ロザリアの部屋。公爵邸でのお家デート。「私のロザリア」という初めての呼び名
カミーユの屋敷が建ってから二週間。
内装が整えられ、新たな使用人も雇い入れた。
貴族が幾つも潰れたため、優秀な使用人はすぐに見つかった。
もちろん、彼らの経歴はサラ・ハイアン侯爵の命により、全て詳細に調べ上げられている。
家具と掃除が行き届き、屋敷はその生命を吹き込まれたようだった。
そんなカミーユの新たな邸宅に、一番最初に招かれたのはロザリア・ハイアン侯爵令嬢である。
「ロザリア様。お誘いが遅れ、申し訳ございません。どうぞ当家にて、ゆっくりとお過ごしください」
ロザリアは、自身の婚約者、カミーユ・ロラン伯爵に出迎えられ、上機嫌であった。
「カミーユ。私とあなたは婚約者なのよ。様は付けなくても良いわ」
ロザリアは余裕の態度でカミーユに手を取らせる。
「光栄です。私のロザリア。さあ、こちらへ」
ロザリアは赤面する。私のロザリア。凛々しいカミーユから発せられた言葉は、ロザリアを夢中にさせた。
ロザリアが案内されたのは、巨大なサンルームだった。
今は秋、外は寒さが身にしみるが、そこは陽の光で温められている。
ロザリアはカミーユにエスコートされ、椅子に座る。その椅子も瀟洒で、カミーユの人柄によく似合った。
ロザリアは見渡す。
サンルームの中には南方の植物が飾られ、様々な花々が咲き誇っている。
見上げると、木々には見たこともない大きなフルーツまで実っていた。
それらは、ロザリアの好奇心を刺激する。
「カミーユ。あの植物は何。あの実は食べられるのかしら」
ロザリアは高い木を指差す。その頂点付近には、木の葉とその実が生っていた。
「あれは南方の瓜です。中は甘く黄色い果肉がございます。我が師ゴダールからの贈り物の一つです。お食べになりますか」
ロザリアは躊躇った。サンルームに入って最初の話が食べ物の話なんて、はしたないだろうか。
もっと、あちらの花の話や、ここから見える庭の木の花の話をしたほうが良かったのではないかと。
「私も少しお腹が減りました。失礼いたしますね」
カミーユは跳躍し、樹上の実を一つとってくる。
そして、侍女に実を預け、飾り切りをさせる。
テーブルの上に、可憐な果実の花が咲いた。
「さあ、一緒にいただきましょう。ロザリア」
ロザリアはカミーユと共に、甘い果実を楽しんだ。
サンルームでくつろいだ後、カミーユはロザリアをある部屋に招待した。
中は、上品な調度品が置かれた淑女のための寝室であった。
寝台の周りには、フリルの装飾がなされており、可愛らしさも添えられていた。
暖炉には火が炊かれ、室内の空気を温めている。
さらに、部屋の中には観葉植物も置かれており、赤い花と緑の葉が部屋を彩っていた。
奥には扉があり、侍女の控えの部屋につながっているようだった。
「ロザリア、ここはあなたの部屋です。ご要望があれば、何でもおっしゃってください」
ロザリアは目を輝かせている。ここでカミーユとの生活が始まるのだ。
「そうね。ソファはもう少し大きい方が良いわ。私とあなたが座るのだから、余裕がほしいの」
ロザリアはカミーユとの生活を考え、心が踊った。
「絨毯も、もう少し毛足の長いほうが好みだわ。カミーユ。笑わないでね。私、部屋では素足で過ごしたいと思っていたの。変かしら」
ロザリアはカミーユの顔色をうかがう。
「いいえ、ロザリア。好みを教えてくださってありがとうございます。この部屋は素足で過ごせるようにいたしましょう」
カミーユは侍女たちを呼び、そのように指示した。
ロザリアはその日、日帰りすることになっていた。
親であるサラに認められ、正式に婚約した今、王都ではそれなりの節度が求められた。
無論、ロザリアは駄々をこねる。
「私たち、婚約したのよ。それなのに一緒にいられないなんておかしいわ」
カミーユは苦笑し、ロザリアを抱きしめた。
「ロザリア。婚姻の日はすぐにやってきます。私もその日が待ち遠しいです。あなたも同じ気持ちでいてくれますか」
そう言われれば、ロザリアも引き下がるより他になかった。
「わかったわ。カミーユ。私も楽しみにしてる」
ロザリアは渋々了承し、帰りの馬車に乗り込んだ。
このように、カミーユの新たな邸宅は、ロザリアに気に入られた。




