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転生したら、つるっぱげ  作者: 続けて 次郎


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3/4

第二巻:社会は、ハゲに優しくない

プロローグ:世界は、鏡の前で本性を現す



恋人ができたからといって、

世界が優しくなるわけじゃない。


むしろ逆だ。


世界は、

「それでも大丈夫か?」と、

念入りに確認してくる。


僕は鏡の前に立っていた。


朝の洗面所。

蛍光灯の白さが、

情け容赦なく、頭皮を照らす。


そこに映る自分は、

昨日よりも少し、

期待している顔をしていた。


それが、

腹立たしかった。


期待は、

いつだって裏切られる。


髪の毛が抜けるときと同じだ。

抜けた瞬間より、

「次はもっと減る」という予感の方が、

ずっと痛い。


「……行ってきます」


月島澄に、

そう言う日常が始まった。


それだけで、

世界は少し眩しかった。




第一章:働くということは、並ぶということだ



就職活動。


それは、

人間を商品棚に並べる儀式だった。


身長、

体重、

学歴、

資格、

笑顔。


そして、

暗黙の項目。


――清潔感。


僕は、

その項目でいつも、

説明書を読み飛ばされる。


「えー……真壁くんは……」


面接官の視線が、

一瞬、

頭に落ちる。


たった、

0.3秒。


でも、

その間に、

評価は終わる。


「個性的ですね」


その言葉は、

「不採用」の、

遠回しな別名だった。


帰り道、

スーツの肩が、

やけに重い。


社会は、

努力よりも、

見た目の平均値を愛している。


平均から外れたものは、

統計として処理される。




第二章:優しさは、同時に試練でもある



月島澄は、

相変わらず優しかった。


だからこそ、

苦しかった。


「今日はどうだった?」


その一言が、

喉に引っかかる。


「……まあまあ」


嘘だ。


でも、

本当のことを言えば、

彼女の優しさに甘えてしまう。


それが、

嫌だった。


「真壁くん」


彼女は、

僕の顔を見る。


「無理に、

 強くならなくていいんですよ」


その言葉は、

毒にも薬にもなる。


僕は、

まだどちらにするか、

決められていなかった。




第三章:比較は、静かな暴力だ



街を歩けば、

広告が笑っている。


ふさふさの髪、

白い歯、

自信に満ちた目。


「なりたい自分に、なろう」


無理だ。


頭皮が、

既に否定している。


友人の結婚式。


「真壁、

 全然変わんねーな!」


それは、

褒め言葉じゃない。


変われなかった証明だ。


集合写真。


フラッシュが、

僕の頭で、

二倍に反射する。


その瞬間、

僕は背景になった。




第四章:喧嘩は、愛の副作用だ



「……なんで、

 そんなに自分を下げるんですか」


彼女の声は、

初めて、

怒っていた。


「現実だからだよ」


そう言った瞬間、

後悔した。


現実は、

刃物みたいなものだ。


握る側が、

血を流す。


「私が好きなのは、

 現実じゃありません」


彼女は、

震えていた。


「あなたです」


その言葉に、

僕は何も返せなかった。


自分を信じられない人間は、

他人の愛も、

信用できない。




第五章:帽子は、盾にも檻にもなる



ある日、

彼女が言った。


「……帽子、

 取ってみませんか」


外だった。


人通りのある、

昼間の街。


頭皮が、

警報を鳴らす。


「無理だよ」


即答だった。


「ごめんなさい」


彼女は、

そう言った。


でも、

目は逸らさなかった。


その沈黙は、

拒絶じゃない。


期待だった。


僕は、

期待に応えられなかった。


その日から、

二人の間に、

薄い影が落ちた。




第六章:別れは、避けるほど近づく



すれ違いは、

音を立てない。


ある日、

彼女からの連絡が、

少し遅れた。


それだけで、

不安が増毛する。


また皮肉だ。


「……距離、

 置きませんか」


彼女は、

泣いていなかった。


それが、

一番、きつかった。


「嫌いになったわけじゃ、

 ありません」


そう言われるほど、

否定された気がする。


別れは、

いつも、

正論の顔をしてやってくる。




終章:孤独は、頭皮より冷たい



一人になった部屋。


帽子を、

床に投げた。


転がる帽子は、

僕の代わりに、

うなだれていた。


鏡を見る。


そこにいるのは、

恋を失った、

つるっぱげの男。


でも。


目だけは、

まだ死んでいなかった。


月島澄の言葉が、

頭の奥で、

消えずに残っている。


「あなたです」


それが、

次に進むための、

唯一の毛根だった。

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