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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
爆速出世街道!蛮族を屠り、陰謀を砕き、巨人の王に認められるまで
7/80

令嬢の恋。四六時中、物理的に密着! 怪力娘を巡る愛の渋滞、ここから本番

 改めて確認したが、館には、レディ・ロザリアの他に生き残りはいなかった。


 騎士カミーユは、衛兵と使用人たち、そして盗賊たちの遺体を集め、炎の魔法で荼毘に付す。


 表で待っていた従者フローラにレディ・ロザリアを紹介すると、フローラは大慌てで馬から降り、平伏した。


「これからよろしくお願いしますね。フローラ」

 ロザリアは微笑むと、フローラに立つように促した。


「従者フローラ。馬屋に行き、馬車と馬を連れてきなさい。私たちの馬は私が面倒を見ます」

「はい。かしこまりました。騎士カミーユ」

 フローラは緊張した様子で、館の裏へと歩いて行った。


 しばらくすると、立派な二頭立ての馬車が現れた。馬車には侯爵家の紋章が描かれている。御者台にはフローラが座っていた。


「レディ。どうか御身を馬車へ。私は並走し、周囲を警戒いたします」

 カミーユに促され、ロザリアは馬車に乗り込む。


「フローラ。馬車で街道へ出て、王都へ向かいなさい」

 カミーユは愛馬にまたがり、フローラの馬と、縄に繋いだ盗賊を連れ、常足で王都へ向けて出立した。


 今からなら、陽の高いうちに王都に辿り着けるだろう。

 凄惨な事件の後であったが、早春の爽やかな風が吹き抜けていった。


 街道に戻ったカミーユは、馬車に気を配りながら道を行く。

 王都に近づくにつれ、人通りが増え、罪人を連れたカミーユが立派な貴族の馬車を伴っている様子は、衆目を集めた。


 人々は、騎士カミーユの凛々しく、堂々とした姿を見て、何か捕物があったのだろう。と想像し、安心した様子で隣を歩いてゆく。


 カミーユは自身に手を振る子供に応えて手を振りかえす。街道には王都の賑やかさが漏れてきていた。


 そんな折、カミーユに対して呼ばわる声が聞こえる。


「そこの馬上の者。連れている者は何者か。また、何故侯爵家の馬車を先導する。中にどなたが乗っているのか」

 衛兵の声である。二人組の衛兵が、カミーユを呼び止めたのだ。


「私はナイト・カミーユ・オヴ・クリン。ハイアン侯の御息女、レディ・ロザリアを先導しています。そして繋がれたこの者はレディ・ロザリアに狼藉をはたらいた者です。王都のハイアン侯の邸宅まで参ろうと思います」


