これはデートじゃないっすよ
「...」
不服そうな顔で俺を見つめるアイラ。
時刻は13:00。
待ち合わせ場所は駅前のカフェだったのだが...。
先日の約束を果たすために、デートに来たわけだが...社長に事情を話したら、「ん?それなら4人でいきゃいいじゃねーか」と言われてしまい、アイラには2人を事務所に預けていくと伝えたが、結局2人を連れて待ち合わせ場所に来てしまっていた。
「...悪い」と小さくこぼすと、「はぁ...仕方ないっすね。まぁ、先輩が優しい人だっていうのはわかってましたから。僕も薄々そうなるんじゃないかと思ってましたし。それに... 莉乃葉からも話聞かないとですもんね」と大きくため息をつきながらそう言った。
秋野さんは相変わらずぼーっとしたままだった。
すると、俺と手を繋いでいたゆあちゃんが「...唯斗さんと2人きりになんて...ダメだもん」と、少し怒ったようにアイラに向かって言った。
「っふ!ゆあはまだまだ子供だからね〜?大人の恋愛に口出すのはまだ早いよ〜!w」と、頭をくしゃくしゃとすると、「やっ!やめ!」と、必死に抵抗する。
そんなアイラにチョップをかましてから、4人で駅の中に入る。
駅の中には複合施設が入っており、そのまま4人で服屋が並んでいる3Fフロアに向かう。
ちなみに平日ということもあり、駅の中は普段より空いていた。
そのエレベーター内で「それじゃー、今日は僕に付き合ってもらうっすからね!今日はせっかくだから、ファッション対決するっすよ!この中で先輩が一番グッとくる服を選べた人が勝ちっす!」とアイラが言うと、小さく拍手するゆあちゃんと、無表情の秋野さん。
「...っふ、僕は先輩のことを一番理解してるっすからね。先輩がドッキドキになるような服を選ぶっすよ...?」と、ドヤ顔をする。
「...私だって...頑張るもん...」と、少し鼻息を荒くするゆあちゃん。
一体どんな服を選んでくるのか...と思っていると、アイラが真っ先に入っていこうとしたのはランジェリーだった。
「...おい」
「なんすか!いいじゃないっすか!おち◯ぽにはこういう店が一番来るんすよ!」というのを無視して、店を後にする。
「...っち。エロい格好なら自信があったのに...」
「正々堂々と戦え」
「邪道でも勝利を掴むのが、闇金従業員ってもんでしょうが!」
「...はいはい」
普通の服屋に入ると、テンション高く服を選ぶアイラ。
それに対抗して、ゆあちゃんも子供服のところでいろんな服を手に取っていた。
眼差しは真剣そのものだった。
取り残された俺と秋野さんは近くのベンチに座ることにした。
あれからまともに会話ができていない。
アイラとは少しは会話してるみたいだが...。
「...買い物はあんまり好きじゃない?」
「...」と、無言で首を横に張った。
ここに連れてきたのは間違いではなかったか。
「そっか。ならよかった。秋野さんはああいう服が似合うと思うな」と、他の店に並んでいた服を指さす。
すると、視線だけが動いてその服を見つめて、すぐに正面に視線が戻る。
ゆあちゃんは子供だけに環境の変化や、トラウマからも比較的早く立ち直れた気がした。
しかし、大人になればそう簡単にはいかないよな。
それでも何かが変わればと俺は秋野さんの手を引いて、似合うといったお店に向かった。
「...これ着てみてほしいな。秋野さんも納得したら俺がお金出すからさ。ねっ」と、ややゴリ押しで試着を促す。
すると、少しだけ困った表情をしながらも、俺のいう通りに試着をしてくれた。
少し俯いたまま、カーテンが開く。
「うん...やっぱり似合うね。どうかな?」というと、振り返って鏡をじっと眺める。
「...似合ってる...かな」と、呟いた。
「うん。似合ってるよ。よし、じゃあ買おうか」と、俺がカーテンを閉めようとすると、俺の手を掴む。
「ん?」
「...後で...話がしたい。...2人で」
「...うん、分かったよ。ありがとうね。勇気を出してくれて」
そうして、秋野さんの服を買ってから元のお店に戻ると、店先で腕を組んで立っている2人。
「...今日は僕とのデートなのに!僕を放っておいて2人でイチャイチャなんて許せないっす!」
「...許せない」
2人に謝ってから2人の試着にも付き合うことにした。
アイラはというと...露出の激しい服を着て、不機嫌そうな顔をしながら、「エロい目で胸ばっか見てんじゃねーよ。この変態が」と言ってきた。
こいつの中で俺はドMの設定なのだろうか...。
明らかにサイズ違いの服を無理やりきたせいで、胸の部分が強調される。
「...いや、胸を見られたくないならそんなピチピチの服着るなよ」
「ぁ?胸見ておいてなんだよそれ。この変態が...っ!...どっすか?興奮しました?」
「しねーよ。俺はおとなしい女の子の方がタイプなんだよ」
「なんと!?それ先に言ってくださいよ!」
「...そんくらい把握しておけ」
そうして、わちゃわちゃしていると、ゆあちゃんも試着を終えて出てくる。
「...どうですか?」
「うん、可愛いよ。似合ってる」と、素直に感想を告げると顔を赤くしながら、モジモジとし始める。
すると...「こ、この...ウジ虫ロリコンが...。エロい目で見てんじゃねーぞ...」と呟いた。
...明らかにアイラの差金だった。
そうして、買い物を終えた俺たちはアイラについていく形で映画館に向かった。




