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【完結保証】借金取りの俺と親に5万円で売られた少女〜DVされ心を完全に閉した少女は5年後うざいくらいに甘えてくる〜  作者: 田中 又雄


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借金取りに買われた少女

【第一話 YouTubeにて公開中】

https://youtu.be/rgur__37XEw?si=EdSyosZVO6N9TGsG



「…おい、山坂。伊藤のやつ、また滞納してるから取りに行ってこい」


 社長の太い声が事務所に響いた。


 俺は反射的に「りょーかいっす」と返す。


 社長の声に隠された僅かな苛立ちを感じながら、内心では重いため息が漏れそうになる。


 またあいつか…。


 事務所を出て、冷たいコンクリートの階段を下り、駐車場に停めたボロボロの軽自動車に乗り込む。


 ドアを閉めた瞬間、吐息が白く曇った。

季節は一応、春。


 でも、北海道の春は内地とは別物だ。

カレンダーでは4月でも、道路脇にはまだ黒ずんだ雪が残り、風は容赦なく肌を刺す。

道民なら誰もこんな時期を「春」とは呼ばないだろう。


 そもそも気温は最低が一桁台で、朝晩は特に凍えるくらいだった。

車内のヒーターが温まるまでの間、「さみ…」と呟きながら手を擦り合わせた。


 それでも、この北海道特有の4月が俺は嫌いじゃなかった。


 窓の外を流れる景色――雪解け水で濡れたアスファルト、遠くに見えるまだ白い山々、もう少しすれば顔を出すであろう薄桃色の桜のつぼみ。


 キリキリと冷たい風が頬を叩く中、そんな風景を眺めていると、妙に心が落ち着く瞬間があった。


 高校を卒業してすぐ、俺は進学なんて考えもせず家を飛び出した。


 元々、勉強は苦手で、頭も良くない。

親とも折り合いが悪く、「出てけ」と言われる前に自分から出てやったって感じだ。


 それからはフリーターとして適当なバイトを転々としていたある日、ひょんなきっかけで闇金の仕事を始めた。


 闇金なんて裏稼業だから、事務所は当然寂れたビルの一角にある。


 埃っぽい階段、剥がれた塗装、薄暗い蛍光灯。

表向きには何の会社かも分からない怪しげな場所だ。


 そんな仕事だが、このコワモテな顔が功を奏したのか、入社してすぐに借金の取り立てを任されるようになり、今じゃ5年目。

仕事の流れも、客の扱い方も、だいぶ慣れてきた。


 これまでいろんな奴を見てきた。

本当に困窮して金を借りざるを得なかった奴から、どうしようもないクズまで。


 そして、これから取り立てに行く伊藤って男は、その中でも最低の最低だった。


 借金してから1年。

滞納を繰り返し、そのたびに俺がこうやって出向く。


 伊藤の家は築何十年かわからないほどボロボロで、外壁は崩れ、窓枠は歪み、ゴミが散乱している。


 更にその家のことは、10歳くらいの少女に全部押し付けているらしい。


 聞くところによると、自分の娘を召使みたいにこき使い、挙句の果てには性奴隷のように扱っているとか。


 正直、初めてその子を見たとき、衝撃が走った。

全身にあざが広がり、根性焼きの跡がいくつも残るガリガリに痩せた体。

目は虚ろで、生気がまるでない。


 本当に人形みたいだった。


 あの子を見るたび、胸の奥が締め付けられるような痛みを感じた。

目を背けたくなるが、背けたところで彼女の状況は一向に良くはならない。

せめて向き合おうと思い、彼女をまっすぐと向き合っていた。


 そんな、やや重たい気持ちを抱えながら、俺は伊藤の家に向かった。


 到着して車を降りると、インターホンを押す前に家の中から怒号が聞こえてきた。


「このゴミが! ゴミが! ゴミが!」


 けたたましい罵声が木造の薄い壁を震わせる。

でも、少女の声は聞こえない。

もう…叫ぶ力すら残ってないのか。


 そのままインターホンを押すと、勢いよく扉が開いた。


「ったく! 誰だゴラァ!?」


 現れたのは40代後半くらいの禿げた男。

恰幅が良く、不潔でだらしない雰囲気を漂わせ、汗とタバコが混じった悪臭を放っている。

こいつが伊藤だ。


 俺の顔を見るなり、態度が一変した。

弱々しくヘラヘラ笑いながら、「お、お見苦しいところを見せました」と媚びるように言う。


 その切り替えの早さ、薄っぺらい演技。

本当に全てが不愉快な男だ。


「伊藤さん、また滞納してるけど。延滞分も含めて今すぐ払ってもらえる?」


 そう淡々と告げると、伊藤は目を泳がせながら口を開いた。


「い、今すぐはちょっと…家にお金がなくて…あ、明日! 明日必ず払いますから! 必ず!」


 見苦しい嘘だ。

深いため息をつきながら、俺は冷たく切り返す。


「…あのさ、1週間滞納して、その間一切音沙汰なかったくせにまだ待ってくれると思ってんの? 俺らのこと天使だと思ってる? 悪いけど、こちとら悪魔なんだよ。家ひっくり返してでも、今すぐ5万さっさと用意しろ。それくらいなら出せるだろ」


