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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
戦乱の末、公爵叙勲と女王との婚姻。最強の怪力騎士、ついに国の頂へ
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帝国の竜騎士。尖塔を支えるカミーユの怪力。竜騎士を粉砕せし、驚愕の「塔の打撃」

 竜と騎士。騎士を背に乗せた竜が空を飛んでいた。


 騎士は、長い槍と手綱を持ち、黒鉄でできた見事な甲冑を身にまとっている。その表情は兜の奥にあり、見通せない。


 竜は全身を黒い鱗で覆っていた。

 その目は爛々と金色に光り、カミーユたちをみつめている。


 竜は鞍を身に着け、騎士の騎乗を助けていた。


 カミーユはユマに向かって叫ぶ。

「ユマ。これより先は命のやり取りとなります。あなたはレディ・ロザリアを連れて、王宮の外へ逃げてください」


 ユマは驚き答える。

「おい、逃げろって、どうやって」


 カミーユはその問いには答えず、集中する。


 カミーユは自らの身体に流れる竜の血から魔力を汲み上げ、全身に行き渡らせる。足の筋肉が隆起し、体をしっかりと支える。


 肩と腕の筋肉が隆起し、次の一撃に備えた。


 そして、カミーユは猛烈な右拳の一撃を、塔の壁面に叩きつけた。

 まるで地震があったように塔が揺れる。


 そして、塔の壁面には、人が一人通れるような大きな穴が空いていた。塔の中には螺旋階段が見えた。


「レディ・ロザリア。私の部下ユマとともに、ここよりお逃げください」

 カミーユは優しくロザリアに囁く。


 ロザリアは頭を振る。

「嫌よ。カミーユと別れたくないわ」

 ロザリアはカミーユの首筋にしがみつく。


「レディ。お願いです。またすぐに会えます。約束いたします」

 カミーユはロザリアに口付けする。ロザリアは顔を赤らめ、大人しく塔の中の螺旋階段へ下ろされた。


「ユマ。頼みました」

 カミーユはロザリアをユマに託す。


「わかったよカミーユ。後で特別報奨を貰うぞ。絶対だからな」

 ユマはロザリアを連れて、螺旋階段を下りてゆく。


 穴の空いた塔にの壁に立ち、カミーユは振り返る。

「お待ちいただきありがとうございます。私はベラルーン王国、カミーユ・ロラン伯爵。あなたの名は」


 竜の上の騎士は答える。

「礼には及ばぬ。青竜を倒したという貴卿の武勇。試してみたいと思ったのはこちらの都合である。我らが名は騎士アドニス。黒竜ヴァルディエ。騎士カミーユ。覚悟なされよ」


 黒竜は翼をはためかせ、カミーユに向かって突進する。


 カミーユは塔を蹴って飛び立ち、隣の塔の窓枠へ飛び移る。

 ロザリアのいる尖塔を戦場にするわけにはいかなかった。


 黒竜は即座に切り返し、壁面にいるカミーユに突進する。

 騎上の騎士アドニスは、その長い槍でカミーユに突きかかる。

 カミーユは抜刀が間に合わず、左腕で刺突を払いのける。


 通常の刃であれば、カミーユの皮膚を傷つけることはないはずだった。


 しかし、槍の穂先はカミーユの腕を貫いた。


 カミーユは冷静に、貫かれた腕の筋肉を締め、槍が抜けるのを防ぐ。そして右手で槍を掴みとると、ぐいと力を込めて槍を振り回した。


 騎士アドニスは振り落とされぬよう、潔く槍を手放す。


 その時、竜がその口を開いた。竜の口から、氷の奔流が吐き出される。

 カミーユは塔の壁面に叩きつけられ、氷が全身を覆い、体を凍りつかせる。


 左腕から出血したカミーユの血が、塔の壁面に固着する。

 カミーユは移動できず、氷の奔流から逃れるすべがない。


 ならば、熱の魔法を。カミーユは自らの身体に流れる竜の血から魔力を汲み上げ、それを熱として、左腕に集める。


 しかし、氷の吐息の勢いが強く、溶かす先から凍りつかされ、氷を溶かせず、吐息から逃れることが出来なかった。


 カミーユは一瞬、自らの左腕を切断することも覚悟する。

 その時、妙案が閃いた。自らの血の魔力を、熱ではなく、筋力の増強にすべて充てる。


 カミーユの全身の筋肉が隆起する。腕が、肩が、胸が、背が、腰が、脚が、首が。すべての筋肉が連動し、凍りついたままの左腕に力が集まる。


 かくして左腕は動き出した。

 しかし、腕の固着は取れてはいなかった。


 カミーユは塔の窓枠に立ち、凍りついた腕のその上部、塔の中頃からその上を、持ち上げていたのだ。


 カミーユの全身がきしみ、莫大な重量を支える。


 そして、それをそのまま、竜と騎士に向かって振り下ろした。


 塔は建物である。その被害面積は大きく、竜と騎士は塔の直撃を受ける。


 石積みと瓦礫の雨により、竜の吐息は止み、騎士アドニスは鞍に固定されているためか、落下することはなく、体中から血を流して昏倒している。


 おそらく大量の瓦礫の質量により、全身の骨が砕けていることだろう。


 吐息が止んだ隙に、カミーユは自らの魔力を熱に変え、身についた氷を振り落とした。


 そして、塔という大質量を受け、朦朧としている竜に向かって跳び出す。

 空中で抜刀し、魔剣星影が煌めく。


 カミーユは右腕で魔剣を振り抜き、竜の胴体を深く切り裂く。

 その軌跡には心臓があり、それは真っ二つに斬られた。


 カミーユは向いの塔に着地し、残心する。


 竜と騎士は落下して行き、王宮の屋上に叩きつけられ、屋上を突き抜け、瓦礫の中に埋もれていった。


 カミーユはそれを見届けると、もとの尖塔、自身の空けた穴に向かって飛んだ。

 そこには小さな人影があった。


「レディ・ロザリア。逃げていただくよう、お願いしたではありませんか」


 ロザリアはカミーユに飛びついた。そして唇を重ねた。

「カミーユ。カミーユ。体は大丈夫なの」

 ロザリアは興奮した様子で、カミーユの顔を間近に見つめる。


「ロザリア様。平気です。お約束したではありませんか。あなたの前で命を捨てるようなことはいたしません」

 カミーユはロザリアの瞳を見つめる。そして、カミーユの方から口づけを交わす。


 しばしあり、ユマが声を掛ける。

「カミーユ。今は敵地だぜ、さっさとずらかろう」


 カミーユは頷き、ロザリアを抱いたまま駆け出す。途中の兵たちは、カミーユの炎の魔法で蹴散らしてゆく。


 こうして、カミーユは竜と騎士を倒し、ロザリアを救出した。

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