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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
戦乱の末、公爵叙勲と女王との婚姻。最強の怪力騎士、ついに国の頂へ
79/80

姉上の訪問。夏の日の終焉と黄金の再臨。カミーユ、家族の安息を守るため独り竜の群れへ

 季節はめぐり夏。


 カミーユは妻たちと共に、久しぶりにゆったりとした時を過ごしていた。


 剣士ローレンに教えてもらった風呂は、夏もさっぱりとした心地よさを与え、妻たちには好評であった。


 今は昼下がり、マリーゴールドの黄色を楽しみながら、カミーユは、エトナの膝に乗り、ロザリアを膝に乗せ、フローラに給仕をさせてお茶を楽しんでいる。


「エトナ、あなたの愛はいつも私の心を包んでくれます。あなたの元に戻るため、私は生きているように感じます」


「ロザリア、あなたの愛はいつも私を夢中にさせます。あなたの愛に報いるため、私は日々を過ごしています」


「フローラ、あなたの忠愛は私の心の支えです。これからも末永く、私に仕えてください」


 これだけのセリフを言って、皆に心地よさを与えるのが、カミーユのカミーユたる所以である。


 皆、カミーユを喜ばせようと、賑やかに茶会は続く。


 ふと、ロザリアが口を開く。

「ねえ、カミーユ。王女殿下との結婚は、間も無くだったかしら。お母様がそうおっしゃっていたわ」

 ロザリアは花の具合でも確認するかのように、軽やかに尋ねる。


「はい。この夏の終わり頃には、式を迎えられるようです」


 エトナは不安げにカミーユに問う。

「カミーユは、王女殿下、即位した女王陛下の妻となられるのですよね。住まいも王宮へ変わってしまうのでしょうか」


「いいえ、エトナ。私はこの度、公爵となります。女王陛下の元へは、この屋敷から通うことになります。私の住まいは変わりません」


「良かった。カミーユ。嬉しいです」

 エトナは安心してカミーユに微笑みかける。


「カミーユ様、式の御衣装はいかがなされるのでしょうか」

 フローラはお茶を注ぎながら、カミーユに尋ねる。


「はい。サラ・ハイアン侯爵閣下が、私のために衣装を準備していただけることになっています」


「そうよ。お母様にお任せすれば間違いがないのだから」

 ロザリアが補足する。


 実際にカミーユは何度か仮縫いでハイアン侯爵家へ呼ばれ、衣装の準備は着々と進んでいた。


 ハイアン侯爵家を訪ねた際は、無論、カミーユはサラの元で夜を過ごした。


 カミーユは眼前のお茶会に意識を戻す。

 女たちは賑やかで、ハーブ茶の香りは清々しく、サルビアの花が美しく揺れていた。



 そんな時、夏の風が、俄かに強くなった。

 空は曇り、夏の日に寒さを感じる。


 カミーユたちを覆う影が大きくなり、カミーユたちを日から陰らせた。


 その影は小さくなり、金色の煌びやかな美女に姿を変えた。


「愚妹よ。俺が会いに来たのだ。喜びに打ち震えよ」


 シド・クオンであった。いつの間にかカミーユの中庭に、金色の美女が腕を組み、立っていた。


 カミーユは妻たちの前に立ち塞がり、佩刀に手をかける。


「逸るな愚妹よ。俺が言ったことを覚えているか。滅びの美だ。今日を人の世の滅びの日にしても良いのだ。ただし」


 シド・クオンはカミーユを見つめる。


「人の世を滅ぼせるだけの竜を連れて来た。愚妹よ。まずは貴様が戦うことを許そう。他の人間に手は出さぬというのだ」


 見ると、北の空に雲霞のような数の竜たちが飛んできている。その高さは高く、巨人たちの弓でも届かないであろう。中には家ほどの大きさの竜たちも混じっている。


「シド・クオン。これはあなたの戯れですか」

 カミーユはシド・クオンを警戒したまま尋ねる。


「姉上と呼ぶことを許そう。それ以外の呼びかけには応じぬ」


 シド・クオンは不遜な笑みでカミーユを見下ろす。


「姉上、これはあなたの戯れですか。他の者たちには手を出さぬのですね」


「その通りだ。妹よ。あの竜たちを自由にさせれば人を襲おうが、そうでなければ人は襲わぬ」


 カミーユに選択の余地はなかった。


「フローラ。弓と矢を」

「はい。カミーユ様」


 カミーユはフローラに、カミーユの弓と矢筒を用意させる。

 矢筒には、巨人から送られた魔法の矢、ミスリルの矢が入っている。


「場所は王都の北の台地といたします。よろしいですね」


 カミーユはシド・クオンに告げる。


「構わぬ。好きに戦うが良い」


 カミーユは自らの体に流れる竜の血から魔力を汲み上げ、視線の先、王都の北の台地に向かって空間を跳んだ。


 こうして、突如として、カミーユと竜の軍勢の戦いが始まった。

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