 薄暗い取調室。


 鉄製のテーブルに手錠で繋がれた男は、30代前半のチンピラ風。


 顔には殴られた跡があり、目は虚ろに宙を彷徨っている。進藤は椅子に座ったまま、男の顔を覗き込むように近づき、低い声で囁いた。


「お前さぁ、黙ってても無駄だよ。こっちは証拠握ってんだ。昨日、西町の路地裏で暴れてたの、お前だろ?目撃者がちゃんといるんだよ。さっさと吐けよ。楽にしてやるからさ」


 男は唇を噛み、目を逸らす。

進藤は苛立ちを抑えきれず、テーブルをバンッと叩いた。


 金属音が部屋に響き、男の肩がビクッと跳ねる。


「黙ってりゃ済むと思ってんのか?なぁ、お前みたいなゴミが生きてんの、見てて腹立つんだよ。吐けよ、今すぐ!」


 男の目が泳ぎ、額に汗が滲む。進藤はさらに畳み掛ける。


「お前がやったって分かってんだよ。証拠だって揃ってる。嘘ついても無駄だ。なぁ、正直に言えよ。楽になりてぇだろ?」


 実際、証拠は曖昧だった。

目撃者の証言も曖昧で、物的証拠はほとんどない。


 ただ、進藤の勘が「こいつが犯人だ」と叫んでいた。


 そしてその勘は、これまで何度も的中してきた。


 男はついに耐えきれず、震える声で「…やりました」と呟いた。


 進藤は満足げに笑い、椅子に背を預けた。



 ◇午後2時 取調室


 その日もまた、別の事件で容疑者を締め上げていた。


 今回は窃盗事件。

コンビニから金を盗んだとされる20代の男だ。


 進藤は取調室の椅子に座り、足を組んでタバコを吸いながら、男を睨みつける。


「お前、昨日コンビニで店員脅して金盗んだろ?言い逃れできねぇぞ」


 男は首を振る。


「違います、俺じゃないです…」


 その言葉に進藤の目が鋭く光る。

立ち上がり、男の首元を掴んで壁に押し付けた。


「嘘つくなよ。お前みたいなゴミが生きてるだけでムカつくんだよ。さっさと吐け!」


 男の顔が恐怖で歪む。

進藤の手がさらに力を込め、男の呼吸が荒くなる。

そこへ、ドアが開き、笹ヶ峰が入ってきた。


「進藤!やめろ!」


 笹ヶ峰の声が響き、進藤は渋々手を離す。

男は咳き込みながら床に崩れ落ちた。

笹ヶ峰は進藤を睨みつけ、低い声で言う。


「お前、やりすぎだ。こんな強引なやり方じゃ、後で問題になるぞ」


 進藤は鼻で笑った。


「問題?こんなゴミどもが生きてる方が問題ですよ。笹ヶ峰さん、あんた優しすぎるんです。犯罪者なんて生きる価値ねぇんですよ。俺はただ、早く片付けてるだけだ」


 笹ヶ峰はため息をつき、進藤の肩を叩く。


「正義感は分かるが、やり方を考えろ。俺だって昔はお前みたいだったがな…限度を超えると、取り返しがつかなくなるぞ」


 進藤は聞く耳を持たず、タバコを灰皿に押し付けて席に戻った。


 笹ヶ峰の言葉は耳に届いても、心には響かなかった。


 彼の中では、犯罪者は全員「ゴミ」で、正義のためなら手段を選ばないという信念が固まっていた。



 ◇


 進藤の強引な捜査は、次第に署内で話題になっていた。


「進藤の取り調べ、怖いらしいぜ。容疑者が泣きながら自供したってよ」

「でもさ、件数上げてるのは事実だろ?上も黙認してるっぽいし」

「いや、でも証拠が曖昧なもの多いらしいぞ」


 若手の間では畏怖と尊敬が入り混じった目で見られ、ベテランからは苦言を呈されることもあった。


 しかし、進藤本人は意に介さない。


 むしろ、自供を引き出した件数が増えるたびに、自分のやり方が正しいと確信を深めていった。


 ある日、強盗事件の容疑者を締め上げていたときのこと。


