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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
戦乱の末、公爵叙勲と女王との婚姻。最強の怪力騎士、ついに国の頂へ
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空間を跳ぶ。師ゴダールの贈り物。空間跳躍と、膨れ上がる騎士の魔力

 カミーユは昼食を摂っていた。


 それは、まるで巨人のような食欲だった。


 肉を何切れも平らげ、皿に溢れるほどあったパンも、みるみる間になくなってゆく。

 カミーユはエールを飲み、それらを流し込んでゆく。


 食べるたびに、自らの血の量が増し、平素へ近づいていることが分かる。


 いや、今までよりも、より多くの血の量、魔力が蓄積されているように感じる。


 カミーユは食べ続け、やがて厨房からは悲鳴が上がった。


 そんな食事を終えるころには、カミーユの怪我は回復し、左目も見えるようになっていた。


 カミーユは頭の包帯を取り外す。


 血に汚れ、乱れていたはずの金色の髪も艷やかな輝きを取り戻し、カミーユは自らの身体が、より一層強くなったことを感じ取った。


 カミーユは近衛騎士の食堂を離れ、一旦自らの屋敷に戻ることにする。

 予備の鎧を身に着けねばならなかったし、師ゴダールから呼ばれているのだ。


 カミーユは王宮の庭から跳び上がり、王宮の屋根を駆け、自らの屋敷へ戻る。

 この移動方法については、軍議の場において、戦時の非常時のため。と、了承を頂いていた。


 カミーユは自らの館の中庭に降り立つ。いつも中庭にいる剣士ローレンに挨拶をし、秘密の部屋へ急いだ。


 秘密の部屋では、カミーユの師である大魔道師ゴダールが、小さな小さな釜をかき混ぜていた。


 ゴダールは小さなカワウソのような姿をしており、その扱う道具も自ずと小さくなる。

「御師様。カミーユ、参りました」


 ゴダールは釜をかき混ぜる手を止めて、カミーユの方を向く。


 師ゴダールは、釜の下の火を魔法で消し、柄杓で釜の中を探り、掬う。

 掬った液体をガラス瓶に集める。カミーユの小指ほどの大きさの小瓶に、液体が溜まった。


「カミーユよ。中庭で、これを飲むのじゃ」


 カミーユは小さな小瓶を恭しく受け取る。


「御師様。これはいかなるものでしょうか」


 カミーユは師に小瓶の中身を尋ねる。


「ある魔法の精髄を集めたものじゃ、今のお主なら死ぬことはあるまい」


 師は恐ろしい言葉をさらりと言った。


 弟子は師の言葉を信じる。

「では、頂戴いたします」


 カミーユは師を胸元に入れ、小瓶を手に中庭に向かった。


 中庭に出ると、素振りをしていた剣士ローレンが声をかけてくる。

「なんだ。今日は大魔導師と一緒に散歩か。戦の途中じゃなかったのか」


 カミーユはローレンに礼をする。


「はい。御師様からいただいた薬をここで飲むのです」


「そうかい」


 剣士ローレンは見世物が始まったように眺めている。


「御師様。では、飲みます」


 カミーユは手にした小瓶の中身を口に含み、一気に飲み込んだ。


 すぐさま、カミーユの動機が激しくなり、頭の中に王都や、故郷クリン村、先に戦ったエルベ村、蛮族を打ち倒したタブロ村、その道中の道々、様々な風景情景が脳を埋め尽くした。


「カミーユよ。流されるな。まずは己の目に見えるもの、それに集中するのじゃ」


 師の声を聞き、カミーユは脳の情景から頭を切り替える。眼の前には、庭木であるアーモンドの木が見えた。


「カミーユよ。そなたの心の足、魔法の足で、そこまで飛び込むのじゃ」


 カミーユは魔力でイメージする。カミーユの実際の足と魔法でイメージした足が重なり、魔法の足のみ、庭木に向けて飛び出した。


 それは一瞬の出来事だった。


 カミーユの体は庭木の側に立ち、その手は庭木に触れていた。


 剣士ローレンは慌てて大声を出す。

「おい、どういうことだ。走る様が全く見えなかったぞ。この俺がだ」


 剣士ローレンは自らの動体視力と洞察力に自身を持っていた。

 そのどちらも、カミーユの動きを捉えることが出来なかった。


「それはそうじゃ。カミーユの体は消え、そしてまた再び、この木のもとへ現れたのじゃからな」

 師、ゴダールはカミーユの胸元から顔をのぞかせ、剣士ローレンに答えた。


 カミーユは混乱しつつ師に尋ねる。

「御師様。この魔法は一体」


 ゴダールは答える。

「今体験したとおりじゃ。言葉にすれば瞬間移動というものになるかの。距離を無視してその先に現れる。魔法のうちの、ほんの一端の技じゃよ」


 剣士ローレンは口をとがらせる。

「なんだ。俺達剣士が必死に走っている間に、魔法使いは一瞬で行っちまうのか」


 ゴダールは笑った。

「そなたにも良い魔法の師がつけばよいのう。魔法の師と弟子は一対のもの。出会うものはごくわずかじゃがな」


 カミーユは先程の瞬間移動の感覚を思い出す。

「御師様。今の私の魔力で、どのくらいの距離まで跳べますでしょうか」


 師、ゴダールは答える。

「そうさな。まずは視界内といったところじゃな。更に修練を重ねれば、もっと遠く、想像する場所へ、自由に跳ぶことができるようになるじゃろう」


 カミーユは師に礼を言う。

「ありがとうございます。御師様。より一層修練に励みます」

 ゴダールは笑った。その声は思いの外低く、カミーユの心に響き渡った。


 こうして、カミーユは、瞬間移動の魔法を覚えた。


 これは、カミーユの戦術的な価値を一気に押し上げた。

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