ロザリアの行方。師ゴダールの占術。 ユマの故郷、帝都ルブダンに消えた令嬢
カミーユはサラ・ハイアン侯爵を王都モスカウへ送り届ける。
サラを安全な場所につれていく必要があった。
カミーユはサラを抱き、愛馬を襲歩で走らせる。サラの体の負担は大きいが、時間が惜しかった。
カミーユは、自らの身体に流れる竜の血から魔力を汲み上げる。そしてそれをサラと愛馬、そして自身の疲労の回復のために使い続けた。
そうして、夜が明けるころに。カミーユたちは王都モスカウへたどりついた。
王都へ着いた頃、サラは馬上でウトウトとしていた。カミーユに抱かれ、張り詰めた緊張が和らいだのかも知れない。
市門へ近づき衛兵に駆け寄る。カミーユは素早く身分を告げ、王都の市門を駆け抜ける。
そして、自宅である、ロラン伯爵邸に入った。
ここは、カミーユが男爵の爵位を得たときから使っている館であり、伯爵の館としては狭く感じる。
しかし、カミーユはこの館を離れるつもりはなかった。ここには師である大魔導師ゴダールの、秘密の部屋があるのだ。
カミーユは、行方不明のロザリアを探し出すには、師の魔法を頼るしか思いつかなかった。
愛馬を馬屋へ送り、サラを横抱きに抱え、カミーユは秘密の部屋に入った。
「御師様。おはようございます。お願いがあり、参上いたしました」
カミーユは、大魔導師である、師ゴダールへ詰め寄る。
小さなカワウソの姿をした師は、机の上からカミーユを見上げる。
「わかった。落ち着くのじゃ、カミーユ」
師、ゴダールはカミーユをたしなめた。
「そなたの願いはわかっておる。ハイアンの頼み、その娘の子を探したいのであろう」
ゴダールは、小さな瞳で、カミーユを見つめる。
「はい。そうです。ですが、何故この方をハイアン家だとわかったのでしょうか」
カミーユは尋ねた。
「わかるとも。ハイアンは魔法使いの中でも随一の名門であった。今ではそれも忘れ去られてしまったようじゃが」
サラは不思議そうに呟く。
「私の血筋が、魔法使い」
ゴダールは諭す。
「そうじゃ、だが今すぐどうという話ではない。ハイアンの娘よ。そなたの髪の毛を一本、ワシに手渡すのだ」
カミーユはサラを隣に立たせる。サラはカミーユの顔を伺う。
カミーユは頷き、促す。
サラはゴダールに、自らの髪の毛を一本手渡した。
「うむ。しばし待て」
師、ゴダールは小さな手で髪の毛を握りしめる。
カミーユは、師のもとに魔力が集まることを感じた。
そして、師の魔力は爆発的に広がってこの部屋を満たし、その外、遥か彼方まで広がっていく。
五分程待っただろうか。
「ハイアンよ。そなたの子は、ブログダン帝国の帝都ルブダンにおる」
サラは驚き尋ねる。
「そんな。あの子が攫われたのは昨日のことです。そんなに早く、帝都に到着できるなんて」
カミーユは冷静に尋ねる。
「御師様、竜が人に助力することはあるのでしょうか」
師、ゴダールはヒゲをしごいた。ぴょこりとヒゲが飛び上がった。
「カミーユよ。そなたが戦った青竜。あれは確かにブログダン帝国に助する働きをしておった。過去にも、その様な事例がないわけではない。しかし」
ゴダールはカミーユを見つめる。カミーユは師コ゚ダールを手の平の上に乗せた。
「カミーユよ。そなたは青竜と戦い、これを殺した。ブログダン帝国に与する竜を倒したことになる。されど、先の娘は、明らかに翼あるもの。すなわち竜によって運ばれたように思える」
カミーユは尋ねる。
「御師様。つまり、ブログダン帝国を助ける竜は複数いると言うことでしょうか」
師、ゴダールはカミーユの手の平の上で答える。
「そう考えるが道理じゃろう」
カミーユは考え込む。帝国までロザリアを助けに行かねばならない。
しかし、カミーユは帝国の地理に明るくない。誰かの助けが必要だった。
「御師様。ありがとうございました。私はハイアン侯爵閣下を邸宅までご案内するため、失礼いたします」
カミーユは師を手の平から机の上へ戻し、サラ・ハイアン侯と共に、部屋を退出した。
カミーユは廊下を歩きながら話す。
「サラ。私はロザリア様を救出に行きます。あなたは、ここ王都のハイアンのお屋敷でお待ち下さい」
サラはカミーユに答える。
「ロザリアは心配だわ。でも、帝国へ向かうあなたのことも同じくらい心配よ」
サラは、遠く帝都に囚われたロザリアのことを思う。
そこへカミーユも向かうと言うのだ。
不安は更に募った。
そこへ丁度、カミーユの配下である。ユマが通りかかった。
ユマは帳面を抱えていた。
「どうしたカミーユ。侯爵閣下も連れてさ。こんなところで、珍しいじゃないか」
カミーユはユマの様子を見る。どうやら、カミーユが不在の間も、忙しく働いているようだった。
「ユマ、ご苦労さまです。私はこれからブログダン帝国へ向います。またしばらく留守にするので。その間のことをよろしく頼みます」
ユマはカミーユに向き直り、尋ねた。
「カミーユ。ブログダン帝国のどこに行くんだい」
カミーユは正直に答える。
「帝都ルブダンです。そこにロザリア・ハイアン様が囚われており、これをお救いす
るのです」
ユマは視線を上げた、天井を見ている。そして、カミーユに向き直った。
「カミーユ。アタシの給金を倍、一日に金貨十枚にしないか」
カミーユはユマに尋ねる。
「なにか考えがあってのことですか」
ユマは答える。
「そうさ。アタシはブログダン帝国の帝都ルブダン。そこの生まれなんだ。アタシが案内してやる。昇給はそのためさ」
カミーユはその言葉に縋った。
「わかりましたユマ。帝都での案内。よろしくお願いします。給金についても、家来にそのように伝えます」
こうして、カミーユとユマは、共に帝都へ向かうこととなった。
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