表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
戦乱の末、公爵叙勲と女王との婚姻。最強の怪力騎士、ついに国の頂へ
40/80

カミーユの夜襲。超音速の矢、攻城兵器を貫く 。衝撃波に震える千の兵とカミーユの武勇

 王女殿下の軍議の間を退いたカミーユは、取り急ぎ王宮の自宅へ向かった。


 事態は切迫しており、カミーユは王都の家々の屋上を駆け、急行する。


 夕暮れの中、屋敷の中庭に降り立ったカミーユは、中庭にいた剣士ローレンと目が合う。


「ローレン。剣士ローレン。無事でしたか」

 カミーユは剣の師であるローレンに声を掛ける。


「カミーユか。ずいぶん早いな。忘れ物か」

 ローレンは飄々と言う。この男は目前の戦にも動じることはない。


「王都を守るため帰還いたしました。館の者たちは無事ですか」


 ローレンは余裕の表情のまま答える。

「皆無事さ。ああ、ユマのやつが、小麦が高いと文句を言っていたな」


 のんびりとした剣士の答えに、カミーユは安心する。

「皆無事なのですね。安心いたしました。私は少し館に寄ってから、市門の外の敵を迎撃に向います」


 ローレンは手を上げ応える。まるで近所へ買い物へ行くのを見送るような気軽さだった。


 カミーユは館の中に入る。そして、魔法の師匠、ゴダールのいる秘密の部屋を開けた。

「御師様。御師様。カミーユ、只今戻りました」


 カミーユは急いで師の姿を探す。すると、積み上げられた本の隙間から、小さなカワウソのような姿の師が顔を出した。


「戻ったか、カミーユよ。毎日の瞑想は欠かしておらぬようじゃな」

 師ゴダールも、剣士ローレンと同じく眼の前の戦を気にする様子はなかった。


「はい。御師様、今朝は王都の様子をお伝えくださり、ありがとうございました」

 カミーユは師を手の平に乗せ、礼を言う。


「良い良い。カミーユよ。ワシもこの研究室がなくなれば困るでな。カミーユよ。これから戦であろう。これを授ける」


 師は、小さな小さな手の平で、カミーユの左胸を触った。そこから不思議な魔力が流れ込み、カミーユの心臓に魔力が注がれる。


「ゆくが良い。カミーユよ。魔法は全てに勝る万有の力であるが、時には武勇が必要なときもあろう」


 カミーユは手の平の上の師に頭を下げると、師を机の上に置き、秘密の部屋を退出した。


 カミーユは自室で戦の用意をする。

 侍女の手を借り、予備の鎧を身に着け、剣を佩く。


 弓は愛馬に乗せているため、予備の矢筒だけ身につける。


 そして、鏡台の前で、頬紅を当て、唇に紅を差す。


 決して負けられぬ戦であれど、此度の敵軍は二万。

 不覚を取り、討ち取られる可能性も十分にある。


 そんな時、死に首が土気色になっていれば相手の騎士に申し訳ない。

 カミーユは決死の覚悟で立ち上がった。


 部屋を出ると、丁度ユマと鉢合わせる。ユマはカミーユの顔を見て笑う。

「珍しく化粧なんかして、鎧姿で夜会かい」


 カミーユはユマに答える。

「そう見えますか。面白いですね」


 カミーユは微笑む。ユマの言葉は、カミーユの心を軽くしてくれる。


「ユマ、館のこと、色々とありがとうございます」


 ユマは頭をかきむしる。

「止せよ。アタシは貰った給金の分働くだけさ。それ以上もそれ以下もしない」


 カミーユは、ユマのこのような性格を信頼している。

「ユマ、これからもよろしくおねがいしますね」


 ユマは立ち去り、後ろ手に手を降った。


 カミーユは館を出る。


 日は落ち、夏の夜に涼やかな風が吹いていた。

 空には細い月が浮かび、十分に暗く、夜襲を行うには都合の良い明るさだった。


 カミーユは帰宅したときと同じように屋上を駆け、市壁に到達する。


 市壁から飛び降り、森に隠れた愛馬のもとへ向かう。

 愛馬はすぐに駆けつけ、カミーユにすり寄った。


 カミーユは愛馬の鞍から、愛用の弓を取り出す。そして、力を込め、弦を張った。


 カミーユは愛馬に跨がる。


 自らの身体に流れる竜の血から魔力を汲み上げ、自らと愛馬に行き渡らせる。

 馬は風のように駆け、敵軍へと近づいた。


 敵軍、公爵軍は、陣幕に篝火を焚き、夕食の仕度を行っていた。

 夜は暗く、同士討ちの危険もあり、戦を休むのが常道である。


 しかし、カミーユの目は生まれつき、暗闇を見通す力を持っている。

 その目には公爵軍の姿が、昼間のように明るく見えた。


 カミーユは、弓を構え、矢を番える。腕と肩、胸と背筋の筋肉が隆起する。


 そして、遥か彼方の投石機、その回転軸に向かって、矢を放った。

 音を置き去りにし、まっすぐに軌跡を描いた矢は、寸分違わず軸に命中し、これを粉砕した。


 公爵軍の兵士たちに、矢が通った数瞬後、その音と衝撃波が襲う。


 カミーユは、公爵軍が何も出来ぬ内に、二の矢、三の矢を放つ。

 それは、残り二基の投石機の軸に命中し、これらを瞬時に粉砕した。

 これらの矢もまた、音と衝撃波を公爵軍の兵士たちに叩きつけた。


 カミーユは、公爵軍の陣営を見つめる。


 カミーユは、幕から姿を出し、兵に指示を出しているものたちに目星をつけた。

 彼らは指揮官に違いない。


 カミーユは矢を次々と放つ。矢は過たずに指揮官たちに命中する。

 指揮官たちの体が吹き飛び、その背後の兵たちも貫いてゆく。周囲の者たちも衝撃波で打ち倒す。


 カミーユの弓の射角にとらえられた公爵軍の一軍、凡そ千人の兵隊は、混乱の中に叩き込まれた。


 カミーユは、立ち上がり、指示を出そうとする兵たちに向けて、更に矢を放つ。

 兵たちの体は粉微塵に吹き飛ぶ。


 カミーユの持つ矢、四十本が全て無くなる頃には、立つものは誰もいなくなり、兵たちは自らに死が訪れる事がない様に、伏せて祈るだけとなっていた。


 カミーユは、この一軍が戦闘能力を失ったと判断する。



 続いて、馬首を巡らせ、別の一軍に駆け寄った。


 カミーユは自身の身体に流れる竜の血から魔力を汲み上げ、それを熱と炎に変える。


 そして、新たな一軍の、陣幕と兵士たちに向かって投げつけた。


 眩しい閃光と熱。小さな太陽のような火球が出来、衝撃波が辺りを襲った。


 炎に包まれた者は一瞬にして燃え尽きた。

 もしかしたら、これらの者は運が良かったのかもしれない。


 周囲のより多くの者たちは熱に焼かれ、体が燃え上がり、転げ回った。

 衝撃波が周囲全てを薙ぎ払い、陣幕を打ち倒し、軍旗を薙ぎ払う。


 広がる衝撃波により、内臓が潰れ、血を吐く兵士もあった。

 さらに多くの兵士たちの鼓膜が破れた。


 カミーユはこれを三度続けた。


 カミーユの放つ炎と熱と衝撃波により、辺りはまるで地獄のような有様となる。


 カミーユは息を整える。魔力はまだ、十分に残っていた。


 こうして、公爵軍のうち二千の軍隊が、カミーユにより戦闘不能となった。


 しかし、それは、この夜の激しい戦いの始まりでしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