 進藤はいつものように威圧的な態度で迫り、ついに男が「やりました」と自供した。


 事件は解決し、上司からも褒められたが、後日、その男が冤罪だった可能性が浮上した。


 アリバイを証明する証人が現れるも曖昧だったのだ。


 笹ヶ峰が警告した。


「進藤、お前あの事件、証拠薄かっただろ?強引に自供させたんじゃないのか?」


 進藤は肩をすくめる。


「自供したんだから、そいつが犯人でいいでしょ。証拠なんて後から揃えりゃいいんですよ」


 笹ヶ峰の顔が険しくなる。


「お前…それが冤罪を生むんだぞ。人の人生を狂わせるんだ。分かれよ」


 進藤は目を逸らし、タバコに火をつけた。

そりゃ100件に1件くらい冤罪だってあるだろう。


 けど、何だろうが、犯罪者を仕留めるのが自分の仕事だ。


 そう思っていた。



 ◇1996年 秋


 進藤が手掛けた事件の一つに、詐欺事件があった。


 30代の男が、高齢者から金を騙し取ったとされる案件だ。


 進藤はいつものように強引に取り調べ、男を自供に追い込んだ。


 男は泣きながら「やりました」と認め、裁判で有罪判決を受けた。進藤はまた一つ「ゴミ」を片付けたと満足していた。


 しかし、数ヶ月後、その男が冤罪だったことが発覚した。

真犯人が別件で逮捕され、証拠が揃ったのだ。


 その冤罪をかけられた男は刑務所で自殺を図り、命は取り留めたものの、心に深い傷を負った。


 そして、その男の妻が動き出した。


 ある雨の夜。


 進藤は署を出て、いつものようにコンビニに寄って帰路についていた。


 傘をさし、タバコを咥えながら歩く。背後から足音が聞こえ、振り返ると、そこに立っていたのは30代の女性だった。


 瘦せこけた顔に憔悴しきった表情。

手にはナイフが握られている。


「お前…お前が夫を…!」


 女の声は震え、涙と雨で顔がぐしゃぐしゃだ。進藤は一瞬呆気にとられたが、すぐに状況を理解した。


「お前、誰だ?落ち着けよ」


 女が叫ぶ。


「落ち着けだと?お前が夫を陥れたんだ!冤罪で…人生を壊したんだ!死ね!お前なんか死ね!」


 ナイフが振り上げられ、進藤に向かって突き出される。


 その瞬間、横から飛び込んできた影が女を押し倒した。


 笹ヶ峰さんだった。


「進藤、逃げろ!」


 笹ヶ峰さんの声が響くが、次の瞬間、女のナイフが腹に突き刺さった。


 鮮血が雨に混じり、アスファルトに広がる。進藤は目を丸くし、動けなかった。


 女は泣き崩れ、ナイフを落とす。

笹ヶ峰さんは膝をつき、進藤に呟いた。


「お前…やりすぎたんだよ…だから…」


 その言葉を最後に、笹ヶ峰さんは動かなくなった。雨が冷たく頬を叩き、進藤はただ立ち尽くすしかなかった。



 ◇その後


 笹ヶ峰さんの死は署内に衝撃を与え、進藤への風当たりは一気に強くなった。


 しかし、事件は表沙汰にならず、女は精神的な問題を理由に不起訴となったが、進藤の心には深い傷が刻まれた。


「俺が…やりすぎたのか…?」


 初めて自分のやり方に疑問を抱いた夜、進藤はアパートで酒を煽りながら涙を流した。


 笹ヶ峰さんの言葉が頭から離れない。


 それでも、彼は刑事を辞めなかった。


 信念は揺らいだが、正義を貫くため、強引なやり方はやめ50代になった今、彼は若手の成長を見守りながら、かつての自分を戒めるように生きている。


 あの雨の夜の記憶は、今も胸に重くのしかかっている。

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