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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
戦乱の末、公爵叙勲と女王との婚姻。最強の怪力騎士、ついに国の頂へ
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英雄の剣。眼窩を貫かれし騎士の反撃。魔剣を拒む生命力。カミーユ、抱擁が勝利を掴む

 カミーユは、自身が爆風で吹き飛ばした公爵軍の陣を馬で歩く。


 まだ燃える木材などがあり、焦げた匂いが鼻を突いた。

 辺りに敵はいるが、これらの者はカミーユを恐れ、手出しすることはなかった。


 カミーユはまだ燃えていない敵軍の矢筒を二つ拾い、さらなる陣地を目指し、馬を仕向けようとした。


 その時、カミーユの頭上から斬撃が降ってきた。


 カミーユは咄嗟に、手にした弓で防ぐ。

 魔法の金属、ミスリルで出来た弓の弦が切れ、高い音を鳴らした。


 カミーユは着地した人物を見つめる。

 その者は立派な白銀の甲冑を身にまとい、兜でその表情は見えない。


 手には長剣を構え、こちらに向けている。

 手に持つ剣は微細な装飾が彫り込まれ、それは光を放ち、輝きだした。


 カミーユは馬を降りる。

 先程の空からの斬撃。


 その跳躍力があれば、馬上の有利は無きに等しい。

 なにより、愛馬を傷つけたくはなかった。


 カミーユも抜刀し、構える。


「私が備えるまで待っていてくださり、ありがとうございます。私はカミーユ。カミーユ・ロラン。王国にて伯爵の地位をいただいております」


「先程は不意打ち失礼した。弓を使われるわけにはいかなかったのです。私はイザベラ・フォーク。男爵の地位にあります。公爵閣下のため、これ以上兵を討たせるわけには参りません」


