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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
戦乱の末、公爵叙勲と女王との婚姻。最強の怪力騎士、ついに国の頂へ
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包帯姿の騎士。騎士に下賜される魔剣星影。王女アナスタシアが認めた。美しく強靭な魂

 翌朝、まだ夜も空けぬうちに、カミーユは目を覚ます。


 右隣には、薄衣を着たクラリスが眠っていた。まだ疲労が深いのだろう。

 カミーユは昨夜のことを思い出し、微笑んだ。


 カミーユはそっと寝台を抜け出し。木張りの床の上で座禅を組む。


 そして、朝の日課の瞑想を行う。これは師の教えであり、カミーユはこれを欠かすことはなかった。


 瞑想により、カミーユは、自らの体の中の魔力が、未だ回復していないことを知る。


 カミーユの魔力は、自らの身体に流れる竜の血に由来している。

 カミーユは昨夜、血を流しすぎた。その血が回復するまでは、魔力が満ちることはないのだろう。


 カミーユは瞑想を続ける。すると、師、ゴダールの気配を感じた。師は語りかける。


「カミーユよ。昨夜の働き見事であった。しかし、己が身を危険に晒すはまだまだ修行が足りぬところ。日々魔力を研鑽すること」


「はい。御師様。お言葉痛み入ります」

 カミーユは心の内に入ってきた師に答える。


「それはそうと、カミーユよ。そなたの魔力も少しは磨かれてきた。一つ技を授ける故。後ほどワシの研究室を訪れること」

 そう言うと、師の気配は消えた。


 カミーユは瞑想を終え、目を開く。

 部屋の小椅子に腰掛けた騎士クラリスがこちらを見ていた。

 クラリスは、近衛の礼服を着て、身なりを正している。


「おはようございます。クラリス」

「おはようございます。ロラン伯爵」


 結局、クラリスのカミーユを呼ぶ名前は、ロラン伯爵からカミーユへ、変わることはなかった。

 カミーユは、そこにクラリスの気高さを感じ、そのままにさせていた。


 カミーユは未だ病床にあるということで、クラリスの部屋に朝食が運ばれた。


 カミーユはベッドに寝かされ、匙でクラリスにスープを口まで運ばれる。

 カミーユは一瞬断ろうかとも思ったが、クラリスの真心を無碍にしまいと、その甲斐甲斐しい世話を受けた。


 食事を摂ると、カミーユは早速、血の量が増えたことを感じる。

 今日は昼食もとったほうが良いだろう。カミーユはそのように考えた。


 食事が終わり、人心地つく。


「クラリス。朝の軍議はもう始まる頃ですか」

 カミーユは騎士クラリスに尋ねる。


「いけませんロラン伯爵。伯爵はまだ傷が深いのです。軍議に出ることはお体に障ります」

 クラリスはカミーユの両肩に手を当てた。


 カミーユは優しく、諭すように言う。


「クラリス。私は昨夜のことを、諸侯や王女殿下にお伝えしなければなりません。服を着ますので、侍女を呼んでください」

 クラリスはしぶしぶ侍女を呼んだ。


 カミーユは包帯の上から軍装に身を包む。丁度、騎士クラリスの服がピッタリ着られた。


 カミーユは歩き出し、クラリスはそれに続いた。


 軍議の間の扉に近づく。カミーユの鋭い聴覚には、軍議の間が騒がしい様子が聞き取れた。


 カミーユが軍議の間に入ると、皆の視線がカミーユに集まった。


「ご無事であったか。ロラン伯爵。怪我が深いと聞き、身を案じていました」

 ライネ伯爵がカミーユを案じる。


 ライネ伯爵はカミーユの後見人であり、愛人でもあるサラ・ハイアン侯爵の実子である。

 ライネ伯爵は男性の若者であるが、カミーユはサラの面影を覚え、親近感を抱く。


「ご心配をおかけして申し訳ありません。不覚を取り手傷を負いましたが、問題ありません。今どのようなお話に」

 カミーユが尋ねると、近衛副団長ライデンが答える。


「ロラン伯爵が崩してくださった二軍、および投石機三基。これにより、我軍の活動を一気に広げることができるようになりました。現在は門を開き、騎兵と歩兵部隊を出し、敵陣のうち、昨夜ロラン伯爵の空けた穴をえぐるように進撃し、敵の各個撃破をはかっているところです」


 どうやら、カミーユの働きにより、王都軍の動きが活発になったらしい。


「しかし、我軍が寡兵であることは否めません。逆臣の公爵軍もすぐに反撃の態勢を整えるでしょう。その前に、門の外へ出た部隊は、一旦引かねばなりますまい」


 反撃の機会も一度きりということだ。再び門を閉ざし、籠城戦を行わねばならない。


 しかし、援軍の頼りはない。王都軍は延命を果たしたに過ぎない。


 カミーユは一旦白熱した軍議から離れ、上座に座る王女殿下に向き直る。

 王女殿下に近づき、片膝をつく。


 そして、カミーユは刀身を布で巻いた魔剣星影を差し出す。


「戦にて得た名剣にございます。王女殿下に献上するべき品かと思い、お持ちいたしました」


 アナスタシア王女は、剣を受け取る。


 魔剣星影は強靭な剣だが、軽く出来ており、王女の細腕でも持ち上げることが出来た。王女は刀身に巻かれた布を取り去る。


「見事な剣ですね。輝いており、凛々しく美しい剣。ロラン伯爵。まるであなたのようです」


 王女殿下は刃に手を触れる。危険な行為だが、その流れるような動作は美しかった。


 そして、柄をカミーユに差し出す。


「カミーユ・ロラン伯爵。剣を取りなさい」


 カミーユは恭しく剣を手にする。剣にかかる重圧により、責任感が増した気がした。


「カミーユ・ロラン伯爵。あなたはこれからも多くの傷を負うでしょう。それでも、あなたは国に尽くしてくれますか」


 カミーユは頭を垂れ、答える。


「王女殿下。もちろんでございます。我が剣は国のために捧げます」


 こうして、カミーユはアナスタシア王女から魔剣星影を下賜された。

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