母と娘。相談相手は妻エトナ。ロザリアとサラの熱い愛
木の葉が赤く染まる秋の終わり頃。
エトナ姫はベラルーン王国の王都モスカウ。
そこにあるカミーユ・ロラン伯爵の邸宅に到着した。
エトナ姫は立派な邸宅に驚く。以前、カミーユが男爵であった時の邸宅と比べて、何倍も大きい。
何より天井や扉が大きく作られており、エトナ姫でも不自由なく館に出入りできた。
もちろん、エトナ姫の寝室も大きくできており、不自由はなかった。
「ありがとう。カミーユ。私のために尽くしてくれて」
カミーユは微笑む。エトナの笑顔が嬉しかった。
「エトナ。あなたは私の妻です。不自由はさせません。なんでもおっしゃってください。それと、簡単な巨人語、お国の言葉を覚えさせた侍女を用意いたしました。その者に何なりとお命じください」
エトナはカミーユの心配りに感謝する。
「それと、私は昧者ゆえ、巨人族、ガルヘルムの方々の風習についてよく知りませんでした。以前の当家御逗留の際、お食事など、苦労させてしまったことと思います。申し訳ありません」
カミーユは頭を下げる。
エトナはカミーユの手を取った。
「何もかもありがとう。カミーユ。私に出来る事が思いつきません」
カミーユはエトナの腰を抱く。
「あなたの言葉こそ、私に取って何よりの喜びです。これからも、どうぞよろしくお願いいたします」
そうして、エトナ姫は妻として、カミーユ・ロラン伯爵の邸宅に入った。
そんなカミーユとエトナが新婚生活を送る中、一つの問題ごとが起きた。
カミーユが婚約している侯爵令嬢ロザリアと、その母サラ・ハイアン侯爵が仲違いをしていると言うのだ。
カミーユは、まずはロザリアを邸宅に呼び、話を聞いた。場所はいつものサンルームである。
「お母様とカミーユのことは良いの。二人とも大人だもの。色々あって当然だわ。でも、私は、カミーユ。あなたと結婚するの。当然、私のことを優先してくれるわよね」
カミーユは微笑む。ロザリアの子供らしい主張が、輝かしく思えた。
カミーユ自身は、この様な子供時代を持つ事ができなかったからだ。
「わかりました。ロザリア。ハイアン侯爵には私から話をしておきます」
カミーユはロザリアの話に理解を示し、微笑む。その様はまさに雅であった。
「されど、ハイアン侯爵とは、政務のこと、財務のことなど、お仕事の時間を作らねばなりません。そのことはお許しください」
カミーユは頭を下げる。
その姿は凛々しく、この様な時でさえ、ロザリアの心をときめかせた。
カミーユは、少し時を置いて、サラ・ハイアン侯爵の邸宅へ向かう。
「ロザリアが迷惑かけるわね」
サラがカミーユに詫びる。
「いえ、頼って頂きありがたく思っています。それよりも。サラ。あなたの負担にはなっていませんか」
カミーユはサラを案じる。
「大丈夫よ。あのくらいの年の子にはよくあることだわ。それより、今日は泊まってゆくのでしょう」
サラは妖艶な笑みを浮かべる。
「いえ、サラ。今日は申し訳ございません。このお屋敷にはロザリアもいらっしゃいます。今は彼女に心配をかけないほうが良いでしょう」
サラはつまらなそうに呟く。
「わかっているわ。言ってみただけよ」
その話はここで打ち切りとなり、カミーユはサラに新領地について相談し、先程言ったとおり、その日は自らの屋敷へ戻ることとする。
執務室の扉を開けると、そこにはロザリアが立っていた。偶然通りかかった様子ではなかった。
「ロザリア。いけませんよ」
カミーユは優しく嗜める。
ロザリアはばつが悪そうに答える。
「私、気がついたらここに居て。悪かったわ。カミーユ」
カミーユは微笑む。
「私はロザリアに会えて嬉しく思います。けれども、次からはお部屋にお呼びください。隠れての行動は、皆が心配します」
ロザリアは、カミーユの優しさに触れ、元気を取り戻す。
「そうね。次からは使いのものをよこすわ。でも、今日も少し、私の部屋によっていって」
カミーユは頷く。
「お誘いありがとうございます。今夜の政務がたまっておりますので、少しだけ」
カミーユはロザリアをエスコートし、彼女の部屋へ向かった。
「そのようなことがあったのです」
自宅へ戻り、妻エトナと抱き合った後、カミーユは、今日のことを話す。
「親子というのも大変ですのね。一緒にカミーユの寝所へ来ればよいのに」
エトナは思ったよりも大胆なことを口にする。
「それは。エトナはそれでよいのですか」
カミーユはエトナの首を撫でる。寝台の上では、カミーユとエトナの身長差はそれほど気にはならない。
「カミーユ。あなたを誰か一人が縛る。それは私も望むことはありません。カミーユ。あなたは、勇者なのですから」
カミーユは、エトナの中の勇者の定義がわからなくなった。
けれども、エトナが心労を感じていないならば、何よりのことであった。
「エトナ、ありがとうございます」
カミーユはエトナの身体に頭をうずめた。
このように、カミーユは、サラとロザリアについては、なるようになろう。と考えた。