 本来の借金額を考えれば、5万円なんて破格の妥協だ。


 伊藤は一瞬、「こんな若造に!」とでも言いたげな顔を見せたが、すぐにその表情を隠した。


 そして、急に名案を思いついたような顔をする。


「あっ…! こ、こいつあげますから!」


 そう言って、あの少女を差し出してきた。


「色々仕込んだので、おもちゃとして結構使えますよ! それに家のことは結構できますし!」と、ニヤニヤしながら下卑た笑みを浮かべる。


 いい加減、堪忍袋の緒が切れそうになる。


 たった一回の支払いのために、自分の娘を躊躇なく売り物みたいに差し出すその根性。

普段は仕事で感情を表に出さない俺だが、こいつは別だ。


 このゴミクズ…いや、むしろ都合がいいかもしれない。


「…わかった。それじゃあ、今月分はこの子で勘弁してやる。これからは滞納しないようにな」

「は、はい! 早く行け!」と、伊藤は少女を無理やり引っ張り出す。


 放り出された彼女を受け止めると、その体は本当に綿菓子みたいに軽かった。


 顔を見ても、何の感情も読み取れない。

恐怖も喜びも、希望も絶望も。ただ虚ろな目がそこにあるだけだ。


 そのまま彼女を助手席に乗せ、一度事務所に戻った。


 車内で彼女は一言も喋らず、ただじっと前を見つめていた。

俺は黙ってハンドルを握り、事務所に着くとポケットから5万円を取り出し、社長に渡す。


「あのクズ、まだこんな金持ってたのか」

「…はい。みたいです」

「正直、回収はもう諦めてたんだがな」


ここで嘘をついたのには理由がある。


 人身売買は面倒なトラブルになりやすい。

最近はそういう取引を避ける方針だったから、今回の件は社長に報告しないことにした。

どうせ伊藤の担当は俺だし、余計な問題にはならないだろう。


「…すみません、社長。今日は早退していいっすか?」

「ん? あー別に構わねーよ。けど、珍しいな。もしかして…これか?」と、社長は小指を立ててニヤニヤする。


 社長は俺より強面で、筋骨隆々の体から溢れるオーラはただ者じゃないと一目で分かるほどだ。

債務者には鬼か悪魔のような態度を取るが、従業員には驚くほど甘い。


「…そっすね」と、苦笑いで返すと、社長は豪快に笑った。

「そーかそーか! そりゃよかった! お前は若ぇのに全然そういう影なかったから心配してたんだよ! 何なら、1週間くらい休み取ってもいいんだぞ?」

「…いいんすか?」

「おう、とれとれ! お前は働きすぎだからな」


 ラッキーなことに1週間の休みまで貰えた。

車に戻ると、彼女は相変わらずぼーっとしたまま、まっすぐ何かを見つめていた。


「…さてと…このくらいの女の子のことはマジでわかんねーぞ」


 とりあえず、俺の家に連れて行くことにした。


 闇金で真面目に働いてきたおかげで、2LDKのそこそこ新しいマンションに一人で住んでいる。一部屋分の余裕もあるし、何とかなるだろう。


 まずは服やベッドとか、必要なものを揃えないとな。

10分ほどで家に到着し、彼女を連れて中に入る。


 荷物を下ろしてソファに座ると、彼女はどうしていいか分からない様子で、その場に立ち尽くしていた。


「おっと…えっと、今日から俺と住むことになるわけだが…名前は?」

「…ぁ」

「…ん?」

「…ゆあ…」

「ゆあちゃんね。よし、よろしく。それじゃあ、これからゆあちゃんの服とかベッドとか必要なものを買いに行くから」

「…」


 嬉しそうにすることも、頷くこともなく、ただぼーっとしている。


 …ひとまず風呂に入れてやった方がいいか。

傷も酷いし、外に出たい感じにも見えない。必要なものは通販で揃えればいい。


 今はまず、心と体の傷を癒すことが大事だ。


 こうして、俺と彼女の奇妙な生活が始まった。


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