 カミーユはその名に聞き覚えがあった。


 英雄イザベラ。


 王国にその人ありとうたわれた女傑であり、王国を悩ませた数多の魔獣を屠ってきた実力者である。


 先程の気配を隠した一撃。

 遠間での跳躍からの斬撃も、魔獣退治の技の一つであろう。


 その手に持つは魔剣星影。


 数多の魔獣の剛毛、鱗、牙や爪を断ち切ってきた名剣である。

 その刃が触れれば、カミーユの皮膚すら容易に貫く恐れがあった。


 カミーユは剣を後方に下げ、構えを取る。


 剣で打ち合えば、こちらの剣が断たれてしまうだろう。

 斬撃を躱したうえで、斬りつけるより他にない。


 対してイザベラは、体をやや半身にし、両手で剣を構え、その剣先はカミーユの喉元へ向けていた。


 イザベラの剣気はカミーユの動きを縛る。


 もし、カミーユが強力な炎の魔法を放つために魔力を集中させれば、それは隙となり、イザベラはすぐさま斬り掛かってくるだろう。


 切り結び、勝負をつけるしかなかった。


 カミーユとイザベラは共にジリジリと前に進む。


 イザベラがカミーユの喉に向かって鋭い突きを放つ。

 カミーユは、自身の間合いを盗むその速さに対処できない。


 僅かに首をそらしたが、その切っ先はカミーユの鎧を容易く切り裂き、カミーユの首の側部を深く抉った。


 血が吹き出し、カミーユの兜と鎧を赤く染めた。

 常人であれば致命傷の一撃。しかし、カミーユは倒れず、両の足で立っている。


 その姿に驚いたのか、イザベラは距離を取る。

 もし、そのままイザベラが突き続けていれば、カミーユは殺されていたかもしれない。


 カミーユは命を拾った。


 カミーユは首から血を吹き出し続けていたが、再び剣を構えた。


「化け物め」


 カミーユは、以前、剣士ローレンにも言われた言葉をぶつけられた。


 今度はカミーユが踏み込む。


 イザベラに向かって、下方から、その胴を逆袈裟に切り上げる。


 しかし、イザベラは更にその内側の間合いへ入って斬撃を躱し、腕を引きつつカミーユの手首を斬りつけた。


 カミーユの怪力を理解した、完全な防御であった。

 イザベラは、魔獣退治の専門家である。


 カミーユのように怪力を持つものと日々戦ってきた。

 カミーユの怪力も、イザベラにとっては一人で回る風車に過ぎない。


 そして、彼女の手には魔剣星影、何ものをも切り裂く名剣が握られている。

 イザベラは、カミーユの天敵であった。


 カミーユの鎧の小手が容易く切られ、カミーユの手首の半ばまでをも断ち切る。

 骨まで届くその斬撃により、カミーユの手首から噴水のように血が溢れる。


 それはイザベラの身も赤く染めた。

 しかし、カミーユが剣を取り落とすことはなかった。


 カミーユは右手で握った剣で音速の斬撃を繰り出す。


 イザベラは肘でカミーユの胸を付いて距離を取って斬撃を躱し、反撃としてカミーユの左肩から胴まで届く斬撃を放つ。


 カミーユの胴鎧は断ち切られ、その下の鎖骨と肋骨が断たれ、肺腑を切り裂いた。


 しかし、カミーユは立っており、右手に持った剣でイザベラに斬りつけてくる。


 イザベラはカミーユの右肘に手を当てながら間合いの内側に入り込み、カミーユの頭部を狙って剣を突き出す。


 カミーユの兜が裂け、その切っ先はカミーユの右の眼窩に刺さり、そのまま頭部を貫き、兜も貫通した。


 カミーユはそれでも動きを止めず、手首が半ば断たれた左の拳でイザベラを殴りつける。

 イザベラは剣を引き抜きつつこれを躱し、構え直した。


 まったくでたらめな生命力であった。


 イザベラは冷静に過去の経験を思い出す。かつて、このような魔獣と戦ったことがある。


 竜。


 その生き物は、どこを切っても断っても突いても死なず、恐ろしい生命力を持ち、いつまでも闘争心を失わなかった。


 カミーユの生命力は、竜を思わせた。


 しかし、イザベラは竜を倒したことがあった。


 竜の弱点は心臓である。


 ここを破壊されれば、どのような竜でも倒すことが出来た。


 先程まで、カミーユは右肩を前に構えていた。

 しかし、右目が潰れた今、残った左目で視界を確保するため、左肩を前に出した。


 イザベラは機を得たりと思う。


 カミーユの心臓がこちらを向いたのだ。


 イザベラは素早く踏み込む、カミーユは傷で倒れぬとは言え、体中を切られ突かれ、動きが鈍くなっている。


 イザベラは間合いを容易に詰め、低い体勢からカミーユの左胸を剣で突いた。


 感触があった。


 イザベラの魔剣星影は、確実にカミーユの心臓を貫き、背まで通り抜けた。


 ようやく勝った。


 イザベラはそう思い、剣を抜こうとした。


 剣は抜けなかった。刃は、カミーユの筋肉に絡め取られていた。


 この時、イザベラが剣を手放し、間合いを開けていれば、勝負はまだわからなかった。


 しかし、イザベラは魔剣を力づくで引き抜くことを選択した。


 カミーユの右手がイザベラの背に回った。その手は半ば断たれた自身の左手を掴む。

 そのまま腕を思い切り引きつけ、イザベラの胴を締め付けた。


 イザベラの鎧がきしみ、ぎりぎりと潰れてゆく。


 イザベラはカミーユの顔、残りの左目を指で突いた。

 カミーユの眼球は、その突きを跳ね返す。


 カミーユは更に締め付ける。イザベラの呼吸が止まり、顔が赤く染まってゆく。


 やがて、イザベラは意識を失い、ぐったりとカミーユに身を預けた。


 カミーユはイザベラが気を失ったことを十分確認すると、抱いた腕を放し、自身の胸に突き刺さった魔剣を抜き取る。


 本当に危なかった。


 カミーユは此度の戦いを振り返る。


 心臓に、師、ゴダールがかけた加護の魔法がかかっていなければ、心臓が破裂して死んでしまったことだろう。


 その魔法のお陰で、心臓に穴が空いても、血流を失うことなく、意識を保つことが出来た。


 カミーユは、自身の出血が思いの外激しいことを知る。


 平素のように自らの竜の血から魔力を組み上げようとしても、その源となる血が不足していた。


 魔力による傷の治療は不可能だった。

 一度引き返し、休息する必要がある。


 カミーユは引き抜いた魔剣星影を握る。

 足元には意識を失ったイザベラが倒れている。


 これをこの英雄に返すわけにはいかなかった。


 また、この英雄を公爵軍に戻すわけにもいかなかった。

 カミーユは剣を預かり、右腕で英雄を持ち上げる。


 これらは王女殿下へ献上しよう。


 カミーユの出血は止まらず、魔力が枯渇してゆく。

 カミーユが魔力の不足を感じるのは、初めてのことだった。


 カミーユは愛馬を呼び、跨った。意識は朦朧としていた。


 こうして、カミーユは攻城兵器を破壊し、二軍二千人に多数の死傷者を出させ、英雄を打ち倒し、王都へ帰還する。


 しかし、敵の数はまだ一万五千以上、カミーユの戦いは、まだ終わってはいなかった。

お読みいただきありがとうございます。




ブックマーク、フォロー、レビュー等いただけますと、大変嬉しく励みになります。




これからも、カミーユの活躍をどうぞ見守ってください。

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