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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
戦乱の末、公爵叙勲と女王との婚姻。最強の怪力騎士、ついに国の頂へ
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騎士と真竜。酸に濡れる魔剣星影。焼かれた身体で掴みとった勝利

 時は少し遡る。


 カミーユは、アナスタシア王女の命を受け、国王陛下の親征軍を追っていた。


 王都で反逆した公爵軍が瓦解した今、敵はペラルーン王国に侵攻してきたブログダン王国軍のみであり、この対処にカミーユを遣わしたのだ。


 カミーユとその愛馬の移動速度は常識を逸している。

 馬は全速力で駆け続け、その体に疲労が蓄積することはなかった。カミーユの魔力が、それら疲労をすべて取り除いてゆくのだ。


 結果として、通常の行程であれば一週間ほどかかる距離を、わずか数時間で駆け抜けることが出来た。



 そして、国王ゲオルグ陛下の親征軍の後端に追いついた今、カミーユの視覚と聴覚が、前方の争乱をとらえた。


 カミーユは自らの身体に流れる竜の血から魔力を汲み上げ、それを全身に行き渡らせる。カミーユの視力と聴力は増大し、前方で飛ぶ青い竜が、その口から、下方に向けて濁流を吐き出している状況が見えた。


 その濁流の量は、馬ほどの大きさの竜の体に対して明らかに多く、それが魔力によってもたらされたものであることは明白であった。


 カミーユは、自らの弓に矢を番える。背筋と胸筋、肩と腕の筋肉が隆起し、金属の弓を限界までしならせる。


 そして、空を飛ぶ竜に向かって、矢を放った。


 矢は、狙い通りに竜の左脇に命中し、甲高い音を立てる。


 しかし、竜は体勢をやや崩した程度で、その鱗は貫かれず、全くの無傷であった。

 黒鉄の飛竜ではこのようなことはなかった。


 カミーユは考えを改めた。


 あの竜はなにか違う。カミーユは瞑想の感覚を思い出し、竜の魔力を探った。


 ここから竜まで、音の速さでも数秒かかる距離があったが、その魔力は膨大であり、カミーユの感覚に流れ込んでくる。


 このように膨大で暴力的な魔力を感じたのは、初めてのことだった。


 カミーユは更に矢を番える。翼の皮膜には効果があるかもしれなかった。

 カミーユは翼に狙いを定め、矢を放つ。


 圧倒的な速度。


 空高く飛ぶ竜のもとまで矢はまっすぐに飛び、その翼、皮膜を貫いた。


 矢は翼を貫通した。


 カミーユは三の矢を番え、竜を見つめる。


 すると、先程貫かれたはずの竜の皮膜は即座に治っており、竜の翼に傷はなかった。


 カミーユは速射を決断する。


 カミーユは超音速の矢を次々と放つ。幾つもの矢が竜の翼を貫通し、そのたびに傷が治ってゆく。


 竜は煩わしそうに鎌首をカミーユに向ける。

 どうやら痛みがないわけではなさそうである。


 竜はカミーユに向かって滑空する。

 完全に怒りの矛先をカミーユにしたようだった。


 カミーユは向かってくる竜に向かって矢を放つ。


 竜の頭部は硬く、矢は激しい金属音を立てて弾かれる。


 近くまで飛んできた青竜が口を開く。


 先程見た濁流の兆候。


 カミーユは愛馬から飛び降り、竜の意識を自身に向けさせる。

 愛馬を酸の奔流に巻き込むわけにはいかなかった。


 そして、竜の吐息、酸の濁流がカミーユに向かって吐き出された。


 カミーユは横に向かって跳躍する。勢いをそのままに、前転を繰り返して立ち上がる。


 カミーユは濁流は回避したが、飛沫が幾つも体にかかった。それらは鎧と外套を溶かし、すえた匂いがカミーユの身を包んだ。


 竜は鎌首をもたげる。

 避けたカミーユに向かって、再び酸の濁流が向けられようとしていた。


 カミーユは両足を開き、矢を番え、弓を全力で引き絞る。


 そして、青竜の口内に向かって、矢を放った。


 凄まじい速度で飛ぶ矢が、その衝撃波により、酸の濁流を一瞬かき分ける。

 竜の口蓋に突き刺さった矢は頭蓋の内側で跳ね返り、脳の中を暴れた。


 竜は一瞬動きを止めるが、再びカミーユに向けて濁流を放つ。


 脳を破壊しても、竜を殺すことは出来なかった。


 カミーユは弓を背負い、次の手を考える。

 その間も全速力で駆け、濁流から逃げ回る。


 やがてカミーユの皮膚にも、酸の飛沫が付着した。

 それは音を立ててカミーユの皮膚を焼き。

 すえた焦げ臭い匂いを立てた。


 まだ皮膚が焦げただけだが、あの酸の奔流に巻き込まれれば、カミーユとて命の保証はなかった。


 跳躍しつつ、カミーユは考え、抜刀する。それはアナスタシア王女から下賜された魔剣星影であった。

 剣はわずかに輝きを帯び、カミーユの手にしっくりと収まった。


 カミーユは自身に流れる竜の血から、魔力を汲み上げる。


 そして、空想の一飛びをイメージする。

 それは魔力によって現実となり、カミーユの体は上空、竜の背後に現れた。


 竜はカミーユを見失う。


 カミーユは竜の背中に落下し、腿でその体を挟み、跨った。

 振り落とされぬよう、竜の背中の鱗を猛烈な握力で握りしめ、体を固定する。


 右手の魔剣を逆手に持ち、竜の背に向けて振り下ろした。


 魔剣は、竜の鱗を貫いた。


 その刃は肉を切り裂き、骨を横切り、臓器へ到達する。

 カミーユは竜の魔力の流れを感じ、その源である心臓に向かって刃を進めようとした。


 竜は痛みに泣き叫び、鎌首を振り返り、後ろを見た。


 そして、背に乗るカミーユに向かって、酸の濁流を浴びせかける。


 カミーユは酸の濁流に飲み込まれる。目が焼け、皮膚が焼け、筋肉が焼けた。


 だがしかし、カミーユはまだ、刃を動かすことが出来た。


 硬い筋肉を切り裂く感触がカミーユの手に伝わってくる。

 カミーユの魔剣は、竜の心臓を断ち切った。


 竜の体から力が抜け、吐息の奔流も途絶えた。

 竜の体は落下し、カミーユも共に落下した。


 地面に激しく叩きつけられた竜は、地面にへこみを作った。

 カミーユは竜の背に乗ったまま、その衝撃を全身で受けた。


 カミーユは一瞬意識を失ったが、すぐに覚醒し、周囲の状況を確認した。


 竜は倒れ動かない。


 自らは鎧と衣類が溶け、身に帯びるのは魔法の金属でできた弓と剣だけだった。


 辺りには、まだ竜の吐いた酸の河が残っていた。

 カミーユの姿を見て、愛馬が駆け寄ってきた。


 カミーユは身を起こし、立ち上がった。

 そして、焼けた手で愛馬の鼻先を撫でた。


 こうして、カミーユは青竜を退治した。


 しかし、それは最初の一匹であり、これから続くカミーユの激闘の始まりに過ぎなかった。

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