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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
戦乱の末、公爵叙勲と女王との婚姻。最強の怪力騎士、ついに国の頂へ
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公爵の裏切り。危機の現場まで、二週間の路を半日で。愛馬に魔力を注ぎ、超速で王都に至るカミーユ

 エルベ村の戦いの後、カミーユはブログダン帝国兵たちを武装解除したうえで、開放した。


 理由は二つ。


 一。カミーユの持つ寡兵では、それらを捕虜にすることなど、現実問題として実行出来なかった。


 二。彼らが帝国軍本隊に帰還した場合、それによりカミーユの武力が広く知れ渡る。帝国軍は、その対処に大きな兵力を割かざるを得なくなり、行動の重石となる。


 よって、エルベ村から帝国兵は消え、村は開放された。


 村人に対して、帝国兵からの虐待などはなかったようだが、食料、作物の徴発は行われており、村人たちは苦しんでいた。


 そこに、たった一人で村を解放した騎士カミーユが現れたのだ。


 村人たち。特に若い女性たちは凛々しい姿のカミーユに歓声を上げた。


 カミーユはそれら一人ひとりに丁寧に応対し、傷はないか、困ったことはないかと、尋ねていった。


 そして夜。カミーユは村長の一室を借り、従者フローラとともに眠った。


 カミーユの精神は戦で高ぶっており、フローラは右胸に傷跡の残る身体で、カミーユを優しく抱きとめた。



 翌朝、カミーユは、薄いシーツだけを纏ったフローラを起こさないように寝台を降り、日課の瞑想に入る。


 カミーユが瞑想すると、師ゴダールが隣りにいるような感覚を覚えた。


 そして、ゴダールはカミーユの瞑想の中で、語りかけてきた。


「カミーユよ。王都モスカウへ戻るのじゃ。公爵が裏切り、王都を制圧しようと兵を挙げた。王弟ミハイルの息子、王甥リヒャルトを王位につけようというのじゃろう」


「御師様。承知いたしました。私は国境周辺のエルベ村におります。ここの帝国軍は撃破しました。王都防衛のため私は戻ります。猶予は何日ほどありそうでしょうか」


 ゴダールは再び現れる。

「猶予は十日程じゃろう。公爵の備えは万全のようじゃ。帝国軍と呼応するは明白じゃろう」


「ありがとうございます。それでは、私のみ、急行いたします。御師様も周囲にはお気をつけください。剣士ローレンが頼りになるはずです」


 ゴダールの気配は消え、カミーユの意識は、静謐で、限りなく広がる瞑想の世界へ戻った。


「カミーユ様。お食事の時間です」


 従者フローラが呼びかける。カミーユは目を開け、瞑想から覚める。

 フローラは身支度を整え、かがみ込んでカミーユを見つめている。


「ありがとうございます。フローラ」

 カミーユは立ち上がる。寝衣の姿のカミーユをフローラが着替えさせる。

「フローラ。朝食の場にヘブナーを呼んでください。相談したいことがあります」


「かしこまりました」

 フローラはカミーユの髪を編み上げたあと、近くの家に泊まっている副官へブナーを呼びに行く。

 カミーユは手鏡で自らの身支度を確認し、食卓へ向かった。


「ヘブナー。私は王都へ戻ります。あなたはエルベ村にて民兵を募り、ここを守りなさい」

 カミーユは信頼する副官に命じる。


「承知いたしました。そのように手配いたします。カミーユ様は公爵様と対決ですか」

 ヘブナーはパンをちぎり、スープに浸しながら答える。


「そうです。ヘブナー。何故そう思いましたか」


 ヘブナーはふやけたパンを飲み込み、主君に答える。

「騎士カミーユを必要とする脅威など、他に思いつきませんな。まあ、急に真竜が現れたなどあれば、話も違いましょうが」


 ヘブナーは少し戯けた。真竜とは、おとぎ話に出てくる神話の竜だ。

 今日見られる飛竜などと違い、口から魔法の火などを吹き、世界を滅ぼす力があると詠われていた。


「ヘブナー。もう少し身のある回答を求めます」

 カミーユは副官を嗜める。


「失礼いたしました。では。リヒテンハイム公とその仲間の貴族共。悪党同盟とでも称しましょうか。奴らはブログダン帝国との戦に置いて、即座に兵を出すことなく、様子見に回っておりました。そして、国王陛下が親征なさった今を見計らって、王都モスカウを襲ったのでしょうな」


「ヘブナー。口が過ぎますよ」

 カミーユはつい笑ってしまった。悪党同盟は言い得て妙であった。


「自分の性分です。さて、民兵は百名も集めればよいでしょう。櫓もすぐに組み直し、門も新たなものを誂えます。先の帝国軍五百が取って返してきても、打ち払ってみせますよ」

 ヘブナーがそう言うのなら、そうなのだろう。カミーユは副官の言葉を信頼した。


 カミーユが朝食をとっている間に、従者フローラはカミーユの愛馬に装備を載せ終わっていた。鎧は流石に重たいため、装備には含めていない。


「フローラ。ありがとうございます。あなたもここエルベ村を守ってくださいね」

 カミーユはフローラの手を取る。


「カミーユ様。お側にいられませんが、お側にいられませんが」

 フローラの目に涙が溢れる。


「フローラ。またすぐに会えます」

 カミーユはフローラの涙を優しく拭い、唇を重ねた。



 そのまま、カミーユは愛馬に跨がり、エルベ村を離れる。


 カミーユの愛馬は襲歩で風のように駆け出す。

 カミーユは、自らの身体に流れる竜の血から魔力を汲み上げる。


 そして、愛馬をその魔力で満たした。


 カミーユの愛馬はその疲労をカミーユの魔力に補われ、いつまでもその速度で駆け続ける。


 カミーユは、通常二週間はかかる王都までの行程を、わずか半日で踏破した。


 夏の日がやや傾き、間もなく夕刻を迎える。

 愛馬はこれから起こるであろう戦いに闘志をみなぎらせているのか、興奮した様子だった。


 王都を見ると、すでに激しい戦闘が繰り広げられていた。


 矢と石が飛び交う。

 梯子をかけた攻め手の兵が、防ぎ手に突き飛ばされ、梯子の上から落下している。


 攻め手の後方には巨大な投石機が三基あり、壁に向かって巨石を投げつけ、徐々に壁石をずらしていた。


 攻め手には、公爵の紋章の旗と、王族を示す竜の紋章の旗が翻っていた。

 王族、おそらく王弟ミハイル・アウドムラ・プラソールも、攻め手の公爵軍に属しているのだろう。


 カミーユは王都の国王軍が野戦を行わず、籠城を行っていることを理解した。


 国王陛下の親征軍の帰還を待つにしても、事態は切迫している。カミーユはそう判断する。


 カミーユは、公爵の軍勢が手薄な湖側に回り込む。愛馬に待つように伝え、自身は壁に向かって跳躍する。


 壁の半ばに取り付いたカミーユは、そのまま壁を一気に攀じ登り、王都へ侵入した。


 こうして、カミーユは王都へ帰還した。

お読みいただきありがとうございます。




ブックマーク、フォロー、レビュー等いただけますと、大変嬉しく励みになります。




これからも、カミーユの活躍をどうぞ見守ってください。

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