 衛兵は、カミーユの堂々とした振る舞いに理解を示した。そして、衛兵たちは館までの同行を申し出る。


 カミーユはそれを受け入れ、人数の増えた一行は、市門をくぐり、王都へ入った。


 市門を入ってすぐは、人の雑多な商区であり、馬車の通路も狭まる。


 カミーユが王都に来るのは二回目のことだ。以前は幼く、訳も分からず、周囲を見渡す余裕もなかった。


 しかし、今では分かる。


 この王都モスカウは、今まさに繁栄を享受しており、その豊かさは北の寒村とは比べ物にならないものであると。


 狭い街路に人が溢れ、馬も馬車も簡単には通れない。

 幸い、衛兵たちが道を開けてくれて、馬車は安全に市街地を通り抜けることができた。


 カミーユたち一行は、市街地を抜け、緩い上り坂を登ってゆく。左右の建物からは喧騒が薄まり、建物の大きさは段々と大きくなっていった。

 王都は広く、時は夕刻になってきていた。


 丘の上、王宮まであと僅かというところで、衛兵が足を止める。


「ハイアン侯のお屋敷だ。ここで良いな」

 カミーユは勤勉な兵たちを見下ろす。

「はい。案内、本当にありがとうございました」

 カミーユは、馬を降り、屋敷の門に正対する。


 即座に門が開き、中から家来が姿を見せた。


「突然の来訪、申し訳ありません。ナイト・カミーユ・オヴ・クリンと申します。ご令嬢であるレディ・ロザリアが危難に逢われていたので、お助けし、お連れいたしました」


 使用人は値踏みするようにカミーユを見やる。


「確かに我が家の家紋の入った馬車ですな。ロザリア様は中にいらっしゃるか」

「はい。中にいらっしゃいます」

 カミーユが頷くと、屋敷から出てきた侯爵家の私兵たちが、馬車の扉を開け、ロザリアを担ぎ出した。


 その乱暴な様子に、カミーユの目は険しくなる。


「カミーユ卿。どうか一緒に」

 ロザリアはカミーユに手を伸ばす。

 カミーユは、ロザリアの手を力強く握る。


「私、騎士カミーユは、ロザリア様の剣となり盾となると、ロザリア様に誓いました。失礼ながら、お屋敷に入らせていただきます」


 カミーユはそういうと、館の私兵からロザリアを奪い取り、横抱きにだき上げた。


 侯爵の私兵たちは、カミーユの行いに驚き激昂するが、カミーユが一瞥すると、皆大人しくなった。


「それと、そこの者はレディ・ロザリアのいらっしゃる館を襲撃した主犯です。お屋敷でお取り調べが必要かと思い、連れて参りました。どうぞ、ご自由になさってください」

 カミーユは、盗賊のリーダーを侯爵家の私兵に引き渡した。


「レディ・ロザリア、私の従者であるフローラも連れて行ってもよろしいでしょうか」

 カミーユは顔を寄せ、貴婦人に向かって話しかけた。


「ええ、構いません。カミーユ卿。部屋を用意させます」

 ロザリアは、カミーユに抱き上げられ、顔を赤らめていた。


「ありがとうございます。あと、馬屋も貸していただけますか。私の愛馬たちも休ませたいのです」

 ロザリアは頷くと、使用人に馬屋までの案内を命じた。


「フローラ、あなたは馬をお願いします。この子達にも休養が必要です」

 カミーユは、愛馬たちを見て従者に告げた。


「わかりました。カミーユ様。レディ・ロザリアを、よろしく、お願いします」

 フローラは後ろ髪を引かれながら、馬屋へ向かった。


「レディ。お部屋までの道を教えて下さい」

 カミーユは優しく囁く。


「はい。こちらです。よろしくお願いします。カミーユ卿」

 ロザリアはカミーユに抱かれたまま、指を指す。


 使用人たちは、カミーユとロザリアを遠巻きにして立ちすくんでいる。

 二人の親しい様子に、声をかける機会を失っているのだ。


 カミーユとロザリアは、ロザリアの部屋の前にたどり着く。

 カミーユは片手でロザリアを抱いたまま、もう一方の手でノブを回す。


 ロザリアは、カミーユが自身を片手で軽く抱く様子に驚き、更に深くカミーユに抱きついた。

「レディ・ロザリア。お部屋に到着いたしました」


 ロザリアは、館がもっと広ければよかったのにと思う。


 カミーユは部屋の中に入る。

 見渡すと、豪華なベッドと書き物用のデスク、一人がけのソファとテーブルがあるシンプルな部屋だった。奥の扉は侍女の詰める部屋であろうか。


「レディ。お部屋につきました。ソファでよろしいですか」

「嫌。このままで、あなたが座って」

 ロザリアは、部屋に戻って緊張が解けたのか、くだけた口調になる。


 カミーユは微笑み、ロザリアを抱いたままソファに座る。

「これでよろしいでしょうか。レディ」


 ロザリアはカミーユの首に抱きつく。

「ロザリアと呼んで、カミーユ」


「わかりました。ロザリア様」

 カミーユも改めて、しっかりとロザリアを抱きしめる。


「カミーユ。私が襲われたということは、この館には裏切り者がいるわ」

 ロザリアは首筋に抱きついたまま、小声でささやく。

「そのようなお話。私にされてもよろしいのでしょうか」


 ロザリアはカミーユの瞳を見つめる。近くによると、彼女の長い睫毛に気がついた。

「あなたの人柄は、見ていればわかるわ。私を守ってくれるのでしょう」

 ロザリアは悪戯な視線でカミーユを見つめる。

「はい。お守りいたします。ロザリア様」


 カミーユはロザリアが落ち着くまで抱きしめ続けた。

「ロザリア様。お命を狙われるほどのこと、お心あたりはございますか」


 ロザリアは首を振る。


「私にはお兄様もお姉様も大勢いるし、跡目争いに関係しているとは思えないわ。けれども、お母様は末娘の私を気に入ってくださっているから、お母様に対する私怨や脅しかもしれないわね」


 カミーユは尋ねた。

「ハイアン侯爵は、今は何処に」

「お母様は今は領地にいらっしゃるわ。ただ、騎士に対する褒賞の式典のため、まもなく王都にいらっしゃると聞いているわ」


 カミーユは、褒賞と聞き、もしや自らの褒賞の話であろうかと思う。

「ロザリア様。私は王宮へゆかねばなりません。私は王宮にて褒賞を賜るために、王都へ参ったのです」

「まあ、それでしたら、褒賞のお話は、カミーユ卿の事かもしれませんね。何か武勲を挙げられたのですか」


 カミーユは、思索する。

「そうですね。私の領地は北方の辺境にございます。長年、蛮族と争っておりました。その蛮族の反乱を鎮圧したことが、賞されたのかもしれません」

「そうでしたのね。カミーユ卿はとってもお強いのね」


 カミーユは遠慮がちに微笑む。

「辺境の蛮族や魔物を倒したことがある程度で、王都の騎士様たちとは比ぶべくもありません」


 カミーユは、正直に答えた。実際、辺境で戦った経験があるだけで、戦に招集されたことは未だにないのだ。客観的な自らの強さなど、わかろうはずがなかった。


「そうなのね。でも、私はカミーユ卿、あなたが気に入りました。お母様がいらっしゃるまで、この屋敷にいてくれますか」


 カミーユは微笑んで、この少女のわがままな願いに答える。

「王宮までのご使者をたてていただけますか。私の到着と、居場所を王宮へ知らせねばなりません。そして、王宮へ招聘されるまでは、ここにいて貴女をお守りします」


 カミーユの言葉を聞き、ロザリアは喜びを爆発させた。

「そうなのね。じゃあ、それまでずっと一緒よ。眠るときも一緒にいてね。カミーユ」


 こうして、カミーユはロザリアの護衛として、侯爵家の館に逗留することとなった。


 それは、レディ・ロザリアとの甘い生活の始まりであった。

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