騎士と大司祭。邪教の終焉、断罪の一閃。貪欲なる女王に魂を売った男の最期
カミーユが破壊した巨大な地下空間の竜の巣。
そこで、カミーユは何者かの攻撃を受けていた。
カミーユは首筋から一筋の血を流し、周囲を警戒する。
先ほどは殺気を感じ、身を逸らしたが、攻撃の方向を見定めることは出来なかった。
カミーユは次の攻撃を待つ。すると、地底湖の水面がわずかに動いた。
カミーユは魔剣星影を抜刀し、その高速で飛来する殺気を切り裂いた。
それは両断され、カミーユの左右に散った。散ったものは、高速で射出された水の刃であった。
カミーユは自らの身体に流れる竜の血から魔力を汲み上げ、地底湖に向かって、空間を跳躍する。
瞬間移動したカミーユは、半ば水の中に沈み、水の刃を射出したものへ、魔剣を突き立てる。
手応えがあり、剣で貫いたものはうごきをとめる。カミーユはそれを片手で掴み、今度は地面に向かって空間を跳躍した。
地面に降り立ったカミーユの手には、司祭服。それも大司祭の服を身に纏ったものがいた。
しかし、その頭部は竜のそれと酷似しており、人の体にそれが付いた姿は、醜悪であった。
「あなたは大司祭様ですか。それとも、その服を纏った別の存在ですか」
カミーユに掴まれた存在は答える。
「私が大司祭に違いない。違いないはずなのだ」
それは掠れており、穴の空いた風船のような声だった。
カミーユは詰問する。
「あなたは神を捨て、邪悪な信仰に手を染めた。相違ありませんね」
竜もどきの大司祭は答える。
「貪欲の女王こそ至高の神そのものなのだ。今までの神など知ったことか」
大司祭は掠れた声を張る。
カミーユは慎重に尋ねる。
「わかりました。貪欲の女王というものは、あなた方の神なのですか」
大司祭らしきものは、嬉々として答える。
「そうだ。我らの神だ。そして、竜を統べる神でも在らせられる」
カミーユは師、ゴダールの言葉を思い出す。竜も神を信じるという。
「あなたが神を捨て、邪教に身を堕としたことはわかりました。今、ここで私に切られるか、審問の場で抗命するか、選びなさい」
大司祭は掠れた声で嗤う。
「抗命などと、今ここで貴様を殺せば良いこと」
大司祭は竜のような爪をカミーユの心臓に突き立てる。それは金属質の高音を鳴らすだけで、カミーユの身体に傷がつくことはなかった。
カミーユは大司祭を掴んだ手を離し、魔剣星影を一閃する。
大司祭は左肩から腰にかけて斜めに斬られ二つに分かれる。
無論、その心臓も断たれていた。
すると、大司祭の体は黒い霧となって消えていった。
カミーユが以前戦った、邪術師カーペリオンと同じ最後であった。
カミーユの師、ゴダール曰く、悪魔に魂を売ったものは、最後黒い霧になって消えると言う。
この大司祭も、貪欲の女王という名の悪魔に魂を売っていたに違いない。
カミーユはそう理解した。
カミーユは周囲の司祭たちに声を発する。
「大司祭は私、騎士カミーユ・ロランが討ちました。あなた方は従うなら良し。そうでなければ、ことごとくを討ち取ります」
カミーユのその言葉に抗うものはいなかった。
カミーユは続いて、竜の巫女たちに声をかける。
「あなた方は、カリンの友人ですか。意にそわぬ抑圧によりここで働かされていたのであれば、私が解放いたします。ついて来てください」
カミーユは司祭たちと竜の巫女を連れ、螺旋階段を登る。途中、ユマとカリンも合流し、大所帯となる。
聖堂に出たカミーユは、天井を見つめる。
かの竜、シド・クオンも、貪欲の女王の手先なのであろうか。
カミーユは緊張に身を震わせ、ついて来たものたちに振り返る。
「司祭たち、神の信仰に戻ることを誓うのであればこれを赦します。如何ですか」
司祭たちは皆、膝を屈し、神とカミーユに頭を垂れた。
「では、あなた方はとらえてきた人々を開放し、家に戻してください」
カミーユは聖堂はこれで良しと考え、竜の巫女たちに向き合う。
「あなた方は帰るところはありますか。送って差し上げます」
カミーユの言に、カリンが答える。
「皆、村から召し上げられた娘たちです。もはや、村に戻ることもできません」
他の巫女たちも頷いた。
カミーユはなるほどと思う。
「ならば、ベラルーン王国の私の屋敷に来ませんか。慣れるまでは休み、その後家のことを手伝ってもらえると、助かります」
竜の巫女たちはその提案に同意する。
このような経緯で、カミーユは巫女たちを連れて帰ることにした。
移動には馬車が必要になるだろう。神王国の王とも話をしなければならない。
カミーユは、それはともかく明日のこととし、ユマとカリン、竜の巫女たちを連れて神の家、娼館へと帰還する。
こうして、カミーユは、大司祭を討ち倒し、大聖堂の地下の竜の巣を壊滅させた。




