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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
戦乱の末、公爵叙勲と女王との婚姻。最強の怪力騎士、ついに国の頂へ
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カミーユの恋愛。愛の大渋滞。ロザリアの罵倒さえも笑顔で受け入れる。理想の騎士

 カミーユ。カミーユ・ロランは可愛らしいフリルの付いた枕の上に頭を乗せていた。


 カミーユの左腕には、ロザリアの愛らしい頭が乗っている。

 夏の日差しから最も離れたこの時分は、この季節でも少し寒さを感じさせた。


 カミーユは、毛布をロザリアに掛け直すと、寝台を抜け出し、床で座禅を組んだ。


 日課の瞑想を行うのだ。瞑想を行うとすぐ、カミーユの隣に、師、ゴダールの気配が現れた。


「カミーユよ。竜との戦い見事であった。あれはまことの竜、真竜であり、年は若くとも、恐ろしい魔力を秘めておった」


「御師様。真竜はこれほど頻繁に現れるものなのでしょうか。少なくとも、ベラルーン王国では見られていないようですが」


「カミーユよ。竜について、怪しげな企みがあるようじゃ。それは帝国の中かも知れぬし、外やも知れぬ。重々気をつけるのじゃぞ」


「はい。御師様。ところで、帝都にて、私が打ち倒した魔法使いの体が黒い霧となって消えたことがありました。何かお心あたりはありますか」


 カミーユは、師、ゴダールからの返事を待つ。


「カミーユよ。それは、悪魔に心を捧げた者の末路であろう。死する時、黒い霧となるは悪魔の信仰の象徴じゃ。悪魔の信仰と竜。それらが偶然とは思えぬ。カミーユよ。帝国にはくれぐれも気をつけよ」


 そう言うと、師ゴダールの気配は消えた。


 カミーユは瞑想を終える。


 悪魔の信仰。

 カミーユが信じる神や、巨人たちの大樹への信仰とも違う、邪な信仰があるということだろうか。


 カミーユは登りつつある陽の光を見つめ、立ち上がった。


 朝食の席から、ロザリアの様子は明らかに変わっていた。カミーユの方を見たかと思うと目を逸らし、カミーユが見つめると、また目を逸らした。


 カミーユはそんな様子のロザリアを微笑ましく思う。

「ロザリア様。王都よりハイアン侯爵がお戻りになるまで、一週間以上かかろうかと思います。その間、館への逗留をお許し願えませんか」


 カミーユは、厚かましくも自ら願い出た。ロザリアの様子が落ち着かず、助け舟を出した形となる。

「ええ、構わないわカミーユ。ユマも、一緒に館に居てください」


 午前中、カミーユは瞑想をして過ごし、午後、ロザリアのお茶会に誘われた。


「よくきたわね。カミーユ。そこに、座りなさいよ」

 ロザリアの顔はまだ紅い。昨夜のことを意識してしまっているのだろう。


 カミーユは指し示された席ではなく、ロザリアの隣に座る。そして、失礼。と、ロザリアを抱きかかえる。


「ロザリア様。こちらを向いてください。私の顔を見るのはお嫌ですか」

 戯れに、少し意地悪をしてしまう。


「そ、そんな事あるわけ無いじゃない。私は、カミーユの顔。好きよ」

 ロザリアは勇気を振り絞ってカミーユに顔を向ける。カミーユは唇が触れるほどの距離で囁く。


「私もロザリア様の顔が大好きです。さあ、そのお顔を私にもっとよく見せてください」


 ロザリアはカミーユの顔を見つめる。カミーユの言葉には魔法でもかかっているのかも知れない。

 ロザリアは紅く熱をもった頭でそう思った。


 ロザリアはそのまま、カミーユにお菓子を食べさせてもらう。騎士と姫の甘い時間が流れる。


 しかし、ロザリアに流れるハイアンの血が、その時間を終わらせた。


「カミーユ。私の他に、カミーユの想い人は何人いるの」

 ロザリアは、カミーユを見つめる。逃す気はなかった。


「はい。ロザリア様以外には、五名の方に思いを寄せております」


 サラ・ハイアン侯爵、巨人族のエトナ姫、従者のフローラ、騎士クラリス、そして、王女アナスタシア殿下。


 ロザリアはカミーユに問う。

「ねえ、カミーユ。あなた、そのことは皆に隠しているのかしら」


 カミーユは朗らかな笑顔で答える。

「いえ、そのようなことは一切ございません」

 その台詞を放つ顔すら、ロザリアの心を魅了するのだから、始末に負えない。


「カミーユ。そのうちの一人は、お母様なのかしら」

 ロザリアは半ば確信を持って尋ねる。


「はい。私はサラ・ハイアン侯爵閣下をお慕いしております」

 ロザリアは真面目な表情をして話す。


「カミーユ。私、とても複雑な気持ちだわ。でも、約束してカミーユ。私のことをずっと思うって」


 カミーユは答える。

「はい。ロザリア様。私はあなたのことを思い続けます」


 ロザリアは満足そうに頷く。

「なら、良いわ。ねえ、カミーユ。カミーユは伯爵になったのだから、私と結婚しましょうよ。カミーユはお母様の派閥にいるのでしょう。私はハイアン家の末娘だし、丁度良いわよね」


 カミーユは微笑み答える。

「光栄なお話。まことにありがとうございます。ハイアン侯爵閣下のお許しが得られれば、是非」


 ロザリアは笑顔になる。

「お母様は、きっとそう考えていらっしゃるわよ。ところで」

 ロザリアはカミーユの瞳を見つめる。


「カミーユ。あなた、結婚とか、していないわよね」


 カミーユは笑顔で答える。

「はい。結婚はしておりません。ですが、巨人族のエトナ姫と婚約させていただいております」


 ロザリアは頭を押さえる。


「ねえ。カミーユ。私、今から下品な言葉を使うわよ」


 ロザリアは大きく息を吸い込んだ。


「馬鹿。カミーユの馬鹿。どうして私が一番じゃないのよ」


 カミーユは微笑み、答える。

「御心に添えず申し訳ありません。ハイアン侯爵閣下へは、ロザリア様との婚約の件、私からもお願いしてみます」


 こうして、カミーユ・ロランとロザリア・ハイアンは、二人だけの結婚の約束を交わした。

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