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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
戦乱の末、公爵叙勲と女王との婚姻。最強の怪力騎士、ついに国の頂へ
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親征軍と罠。青竜の吐息、溶ける大地 。国王軍を孤立させる、真なる竜の恐怖と、間に合った英雄カミーユ

 ベラルーン王国の国王ゲオルグ・アレクセイ・プラソールは、親征の途にあった。


 王都モスカウと、ブログダン王国との間にあるハイアン侯爵領より、助勢の要請があったためである。


 ハイアン侯爵領の領都ルナートは、その防備は厚く、簡単に落ちるような街ではない。


 ルナートに攻め寄せるブログダン帝国軍を後背より突き、挟撃し、撃滅する。

 それが、今回とられた、王国親征軍の基本的な戦術であった。


 国王ゲオルグは、歴戦の猛者である。

 長年、ブログダン帝国との領土争いや、巨人族との争いにおいて、前線にて指揮を取ってきた。


 国王陛下は不憫だ。いくら武功を上げても、陛下を褒めてくださる方はいらっしゃらぬ。


 これは、市井で流れる笑い話である。

 それほどまでに、国王ゲオルグに対する国民の信頼は厚かった。


 今回の親征軍の総数は三万。近衛軍四千および、民兵一万一千を加えた一万五千が国王ゲオルグの直轄の部隊。残りの一万五千は、伯爵以下諸侯の軍であった。


 親征軍が王都を発ち、一週間が過ぎた。

 ハイアン侯爵領の領都ルナートまで、通常の行程で十日かかる。

 ルナートまであと僅かというところだった。


 その異常に最初に気がついたのは、軍の後ろ、荷運びをしている青年であった。

 青年は額の汗を拭くため、手拭いを取り出し空を見上げた。


 それは偶然のことだった。


 空に黒い点を見つけたのだ。高く遠いその点を不審に思った青年は、それをじっと眺めた。


 やがて、それが翼を持ち、こちらに飛んでくる何ものかであることがわかった。

 中空にあり、大きさはよくわからなかったが、鳥よりは大きいように見えた。


 その姿は空よりも青く、深い色であり、陽の光を反射した。

 空を見上げていた青年は、年嵩の人足夫に注意され、馬の世話に戻った。


 つまり、その危機に気がつくものはいなかったのである。


 突然、親征軍の只中に、大量の液体が降り注いだ。

 それは河の流れを思わせるほど膨大な量であり、周囲の者は、何が起きたかわからなかった。


 しかし、それは水の流れではなかった。肉が焼ける匂いと、すえた匂いが周囲に撒き散らされた。


 液体に濡れた人も馬も鎧も荷車も、何もかもが溶けていた。じゅうじゅうと、馬や人の肉が焼ける音がした。


 親征軍は、一瞬にして混乱の中へ叩き落された。


 さて、竜という生き物がいる。


 それらは皆、強靭な肉体と鱗、強壮な生命力を持ち、牙や爪や尾で、あらゆるものを粉砕した。


 その中でも、真竜という存在がいる。


 これらは、竜の中でも一際強靭な肉体と鱗、強壮な生命力を持ち、牙や爪だけではなく、恐ろしい魔力を秘めていた。


 この魔力の象徴は、口から吹かれる魔法の吐息である。


 吐息は恐ろしい力を秘めており、真竜を真竜たらしめるものだった。


 王都の賢者がいれば、この現象をそのように表現したかもしれない。

 すなわち、真竜の仕業であると。


 しかし、ここにそのようなものはいなかった。ただただ、事態に対処するより他になかった。


 河の奔流の上流、兵士たちが上空を見つめると、遥か高く、コウモリのような翼を生やした、青い鱗のトカゲ、竜の姿が見えた。


 混乱から立ち直った部隊は、弓や弩で竜を射た。

 それらの大半は上空まで届かず、届いたとしても、その体に当てることは出来なかった。


 竜は吐息を撒き散らし続けた。

 竜は円を描いて飛び、国王軍の本隊、すなわち近衛兵団の周囲を、酸の大河が覆った。

 近衛兵団四千は孤立し、身動きが取れなくなっていた。


 近衛兵団の中央には、国王ゲオルグがいた。

 国王ゲオルグは、若き日に真竜と戦ったことがある。数少ない勇者の一人である。


 しかし、その時戦った真竜は、犬ほどの大きさのものであり、それでも勇者たちに多数の死傷者が出た。


 中空にあり、大きさを比較することは難しいが、上空雨の青い竜、青竜の大きさは、馬を超えるほどのものに見えた。


 ゲオルグは騎士たちに命じる。


 竜が吐息で周囲を取り囲んでいる間に、攻城弓を取り出し、据え付けるようにと。

 上空の竜を射落とすには、それしか手段がなかった。


 ゲオルグの命は直ちに実行され、五基の攻城弓が準備された。


 それらは人力の機械によって弦を巻き上げられ、射手が上空の龍に向けて狙いを定めた。


「撃て」


 部隊長の指揮のもと、攻城弓から槍のような矢が放たれた。


 それらのうちの一つが、奇跡的にも、上空の竜に命中した。

 空を見上げる兵士たちから歓声が沸き起こる。


 しかし、それはすぐに収まった。


 竜は巨大な矢が当たったにも関わらず、それを意に介さないかのように飛び続け、酸の吐息を放ち続けた。


 やがて、竜は内側に向かって螺旋を描くように飛び始める。

 地上に出来た酸の河、その中州にいる近衛兵団を、徐々に追い詰めようというのだ。


 近衛兵団は再び攻城弓を放つ。


 矢は当たらず、騎士たちの希望は、絶望へ塗りつぶされようとしていた。


 絶望の表情で騎士たちが竜を見つめる。


 その時だった。


 何かが一瞬きらめき、竜の体に命中する。

 竜はぐらりと傾く。


 竜の鱗に当てた時のものであろう。高く響く音があとから聞こえた。


 騎士たちは振り返る。


 そこには、愛馬にまたがる騎士、カミーユ・ロラン伯爵の姿があった。


 こうして、騎士たちのもとに、英雄カミーユが現れた。

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