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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
戦乱の末、公爵叙勲と女王との婚姻。最強の怪力騎士、ついに国の頂へ
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騎士と神王。暗殺者から親善大使へ。邪教を断ったカミーユと、神王カルナスの友好

 カミーユは深夜、神の家と呼ばれる娼館に戻った。


 ユマとカリン。そして五人の竜の巫女たちを連れている。


 娼館の主人、アナベルはカミーユたちを暖かく迎え入れる。

 女たちが集まり、カミーユに話をせがんだ。


「カミーユ様、お怪我はございませんか」

「カミーユ様。竜はいたのですか。どのように倒したのですか」


「拐われた人々はいたのですか」

「大司祭様は、やはり悪に手を染めていたのですか」

「その少女たちは誰ですか」


 カミーユは一人一人に丁寧に答える。


「怪我というはどの怪我はありません。無事に帰ってこられました」

「竜は沢山いました。それらは、巨人から譲り受けた矢で射落としました」


「はい。拐われた人々は薬で眠らされていました。今は私の依頼により、司祭様たちに介護されています」

「大司祭様は、我らが神とは違うものを信仰していたようでした。とても悲しいことです」

「この少女たちは竜の世話をするために集められた者たちです。どうか世話をお願いします」


 カミーユがそういうと、女たちは竜の巫女たちを連れて行った。カミーユは、危険はなかろうと思い、絨毯の上の座布団に座った。


 明日、朝になったら、神王国の王、神王カルナス陛下に会わねばならない。

 ことの次第を説明し、納得してもらう必要があるが、ともすれば戦になるかもしれなかった。


 それはそうと、カミーユの周りには女たちがにじり寄ってくる。無論、カミーユが拒むことはない。


 カミーユは女たちのつける香水の香りに包まれ、夜を過ごした。



 翌朝、女体で揉みくちゃになった部屋で、カミーユは立ち上がる。見ると、ユマやカリン、竜の巫女たちも、色とりどりの扇情的な服に着替えさせられ、眠っていた。


 カミーユは女たちの隙間を見つけ、絨毯の上で足を組み、瞑想する。


 すると、カミーユの隣に師、ゴダールの気配が現れた。

「カミーユよ。昨夜会った黄金の竜、シド・クオンをどう見る」

 師は、邪教に手を染めた大司祭ではなく、あの巨大で強力な竜の話をする。


「彼女は私を妹と言っていました。突飛な話ですが、私には、それを否定する手段がないのです」


 カミーユは師に尋ねる。

「御師様。私は、あの恐ろしい竜の血脈なのでしょうか」


 師の気配が漂う。まるで答えを選んでいるようだった。

「カミーユよ。ワシがそなたを初めて見たとき、竜が人に変じていると勘違いした。そうでなければその莫大な魔力の説明が付かぬ。されど、そなたは竜が化けた存在ではない」


「では、私は何者なのでしょう。いずれ人々に害なす存在となってしまうのでしょうか」

 カミーユは大司祭の、竜と人が混ざった醜い姿を思い出す。


 師ゴダールは答える。

「ことはそう簡単ではないぞ、カミーユ。安心せよ。そなたが悪に染まるなど万にひとつもない。最初の話に戻る。シド・クオンをどう見るか」


 カミーユは思い出し、答える。

「強大な自尊心、自負、それらを裏打ちする実力を感じました。今の私では、勝てないかもしれません。いえ、勝てないでしょう」


 カミーユは、決して負けられぬ身でありつつも、自らが劣ることを認めた。


「で、あるか。カミーユよ。シド・クオンとは再び相対することもあろう。心を強く持つのじゃ。そなたはカミーユ。そのものである。他の何者でもない」


 そう言うと、師ゴダールの気配は消えた。


 カミーユは瞑想を終え立ち上がる。

 女たちは昨夜体力を使い果たしたのか、まだぐっすりと寝ている。


 カミーユは一人中庭に出て、泉から桶で水を汲み、頭からそれを被った。

 まだ肌寒い春ではあったが、昨夜の熱の余韻を振り払うようで、心地が良かった。


「流石は竜退治の英雄さま。体力も化け物ですのね」

 いつのまにか中庭に現れた女主人アナベルがカミーユに声をかける。


「カミーユ卿。あなたの宿から荷物を引き上げておきました。馬も裏に連れて来ています。王城へ行くのでしょう。支度いたしましょう」


 カミーユはアナベルに連れられ、化粧室で彼女らに身を任せた。


 かくして、礼服を見に纏い、男装の麗人となったカミーユは、王城へ赴いた。


 衛兵に名を告げ、あちらの応対を待つ。


 十分も待たぬ間に、典雅な服を纏った家来たちが現れ、カミーユを迎え入れた。

 カミーユは、腰に佩いた魔剣星影に手をかけたまま、王城の中を進んで行った。


 そのまますぐに謁見の間に通され、玉座には王が座っていた。

 かの方が神王カルナス陛下であろう。


 カミーユは謁見の間の中央に進み出て、立礼する。

「ベラルーン王国、カミーユ・ロラン伯爵です。陛下、お目にかかり光栄です」


 神王カルナスは三十を超えたほどの年齢の、屈強な印象を与える男だった。


「挨拶は省略する。よく来た。ロラン伯爵。昨夜の活躍見事であった。余は喜ぶぞ」

 神王カルナスは上機嫌であった。


 カミーユは顔を上げ、声を掛ける。

「陛下。事の次第を私からお話したほうがよろしいでしょうか」


「いらぬ。いらぬよ。竜共を蹴散らし、大司祭を討ってくれた。余は満足しておる」

 神王カルナスは笑顔でカミーユに向かう。


 カミーユは、どうやらこの王の意に沿うことをしたようだった。


「さて、他国の貴族に褒美というのもおかしな話よな。よって、手土産を遣わす。なんでも申せ」


 カミーユは頭を垂れて言葉を発する。

「通行の許可と、ワゴンを一組いただきたく存じます」


 神王カルナスは以外な顔をする。

「それだけか。もっとこう、なにか無いのか」


 カミーユは答える。

「先程のものがいただけましたら、光栄の極みです」


「そうか。ロラン伯爵の人となりはそのようなものであるか。良くわかった」

 神王カルナスは納得する。


「ロラン伯爵よ。次の大司祭はもう立てぬ。司祭たちに上も下もない。代表者として任期付きの司祭を置くこととする」


 カルナスは唐突にカミーユに話しかける。カミーユは黙してそれを聞く。


「余はもとより大司祭のあり様そのものに疑問を持っておった。神の名のもとに専横を繰り返し、国政を乱すことこの上ない。果ては邪教を信奉しよる。まったく百害あって一利なしだ」


 神王カルナスは頭を振ってカミーユを見つめる。


「ロラン伯爵。そなた、国に帰れば、国王になるというではないか。そなたとはこれからも良き関係を築きたいものだ」


 カミーユは答える。

「王位に着かれるのはアナスタシア王女殿下です。私はその妻に過ぎません」


 神王カルナスは気軽に喋る。

「大した違いはないだろう。重ねていう。これからもよろしく頼む。ロラン伯爵」


 こうして、カミーユと神王カルナスの会見は終わった。

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