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【完結保証】借金取りの俺と親に5万円で売られた少女〜DVされ心を完全に閉した少女は5年後うざいくらいに甘えてくる〜  作者: 田中 又雄


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解決方法

 ◇7日目


 7日目。休みの最終日だ。


 明日からは仕事が始まり、日常の喧騒が俺を飲み込む。


 これまでゆあちゃんと過ごした時間が、まるで夢の続きのように感じられる。

でも、その夢も今日で一区切りだ。


 最終日はゆったり過ごそうと決めていた。


 仕事が始まれば忙しさに追われ、ゆあちゃんに目を向ける余裕が減るだろう。


 彼女を一人で置いておくのは気がかりだ。

仕事場に連れていくわけにもいかないし…。


 何かあったらどうする?

彼女の小さな背中が頭に浮かび、胸の奥がざわつく。


「社長に報告するか…」


 呟きながら、頭の中で考えが渦を巻く。


 でも、もし報告して、家に返すよう言われたら?


 ゆあちゃんはあの地獄に逆戻りだ。

あの男の薄汚れた手が彼女に伸びる姿を想像すると、胃が締まる。


 あんなことは絶対にさせたくない。

でも、どうすれば…。


いつまでも隠し通せるものじゃない。


 あいつが『娘が攫われた』と騒ぎ立てれば、俺だって危ない。


 闇金の仕事をしてきた俺には、法の網をかいくぐる術はある。

でも、それでゆあちゃんを守れるのか?

頭がぐるぐると回り、答えが見えない。


「じゃあ…いっそ始末するか?」


 その考えが脳裏を掠める。

借金を踏み倒そうとした奴を捕まえたことは何度もある。

その結末がどうなるか、分かりきっている。


 あいつを借金踏み倒しの罪で社長に突き出し、闇の中で処理してもらう。


 そうすれば全て解決するんじゃないか?

ゆあちゃんを庇ったって咎められることはないだろう。

説得だってできるはずだ。


 でも、ゆあちゃんはどう思う?

あんな男でも、彼女にとって唯一の家族だ。


 その父親を俺が消したら、彼女は俺をどう見るだろう。

憎むかもしれない。

許せないと思うかもしれない。


 それとも、解放されたと喜ぶのか?


『ゆあちゃん、俺は君のお父さんを殺したい?』と聞くなんて…そんな選択を彼女に押し付けるのか?

頭が重くなり、息が詰まる。


 だけど、あの男が生きていることが、ゆあちゃんの人生に良い影を落とすとは思えない。


 あの薄暗い家で、彼女が怯えていた姿が目に焼き付いている。


 虐待の傷が彼女の体に残り、心に深い溝を刻んでいる。


 あいつが消えれば、彼女は自由になれるかもしれない。

でも、俺にそんな権利があるのか?


「自分がもっと賢ければ…」


 天井を見上げながら、呟く。


 もし俺がもっと頭を働かせられれば、こんな袋小路に追い込まれずに済んだのか。


 答えを探して目を閉じるが、思考は堂々巡りだ。

ゆあちゃんの未来を考えるたび、あいつの存在が暗い雲のように立ち塞がる。


長い時間をかけて考え抜き、俺はある決断に至った。

社長に全て話す。


 あの男をどうにかする方法を相談し、ゆあちゃんを守る道を探す。

それが最善じゃないかもしれないけど、今の俺にできることはそれしかない。


 決意を胸に刻み、俺は立ち上がった。



◇喫茶店


 昼下がりの喫茶店は静かだった。


 木製のテーブルに陽光が反射し、窓の外では街路樹が風にそよいでいる。


 俺は個室の席に座り、目の前のコーヒーに手を伸ばす。少し冷めた苦味が舌に広がる中、ドアが開く音が響く。


「…社長、お疲れ様です」

「おう。休みはどうだった?」


 社長がどかっと椅子に腰を下ろす。

がっしりした体躯が席を埋め、いつもの威圧感が漂う。


 ここは俺たち御用達の喫茶店だ。

社長が経営するこの店は、闇金から足を洗った者たちの受け皿だった。


 働く場所がない彼らを雇い、利益を度外視して続けている。

店内にはそんな従業員たちが静かに動き回り、コーヒーの香りが穏やかに漂う。


「めっちゃ休めました。ありがとうございます」

「まだ今日が残ってるだろうが。それで? わざわざ俺を呼び出して何の話だ? つまんねー話ならぶん殴るぞ?」

「つまらなくはないです」

「おーん? 言ってみな」


 俺は深呼吸し、これまでの経緯を全て打ち明けた。

ゆあちゃんが置かれていた悲惨な状況。


 あの男に5万円を立て替え、その代わりにゆあちゃんを家に住まわせていること。


 今後、彼女を幸せにしたいと思い、そのために面倒をかけるかもしれないと。

言葉を選びながら、慎重に話す。


 社長は無言で聞き続け、時折タバコの煙を吐き出す。

その表情からは何も読み取れない。

全てを話し終えた時、社長が立ち上がり、俺の頬を思いっきり叩いた。


「いっ!!」


 衝撃で椅子から転げ落ち、床に手をつく。

頬が熱を持ち、鈍い痛みが広がる。

社長に殴られたのはこれで3回目だ。


「…すみませんでした」

「それは何に対する謝罪だ?」

「…勝手に行動して、報告しなかったことです」

「分かってんじゃねーか。今お前を殴ったのは、俺に黙ってそんなことやってたからだ。なんで言わなかった?」

「…迷惑かけたくなかったんで」

「じゃあ、なんで今言った?」

「…それでも、迷惑かけても話すべきだと思ったからです」

「…馬鹿だな、お前」


 社長は席に戻り、タバコに火をつける。

煙が細く立ち上り、部屋に漂う。


「いいことを教えてやる。全てを丸く収める方法だ」

「…あの親父を消すことですか?」

「まぁ、それも手だな。どうせあいつはいつか殺そうと思ってた。遠くないうちに飛ぶだろうし、その前に捕まえて臓器を売って金に変えるつもりだった。けど、もう一ついい方法がある」

「…何ですか?」

「何だよ、それで俺に声かけたんじゃないのか? 教えてやる。あいつの借金をお前が肩代わりするんだ。その代わり、あいつには二度とうちは金を貸さないし、その娘との縁も切らせる。誓約書付きで、うちとその娘に手を出さないってな。それならお前は手を汚さずに済む。娘にとっても悪くない選択だろ」


 その言葉に、目が開く。

確かに…そんな方法があったのか。

なぜ思いつかなかったんだ。


 あいつの借金は元金で100万円。

延滞金と利息で1200万近くになっていたはずだけど…。


「当たり前だが、お前が払うのは元金だけでいい。100万円だ。それならあいつを始末する手間も省けるし、警察に目を付けられずに済む。一石二鳥だ。どうだ? お前の覚悟が本物なら…」

「払います。払わせてください」


 即答すると、社長がニヤリと笑う。


「…分かった。そんじゃ、1週間以内に金を持ってこい。あの親父には俺から話をつける。それと…その子に今度会わせろ。うちに連れてきてもいいぞ」

「…ありがとうございます」


 俺は深く頭を下げた。

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