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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
戦乱の末、公爵叙勲と女王との婚姻。最強の怪力騎士、ついに国の頂へ
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ルナートの戦い。領都解放戦、カミーユ正義の矢。占領軍を武力で粉砕する

 ユマは後悔した。給金を二倍ではなく三倍。いや、四倍にしておけばよかった。


「ユマ。舌を噛まないように気をつけてください」


 カミーユとその愛馬は風のように走る。同乗しているユマにとっては、たまったものではなかった。

 緑あふれる夏の街道の風景が、飛ぶように後方に飛んでいく。


「気持ち悪くもならないことが気持ち悪いよ。まったく」

 ユマは、カミーユの魔力により、疲労や頭痛が取り除かれている。

 明晰な思考で、このデタラメな速度で過ぎ去る光景を見た。


「ユマ。帝都への道すがら、少しやることがあります」


 カミーユはそう言うと、街道の先にある街、ハイアン侯爵領の領都ルナートを指さした。


 日が傾き、時刻は夕暮れに近づいていた。

 ルナートは現在、ブログダン帝国の本隊によって占拠されている。


「何だよ。好きにしてくれよ」

 ユマは気疲れから、言動が普段よりも更に崩れていた。


「はい。好きにいたします」

 カミーユの声からは、昂りが感じられた。


 領都ルナートには、ブログダン帝国軍本隊、一万五千が集結していた。

 帝国軍本隊を指揮するロッテンブルグ将軍は、満足そうに兵たちを眺めた。


 まもなく、ベラルーン王国の親征軍二万七千とぶつかることになる。

 ここが此度の戦の正念場であった。


 帝国軍に呼応して反逆蜂起した、ベラルーン王国のリヒテンハイム公爵の軍は鎮圧されたようだが、王国軍の兵を分断するには十分役に立った。


 ブログダン帝国の軍は一万五千とは言え精強。対してベラルーン王国の兵は二万七千。


 しかし、その半数以上が農民兵。ロッテンブルグ将軍は戦術でどうとでも翻弄できると考えていた。



 ルナートの領主の館、つまりハイアン侯爵の館。


 そこでくつろぐロッテンブルグのもとに、兵が現れる。

「将軍閣下に申し上げます。ただいま、ルナートの市門に敵兵が近づき、これと我軍が交戦しております」


 寝耳に水の話であった。


 ベラルーン王国の親征軍がここルナートに到着するまで、優に一週間の時間があるはずだった。

「敵の数は、一騎。応射するも、これが効果なく。我軍の兵たちが次々と討ち取られています」


 何を言っているのか。

 ロッテンブルグは兵の正気を疑った。


 そんな時であった。

 激しい爆発音と地響きが鳴り響いた。


 ロッテンブルグはただちに領主の館のバルコニーに出て、音の聞こえた方向を見つめた。

 市門は破られ、燃えくずが煙を出すのが見て取れた。


 二度目の閃光が目を焼き、続いて爆発音が聞こえた。それは市壁に設けられた塔で炸裂した。まるで小さな太陽が現れたようだった。


 三度目の爆発もおきた。これもまた違う塔で炸裂し、同じく小さな太陽が出来たかのように、辺りを照らした。


「何だ。何が起こっている」

 ロッテンブルグは兵たちに言葉をぶつけた。


「わかりません。敵軍は一騎。他に何もおりませんでした」

 兵は先程と同じ情報を伝える。


「ええい、もう良い。儂がこの目で状況をたしかめ」

 将軍の体が弾け飛んだ。このバルコニーから市門は見えた。


 つまり、射線が通っていた。

 バルコニーの窓ガラスが衝撃波で割れて粉々になる。


 領主の館のバルコニー。

 そこに立派な帝国軍の鎧を着た男が居たので、カミーユはそれを射た。


 続いて、カミーユは自身に次々と射られる矢を掴み、それを自らの弓に番え、別の兵へ射返した。


 それを繰り返しているうちに、最初はカミーユに向かって雨のように振っていた矢も、やがて小雨になり、ぱったりと止んだ。


 カミーユは叫んだ。凛とした声色の中に、慈しみも込められていた。


「帝国軍の将軍に告ぐ。今ここで降伏するなら良し、命は助けましょう。そうでなければ、皆全て射抜きます。自身の命を思うならば、今ここへ出てくること」


 カミーユの視線が届く範囲の兵たちが、武器を捨て、カミーユの側に寄り、平伏した。


 カミーユは更に言葉を続ける。

「いまここに出てきたもの以外は、まずは敵として認識します。覚悟すること」


 カミーユは自身の身体に流れる竜の血から魔力を汲み上げる。自身の耳に魔力を集中させ、周囲の音を探る。そして、鎧と武具の音を立てるものに向かって、超音速の矢を放つ。


 放たれた矢は、建物の壁を貫通し、その背後に射る帝国軍兵士を射抜いた。


 カミーユは、市門のすぐ内側の広場から、これを百度ほど行った。


 カミーユは再び、声を大にして叫ぶ。


「私は、このルナートにおいて、あなたがた帝国軍の居場所が手に取るように分かります。このままいれば、あなたがたに訪れるのは無残な死のみです。もう一度いいます。今ここで降伏するならば、命は助けましょう」


 カミーユのもとに、一人の人影が歩み寄る。それは金色で彩られた見事な鎧を着ており、この人物の位の高さを感じさせた。人物は、女の声で喋った。


「帝国軍将軍アウグスタ。あなたと話をしたく参りました」


 カミーユは答える。

「王国伯爵。カミーユ・ロラン。降伏するのであれば受け入れます」


 女将軍は尋ねる。

「ロラン伯爵。我らの命は保証いただけるのですね」


 カミーユは答える。

「約束します。あなた方と兵の身の安全は保証しましょう」


 カミーユの誠実な声に、アウグスタは信頼をおいた。

「ロラン伯爵。私どもは降伏いたします。どうか、兵たちに温情を」


 カミーユは頷いた。


 こうして、カミーユの領都ルナートの奪還は終わった。


 そして、カミーユは、すぐさまロザリアを救う旅路に戻った。

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