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【完結保証】借金取りの俺と親に5万円で売られた少女〜DVされ心を完全に閉した少女は5年後うざいくらいに甘えてくる〜  作者: 田中 又雄


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消えた

 朝食を食べ終えた後、俺はキッチンの片付けをしながら頭を整理していた。


 進藤を潰すためには、後藤さんの証言だけじゃ足りない。


 総一が提案した『あの記事を書いた記者に会う』案はリスクが高いが、確かに突破口になる可能性はある。


 でも、進藤に嗅ぎつけられたら、面倒なことになるのは間違いない。


 リビングでは、総一が電話を手に持ってソファに座り、ゆあちゃんがノートに何かを書き込んでいた。


「唯斗くん、これで合ってる?」

「完璧だよ。ゆあちゃん、ほんと助かる」

「とりあえず、唯斗。お前はあんまり表に出ない方がいい。進藤が嗅ぎつけたら面倒だからな」

「つっても、お前だって顔割れてるだろ」

「名前は割れてないから」


 確かに殺人の共犯であり、親友であるとはいえ、ここまで徹底する理由は…。

隠している何かに関することだろうか。


「…総一、この前言っていた隠してることについてはいつ話してくれる?」と聞くと、ピクンと体が反応する。


「この件が片付いたらかな」

「分かった。総一、お前がメインで動いてくれるなら助かるよ」


 俺がそう返すと、総一は軽く頷いた。

でも、その目に一瞬だけ影が差した気がした。


 何か言いたそうな雰囲気だったけど、結局何も言わず、コーヒーを手に取った。


 ゆあちゃんが俺の袖をそっと引っ張って言った。


「唯斗くん、私、怖い人に会うの嫌いだけど…唯斗くんが戦うなら、私も頑張るよ」


 その言葉に、俺は彼女の手を握り返した。


「ゆあちゃんは無理しなくていいからね。でも、そう言ってくれるのは嬉しい」


 すると、嬉しそうに顔を見上げた。



 ◇


 古びたビルの4階。

会社——といっても、看板もない小さな事務所に入り、ゆあちゃんを預けてから社長室のドアをノックする。


 錆びた金属の扉が、鈍い音を立てた。


「おう、入れ」


 中から社長のぶっきらぼうな声が聞こえて、俺はドアを押し開けた。


 部屋の中は、タバコの煙と古い紙の匂いが混じり合ってた。


 壁は黄ばんで、剥がれかけたポスターがセロテープで無理やり貼られてる。


 窓の外からは、隣のビルのコンクリートしか見えなくて、陽光なんてほとんど届かない。


 社長はデスクに座って、古いパソコンの画面を睨んでた。


 40代の顔に刻まれた皺が、薄暗い蛍光灯の下でさらに深く見える。


「お疲れ。どした?」


 俺の顔を一瞥して、すぐに何か察したように目を細めた。


「あの刑事のことを色々調べてまして。この前あった、俺の友達の総一って知ってます? あいつがとある記事の切り抜きを見つけて…」


 俺が話し始めると、社長がデスクの引き出しをごそごそ漁り始めた。


「それってこれのことか?」


 そう言って、あの週刊誌をドサッと机に置く。

表紙は色褪せてて、角が折れてた。


「知ってたんですか?」


 俺が驚いて聞くと、社長がニヤリと笑った。


「あぁ。つーか、この記事を書いたのは俺の知り合いだ」

「そうだったんすか…」


 言葉を失って、俺は週刊誌を手に取った。

紙の感触がザラザラしてて、なんだか現実味が湧いてくる。


「それで? 何してた、もしくは何しようとしてるんだ?」


 社長の声に、俺は週刊誌から目を上げた。


「えっと、後藤清嗣さんに会って、冤罪について証言してくれないかを頼みました」

「後藤清嗣…。あのおっさんか」


 社長が少し眉を寄せて、記憶を辿るように呟いた。


「はい。名前を出さなければ証言してもいいと言ってもらえました」

「…マジか。この記事書いた知り合いは門前払いされたって言ってたぞ」

「…仕事としてじゃなく、個人的なものって言ったのが良かったのかもしれないです」


 社長は少し考え込むように顎を撫でて、タバコに火をつけた。


 煙がモクモクと上がって、古い天井に染み込んでいく。


「アイラのやつから話は聞いたか?」

「いや、まだです。アイラのお爺ちゃんのことですよね? 進藤の上司だったんですよね」

「あぁ。まぁ、俺の親父の知り合いでもあったんだけどな。警察じゃ扱えない、金とか権力で揉み消された話をよくうちに振ってきてな。いわゆる私刑ってやつだ。今はネットがあるからある程度の事件は表に出るけど、昔はそうじゃねぇからな。アイラをうちで雇ってるのも、そういう事情がないと言えば嘘になる」

「そうなんすね」


 俺は頷きながら、アイラの爺ちゃんの顔を思い浮かべた。

厳つい顔で、でもどこか優しそうな目をしてたっけ。


 社長はタバコを一服吸って、灰を缶の灰皿に落としながら呟いた。


「俺も具体的にあの日、何があったのかは知らねぇし、聞かないようにしてる。アイラのためにな。けど、お前が本気なら話を聞くのも一つの手だぞ」

「…はい」


 その言葉が、俺の胸に重く響いた。


「それともう一つ。遠くないうちに進藤についてはこっちで処理するつもりだ」

「処理? どういうことですか?」


 思わず身を乗り出して聞くと、社長が目を細めた。


「あいつがうちの会社を潰そうとしてたのは何となく知ってるだろ? だからこそ、お前を脅して俺の弱みを握ろうとした」


 その言葉に、頭が一瞬真っ白になった。


 あれは社長個人を狙ったわけじゃなく、会社自体を潰すための行動だったのか。


 でも、何のために…?


「まぁ、この話をすると長くなるからな。端的に言えばそういうことだ。だから、無理して調べる必要はねぇっつー話だ。それにお前も加わりたいって言うなら、考えるが」


 またあの時のように殺すのか。

確かに進藤はどう見たってクズだ。


 冤罪をかけて人生をめちゃくちゃにして、ゆあちゃんの家庭の事情を知ってて助けもしなかった、正義気取りのただの悪人。


 だからこそ、最後は正義の鉄槌を喰らわせたい気持ちがあった。


 でも、殺すってのは…俺の中で何かが引っかかった。


「具体的にいつに決行ってのは決まってますか?」

「ん? そうだな…早けりゃ来月。遅くても2ヶ月以内には終わらせたいって思ってる」


 1〜2ヶ月か。


「分かりました。もし、あいつを刑務所にぶちこめるならそれでもいいですか?」

「それでも構わねぇが、もし刑期を終えて出てきたらやっちまうが、それでもいいならな」

「…はい。それでもいいです」


 声が少し震えたけど、なんとか言い切った。


 そんな話をしていると、突然、社長室の扉が勢いよく開いた。


 錆びた蝶番がギィッと悲鳴を上げて、空気が一気に緊張する。


「先輩っ!」


 そこに現れたのは、慌てた様子のアイラだった。


 肩で息をしてて、普段の冷静な彼女とは別人みたいだ。


「どした、そんなに慌てて」


 社長がタバコを灰皿に押し付けて、眉を寄せた。


「莉乃葉が…っ! 居なくなりました!」

「…は?」


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